中日ドラゴンズが再び昇り竜に?立ちはだかる課題を探る!
2011年にセ・リーグを制覇してから7年。最近では低迷が続く中日。落合博満監督が指揮していた頃は憎らしいほどの勝負強さを誇っていた。しかし、退任後は見る影もないほどにもろさを露呈してしまっている。その中日が再びあの強さを取り戻す道筋に迫りたい。
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ベテラン勢は奮闘するも誤算続きの投手陣
ペナントレース*1開幕前は、弱冠20歳の小笠原慎之介投手を筆頭に、笠原祥太郎投手、柳裕也投手、鈴木翔太投手といった若手の先発投手に期待がかかっていた。ところが、小笠原投手は左肘の手術、笠原投手、石川投手、柳投手は結果を残せずあえなく二軍落ち。
加えて、リリーフ*2陣は壊滅的で、田島慎二投手、谷元圭介投手、又吉克樹投手、岡田俊哉投手ら実績のあるピッチャー*3も不振あるいは怪我で戦線離脱を余儀なくされている。
その中でも光明が見えるのは松坂大輔投手の一軍復活をはじめ、山井大介投手や吉見一起投手らベテラン*4勢の獅子奮迅の活躍であろう。頼れる先発がオネルキ・ガルシア投手のみの現状で、登板間隔は空きながらも先発投手として試合を作る役割を果たしている。特に松坂投手は全盛期の力でねじ伏せる投球ではないが、変化球でうまく打ち取っている。オールスターゲーム*5に選出されるだけでなく、低迷するチーム内で精神的支柱のような特別な存在であり続けている。
期待できる若手投手の頭数がそろっていながらも、けが人続出や不振で結果を残せていない現状には森繁和監督も頭を痛めているはずだ。当面はガルシア投手を先発陣の中心に据え、松坂投手らベテラン勢でローテーション*6を回し、若手投手に投球の機会を与え、試合を作っていくしかないだろう。
リリーフ陣も苦しい台所事情だが、浅尾拓也投手が復活し、ジョエリー・ロドリゲス投手や佐藤優投手につなぐ「勝利の方程式」が確立できつつあるのは好材料といえよう。岩瀬仁紀投手の踏ん張りにも期待したいところだ。
守備力は両リーグで最小の失策数であり、最上級の堅守は黄金期から変わっていない。やはり投手陣の整備が急務であるのは間違いない。
外国人選手を中心に力を発揮している打撃陣
投手陣とは対照的に打撃はダヤン・ビシエド選手やソイロ・アルモンテ選手を中軸に据え、平田良介選手や大島洋平選手が引っ張る打線はセ・リーグ屈指の打撃力である。チーム打率はセ・リーグトップのヤクルトと僅差である。
セ・リーグのチーム別打率(2018年9月22日現在)
チーム名 | 打率 |
---|---|
ヤクルトスワローズ | .268 |
中日ドラゴンズ | .266 |
広島東洋カープ | .264 |
読売ジャイアンツ | .257 |
阪神タイガース | .256 | 横浜DeNAベイスターズ | .253 |
しかも得点圏打率だとリーグ1位なのだ。
セ・リーグのチーム別得点圏打率(2018年9月22日現在)
チーム名 | 得点圏打率 |
---|---|
中日ドラゴンズ | .283 |
ヤクルトスワローズ | .273 |
読売ジャイアンツ | .273 |
阪神タイガース | .264 |
広島東洋カープ | .258 |
横浜DeNAベイスターズ | .252 |
しぶとく好機を生かす打線は中日の変わらないチームカラー*7といえよう。低迷期とこき下ろされながらも、打撃に関しては安定した力を発揮していることに注目だ。
しかし、首位を走る広島やヤクルトといった上位チームとの歴然たる差は長打力だろう。
セ・リーグのチーム本塁打数(2018年9月22日現在)
チーム名 | 本塁打数 |
---|---|
広島東洋カープ | 169本 |
横浜DeNAベイスターズ | 166本 |
読売ジャイアンツ | 140本 |
ヤクルトスワローズ | 122本 |
中日ドラゴンズ | 92本 |
阪神タイガース | 82本 |
ビシエド選手やアルモンテ選手といった外国人選手に頼り過ぎる部分は少なくない。ただし、成長株の福田永将選手をはじめ、高橋周平選手や京田陽太選手と若手野手も役割をつかみつつある。野手に関しては計算できる陣容ができている。セ・リーグ1位の高い得点圏打率を生かし、個々の選手が長打力を増やしていけば脅威の打線になるのは想像に難くない。
議論を避けられない球団の体質
クライマックスシリーズ*8出場という短期的な目標に対し、現状の球団の姿勢や方針を今さら議論するのは極めて無意味であり、非効率なことであるのは十分承知だ。しかし、ここ数年の低迷は明らかに球団の経営首脳陣の体質に問題があり、方向性が鮮明にならないことによるものだ。それでは、あえてこの問題にメスを入れていきたいと思う。
近年の中日ドラゴンズの名監督といえば、闘将と称された星野仙一氏と冷徹に勝負を見極めて結果を残した落合博満氏ではないだろうか。残した成績のみで見れば、落合氏が歴代最高の監督という見方もできる。
落合監督は独自の野球観でチームを把握し、独特な距離感でコーチ*9や選手たちに接する。そして、それぞれを効果的に動かし、隙のないチーム作りを行ってきた。それは現役時代からそうであったように、一匹狼で球界を渡り歩いてきた落合監督でしかできない「結果こそが全て」という勝負至上主義の野球であった。
監督就任8年間で4度のリーグ優勝、日本一が1度。Bクラスは一度もない。まさに憎たらしいほどに強い中日の象徴であった。しかし、それほどの結果を残しながらも「ファンサービス」や「無愛想で高圧的」などと球団内部からも批判を受け、なんとも後味の悪い退団となった。
