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タイ国民総糖尿病の危機?飲料の糖質含有量の違いに注意!

タイにあるスワンカフェの色彩豊かな飲み物

タイ人の砂糖摂取量は日本人の1・5倍にも上るそうだ。同じ製造業者の飲料でも国をまたぐと糖質の分量が異なる。全般的に甘めになっているタイでは近年糖尿病患者が増え続けている。そのため、健康志向商品が注目されているが、旅行者も気になるところだ。

糖質含有量の異なる各製造業者の飲料

テーブルに並べられたコーラ飲料

コカ・コーラ*1やペプシコーラは大手企業の看板商品であり、日本人にもなじみ深い飲み物だ。灼熱(しゃくねつ)のタイ*2では必携にしている旅行者も多いのではないだろうか。普通なら飲料の栄養成分表を事細かに確認しないはずだ。ところが、詳しく見比べてみると、各商品は販売対象国に合わせて糖質*3の含有量が調整されていることに気付く。

タイ人とペットボトル飲料

タイのペットボトル*4飲料の価格は15バーツ(約51円/2018年2月28日現在)前後で販売され、日本と同様にコンビニエンスストア*5では主力商品の一つとなっている。

タイでは「水道水を飲めない」がタイ人の一般的な解釈だ。そのため、定期購入で家庭を配達されてくる水タンク*6とは別に、野外ではペットボトル入りの飲料水も購入することが多い。価格は10バーツ(約34円/2018年2月28日現在)前後となっており、前述したコカ・コーラやペプシコーラなどの炭酸飲料*7とは大差ない。そのため、特に若者を中心に飲料水より喉越しのよい炭酸飲料が選ばれる傾向が強くなってきている。

甘過ぎるタイの甘味飲料?

日本でも有名な炭酸飲料のスプライト(Sprite)やファンタ(Fanta)だが、タイでは糖質含有量が多くなっている。これは濃い味を好むタイ人の味覚に合わせて調整された結果であろう。特にスプライトは100ミリリットル*8で約小さじ一杯分も甘くなっているので、汗をだらだらとかくような炎天下での摂取はお勧めできない。

日本とタイのスプライトに含まれる糖質の量(100ml中)

国名 糖質の含有量
日本 10.0g
タイ 13.0g

日本とタイのファンタオレンジに含まれる糖質の量(100ml中)

国名 糖質含有量
日本 11.5g
タイ 12.4g
タイのコカ・コーラの糖質

タイのコカ・コーラの糖質含有量は意外にも日本よりも少ない。実際に飲んでみると甘みが抑えられているのがしっかり分かる風味だそうだ。330ミリリットル缶を基準にした糖質含有量は日本37グラム、タイ32グラムとなっている。ちなみに、世界で最も糖質を含んでいるのがカナダの39グラムである。

日本とタイのコカ・コーラに含まれる糖質の量(100ml中)

国名 糖質の含有量
日本 11.2g
タイ 9.6g

では、なぜタイのコカ・コーラは糖質が日本よりも少ないのだろうか。想像の域を出ないのだが、タイにはコーラに対して医学的根拠のない「悪い固定概念」がまん延している。例えば骨が溶けるだとか背が伸びないだとかである。そこで、その払拭(ふっしょく)のために、糖質の分量を一般的なタイの甘味飲料より低度に抑え、消費者に好印象を植え付けようとしているのではないだろうか。

タイの国民病ともなっている糖尿病

自らの腹部にインスリン注射する男性

世界保健機関*9が推奨する砂糖の摂取量を4倍以上超えているタイだが、その「あしき称号」はタイで急増している糖尿病*10患者にも直接関係がある。単一の原因があるわけではないが、世界的な砂糖の消費量に比例し、タイは増加傾向が顕著になっている。

タイ政府も国民の不健康是正のため、炭酸飲料に含まれる砂糖の量に比例して課税される「砂糖税」の導入を決定した。現在は猶予期間だが、最高税率で20%にも及ぶ。製造業者は企業イメージ*11にも関わる問題なので無視できないはずだ。

ただし、砂糖税の導入だけでは糖尿病への対策が十分かは不透明だ。なぜなら、タイでは調理済みの料理に対し、砂糖や他の調味料を加えるのが慣習となっている。そのため、一食分の砂糖の摂取量が増えるのは必然である。また、タイ料理の大部分がしっかりした味付けのため、飲料もそれに合わせた濃い味になってしまうのは無理もない。

世界に目を向けると、一足先に「ソーダ税」として導入したメキシコ*12に端を発し、英国、米国、フランス*13なども後に続いている。この「肥満税」の波はやがて日本にも訪れることが必至であろう。

油断のならないタイの商品

糖尿病をはじめ幾つもの生活習慣病*14が顕在化してきたタイにあって、日本食が一大ブーム*15になっている。健康長寿国である日本の食生活はタイ人も興味津々で、日本食や飲料もこぞって注目されるほどだ。

その中の一つが緑茶である。カテキン*16が含まれており、免疫力を高めてカロリーも低い。間違いなく日本の食文化の一翼を担っているだろう。最近ではタイのコンビニエンスストアにおけるペットボトル緑茶の販売数は右肩上がりだそうだ。

しかし、日本人は注意しないと痛い目に合う。なぜなら、タイで販売されているペットボトル緑茶のほとんどが甘いからだ。タイの製造業者のOISHI(おいし)が販売している「緑茶」には大量の糖質が含まれている。一服がてらに口にすると面食らうはずだ。

ノンシュガー飲料の台頭

昨今の健康ブームの一環でタイでも緑茶や抹茶を中心としたノンシュガー*17飲料が市場に出回り始めている。やはり流行の火付け役が若い層であるのは世界中どこでも同じのようだ。美容効果やダイエット*18効果が注目され、会員制交流サイト(SNS)を中心として広がりを見せている。コーヒー*19にも砂糖だけでなく、練乳を混ぜて飲むほど甘党のタイ人だが、健康にけん引されて「無糖」が大勢となる日も近いかもしれない。

まとめ

小さじ一杯分の砂糖

ペットボトル飲料と一口に言っても種々さまざまであるが、タイの飲料は甘いものと、強烈に甘いものに大別されるだろう。常夏の国では濃厚な味わいを好むとする意見もあるが、東南アジア*20のベトナム*21のように適合しない事例もあるので、真偽のほどは定かではない。

タイでは生活習慣病に罹患(りかん)する患者が後を絶たず、症状が重篤な場合も少なくないそうだ。観光客にはぴんと来ないかもしれないが、「ちりも積もれば山となる*22」を実感させられる話題ではないだろうか。