再びゼネラルマネジャー*10として中日に復帰するが、立て直せずに退任することになる。ゼネラルマネジャーとしてはドラフト*11方針を始めとする補強策がことごとく外れ、費用削減を奨励するが余りに選手たちの気持ちを掌握できず、溝が生じてしまい「オレ流」は発揮できなかった。しかし、そんな落合氏だとしても監督としての手腕に疑いの余地がなく、「勝てる監督」であるのは間違いない。
「客が呼べない」から落合監督を解任した中日の経営首脳陣だが、その後観客動員数を伸ばすような大改革を広島やDeNAのように敢行してきたわけではない。むしろ落合監督時代の観客動員数を上回ることは一度もできていない惨状だ。勝ちにこだわるわけでもなくファンサービスに力点を置くわけでもない。さらに、新しいチームカラーを模索するわけでもない。一体どうしたいのか。これが中日ファンの思いであるはずだ。
落合氏の処遇に端を発する球団内部の問題を抱えている限り、中日躍進は見えてこないだろう。
まとめ
中日ドラゴンズの課題は投手力なのは誰もが指摘する課題であろう。しかし、陣容を詳しく見ていくと、老壮の釣り合いも絶妙で、実力のある有望な選手も多い。投手においても駒不足というよりは「持てる力を余すことなく発揮できていない」と表現するのが正しいだろう。実績のある選手が故障から復帰し、不振から抜け出せるようなら、若手が数名出てくるだけでもすぐ「投手王国再建」となる可能性は高い。打線は変わらずしぶとさと勝負強さを維持しており、実力十分だ。
潜在能力はありながら低迷を続けるのは球団の経営首脳陣の姿勢や方針がぼんやり定まらないことに他ならない。今季限りで退団が決定的な森監督の後任が報道を騒がせており、立浪和義氏や二軍監督の小笠原道大氏の名前が浮上している。いずれにせよ、方向性を見失っているチームに明確な目標を示すことのできる監督が必要であろう。
白井文吾球団オーナー*12は落合氏の監督としての功績を高く評価している。しかし、球団幹部やOB*13からの評価が低いため、監督人事は毎回その綱引きの落としどころを探るような人事となってしまっている。
その様々なしがらみから脱することができるか。それこそが画竜点睛を欠かない再建の第一歩となりそうだ。
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*1:【pennant race】優勝旗争奪戦。特にプロ野球で、リーグ優勝を争う公式戦。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*2:【relief】野球で、先発投手以降に救援で登板すること。また、その投手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*3:【pitcher】野球で、打者にボールを投げる人。投手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*4:【veteran(イギリス)・vétéran(フランス)】その方面について経験豊富な人。老練な人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*5:【all-star game】プロ野球やサッカーなどで、優秀選手および人気選手の選抜による特別試合。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*6:【rotation】(回転・循環の意)野球で、先発投手の順番を決めて起用すること。また、その順序。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*7:【team colo(u)r】(日本での用法)そのチームの個性や特色。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*8:〔和製語 climax+series〕プロ野球セパ両リーグで行う,日本シリーズ出場権を争う試合。ペナント戦の上位 3 球団が出場して,2 位・3 位球団が 3 回戦制で対戦,その勝者と 1 位球団(アドバンテージ 1 勝)が 6 回戦制で対戦する。ただし両リーグの優勝球団はペナント戦の勝率 1 位の球団とする。2007 年(平成 19)より実施。CS。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*9:【coach】競技の技術や戦術などを指導すること。また、それをする人。コーチャー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*10:【general manager】 総支配人。総責任者。GM。スポーツ-チームの総監督。監督の上位にあり,チーム編成などを行うが,現場での指揮は執らない。GM。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*11:【draft】プロ野球で,新人選手に対する入団交渉権を,全球団で構成する選択会議で決めること。過当競争を避けるためのもの。また,その会議で選ばれて指名されること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*12:【owner】(持主の意)会社・店舗などの所有者。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*13:【OB】(old boy)(在校生に対して)男の卒業生。また、会社等を引退した男性。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)