毎日摂取しなければならない飲料だからこそ、もっとこだわりを持つべきだと痛感させられた次第だ。常日頃から飲料の栄養成分表などに興味を持ち、節制していきたいものだ。

ちなみに、漫画のようにお茶を吹き出す経験がしたいなら、土産話にタイの甘ったるいペットボトル緑茶をごくりと飲んでみよう。

*1:【Coca-Cola】コーラ飲料の一つ。コーク。商標名。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:炭水化物およびその誘導体の総称。蛋白質・脂質に対する語。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【PET bottle】ポリエチレン-テレフタレート樹脂から作られる瓶状の容器。軽くて耐久性に優れることから,飲料用容器として多く用いられる。繊維製品などへのリサイクルも可能。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【convenience store】食料品・日用品を中心にした小型セルフ‐サービス店。適地立地・無休・深夜営業など便利さを特徴とする。コンビニ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【tank】気体・液体を収容する密閉容器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:炭酸水など、炭酸ガスを含む発泡性の清涼飲料水。果汁・乳酸・合成香料入りなどがある。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【millilitre(フランス)・竓】体積の単位。1リットルの1000分の1。記号 ml または mL/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【WHO】(World Health Organization)世界保健機関。国連の専門機関の一つ。1948年設立。保健衛生向上のための国際協力が目的。伝染病の撲滅、衛生統計の交換などがなされる。本部はジュネーヴ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:持続的な高血糖・糖尿を呈する代謝疾患。インスリンの欠乏・作用阻害があり、糖・蛋白・脂質の代謝異常を伴い、口渇・多飲・多尿を呈する。網膜症・ネフローゼ・神経障害が三大合併症であり、動脈硬化を併発しやすい。インスリン依存性(Ⅰ型)とインスリン非依存性(Ⅱ型)があり、前者の発症は小児から思春期に多く症状が重く、インスリンの投与が必要。後者は成人や肥満者に多く、経過緩慢で必ずしもインスリン投与を必要としない。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:消費者や投資家,従業員などが企業に対してもつイメージ。コーポレート-イメージ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【Mexico・墨西哥】北米大陸南部の合衆国。14世紀からアステカ文明が繁栄したが、1521年スペインに征服された。1821年独立。鉱産物に富み、工業・農業を主産業とする。面積196万4400平方キロメートル。人口1億1233万7千(2010)。住民は主にメスティーソと先住民で、主な言語はスペイン語。スペイン語名メヒコ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【France・仏蘭西】ヨーロッパ大陸西部の共和国。古くはガリアと称しローマ帝国の属州、5世紀にフランク王国が成立、その後分裂したが14~15世紀の百年戦争を経て統一国家を形成、17~18世紀ヨーロッパ大陸に覇を唱え、アジア・アフリカに植民、高度の近代文化を築いた。1789年のフランス革命で第1共和制が成立、のちナポレオン1世による第1帝政、その没落後、王政復古および第2共和制・第2帝政を経て1871年第3共和制、第二次大戦後第4共和制、1958年ド=ゴールによる第5共和制で今に至る。面積55万1500平方キロメートル。人口6140万(2006)。首都パリ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣が発症・進行に関与する疾患群。高血圧・糖尿病・肺気腫・高脂血症・大腸癌・慢性気管支炎・アルコール性肝障害・歯周病などが含まれる。1996年に成人病を改称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【boom(アメリカ)】ある物事がにわかに盛んになること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【catechin】カテキュー(阿仙薬)から分離されるフラボノイドの一種。広義には様々な化合物を含み、紅茶・緑茶の渋み成分。植物界に広く存在し、タンニンの成分となる。抗酸化作用・抗菌作用をもつ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:(non sugar)食品に砂糖が入っていない意。食品100グラムあたり、単糖類・二糖類が0.5グラム未満の場合に表示できる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【diet】(規定食の意)美容・健康保持のために食事の量・種類を制限すること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:【koffie(オランダ)・coffee(イギリス)・珈琲】焙煎したコーヒー豆や、それを挽き粉としたもの。また、後者を湯で浸出した褐色の飲料。香気と苦味がある。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:アジアの東南部。ベトナム・ラオス・カンボジア・タイ・ミャンマー(ビルマ)・フィリピン・ブルネイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・東ティモールを含む。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*21:【Vietnam・越南】インドシナ半島東部の社会主義共和国。面積33万平方キロメートル。人口8584万7千(2009)、53の少数民族を含む。前2世紀以来中国の支配に服したベトナム民族は10世紀に独立して大越と号し、版図を拡大。19世紀初め現在の領域を統一して越南と号したが、19世紀後半にフランス領となる。1945年ホー=チ=ミンのもとにベトナム民主共和国(首都ハノイ)として独立、これを認めないフランスが介入し南部を支配した。第一次インドシナ戦争の結果フランスは撤退したが、アメリカが介入して55年南部にベトナム共和国(首都サイゴン)を建て、ベトナム戦争を招いた。75年ベトナム共和国は崩壊、翌年南北ベトナムは統一して社会主義共和国となる。首都ハノイ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*22:(「大智度論」に基づく)わずかな物も積もり重なれば高大なものとなることのたとえ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)