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ピピ島閉鎖?タイの観光産業における苦悩と優れた決断!

ピピ島に浮かぶ木船と澄んだ海

ピピ島入場制限の報道に触れたタイファンも多いはずだ。タイのピピ島といえばハリウッド映画「ザ・ビーチ」で一躍有名になった「夢のビーチ」だ。岩に囲まれたビーチはタイ屈指の名勝地でもある。そこに至るまでの背景には一体何があったのか探ってみたい。

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2018年4月26日:用字用語の整理。

観光立国タイの苦悩

ピピ島の浜辺に浮かぶ木船

タイ*1は国内総生産*2の15%以上が観光業に及ぶほどの観光立国である。日本人も年間138万人が旅行先に選ぶ人気の観光地となっている。そのタイが観光地であるピピ島の閉鎖を発表した。そのことが一部で一大事と捉えられたのだ。

中国人観光客の急増

中国人の間でタイ旅行がにわかに盛んになっている。中国*3とタイはラオス*4とミャンマー*5に隔てられているが、隣国に等しい関係で中国各地からタイへの航空直行便が多数就航している。官公庁や旅行会社の呼び掛けもあり、2016年と2017年は年間900万人以上の中国人観光客がタイへと押し掛けた。その威勢は数年前日本でも起きた「爆買い*6ブーム*7」をほうふつさせる。

マナーの悪さ?真の問題に迫る!

中国人観光客の行儀の悪さは周知の事実である。今でこそ日本人観光客の行儀の良さは世界各国から高い評価を得ているが、一昔前の1960年ごろはひどかったそうだ。日本政府の地道な広報活動が奏功し、改善した側面が大きいとされている。

しかし、2016年にタイ王族の避暑地もあるホアヒンにて「旅の恥はかき捨て」を履き違えて、全裸になってひんしゅくを買った安本丹*8たちがいた。現地のタイ人を不快にさせてしまうばかりでなく、タイを愛する日本人にも迷惑を掛けているのを忘れるべきではない。

「人のふり見て我がふり直せ」で二の舞いとならないように反面教師*9とし、われわれも戒めとしなければならない。タイ国政府観光庁がまとめた「中国人観光客に対するタイ人の意識調査」を、割合の多い順に掲載しておく。

  1. 大声で騒ぐ
  2. ぽい捨て*10
  3. たんを吐く
  4. 規則を守らない

ただし、ピピ島閉鎖に関しては中国人だけが悪いわけではないようだ。タイの観光地では急増する中国人観光客に対し、排除するどころか受け入れ体勢を整えているように見える。中国語の標識や看板を設置されたり、以前はタイ語と英語のみだった空港のアナウンス*11に中国語も追加されたりしている。

最も問題となっているのは「観光客の数」である。タイの観光客における主要目的の一つは海や南国リゾートだ。それは当然中国人観光客にも当てはまる。つまり、観光地の受容力を急増した観光客の数が上回ってしまったようだ。

入島制限をした理由

ピピ島の砂浜から見える小島と透明に澄んだ海

現時点でピピ島の入場制限をした理由をタイ国政府観光庁が述べている。それは急増した観光客による「自然破壊」を問題視したからである。

大多数の観光客は規則を守り、環境保護に好意的な行動をとっている。まるで人間には生まれながらにして自然を愛する気持ちが宿っているかのようにだ。一番の関心事は写真共有アプリ*12「インスタグラム」に見栄えのする写真を撮影することのようで、生態を激変させてしまうような蛮行が頻発しているわけではない。

タイ政府の事前政策

実はタイ政府はピピ島封鎖の以前に対応策を示していた。一例を挙げると、2017年よりピピ島以外にも自然公園への入島料の徴収を開始した。これは観光客数の抑制が目的ではなく、観光客の増加に連動するごみ問題やトイレ問題などに対応するするための自然保護用資金であった。しかし、予想をはるかに超える観光客の急増により、今回の入場制限策を実施することとなったのだ。

通年閉鎖ではない

タイ政府によって発表された「ピピ島閉鎖」だが、雨期に当たる6月~9月の閑散期が選ばれた。この時期はからっと晴れることが少なく、海洋状況も波の高さが目立つため、観光には不向きとされている。

閑散期の楽しみ方

中には休暇の都合などから雨期である閑散期にタイを訪れる場合もあるはずだ。しかし、お天道さまは雲に隠れっぱなしで気温は低い。おまけに、波は高く、海中の砂が巻き上がっているのに、ビーチに向かう理由はあるのだろうか。

その一つがリゾートホテル*13にお得に泊まれることではないだろうか。海沿いの行楽地の中には閑散期になると、通常の半額以下になるホテルが多数ある。静寂を求めて、ゆったりと流れる時間をくつろいで過ごすのもいいかもしれない。

まとめ

小島に囲まれたピピ島の澄んだ海

ピピ島入場制限の一報はわれわれに落胆をもたらすかと思ったが、決してそうではなかった。自然保護の大切さを改めて思い知らされる好機であったからだ。一度傷付けてしまえば、二度と再び元に戻らない自然が存在することを再認識しなくてはならない。

旅行者は一度きりの場所だとしても、自然保護にやぶさかであってはならない。取り返しのつかない自然破壊を目の当たりにする前に、「戻る勇気」によって血を流しつつも英断したタイ政府に賛辞を呈したい。

そして、戻らないのは自然だけではない。サンゴ礁を自作自演で傷付けた「どこぞのマスメディア*14」のように、信頼も失墜することを肝に銘じておきたい。

*1:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:(gross domestic product)一定期間(通常1年間)に国内で新たに生産された財・サービスの価値の合計。国民総生産から海外での純所得を差し引いたもの。GDP/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:東アジアの国。きわめて古い時代に黄河中流域に定住した漢民族の開いた国で、伝説的な夏王朝に次いで、前16世紀頃から殷王朝が興り、他民族と対立・統合を繰り返しつつ、周から清までの諸王朝を経て、1912年共和政体の中華民国が成立、49年中華人民共和国が成立。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【Laos・老檛】インドシナ半島中央部、メコン川中流域を占める人民民主共和国。1353年にランサン王朝が興起。1893年以来フランスの保護領。1945年独立。主要民族はラオ人で仏教徒。山岳・高原地帯には多くの少数民族が住む。言語はラオ語。面積23万6800平方キロメートル。人口649万2千(2015)。首都ヴィエンチャン。ラオ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【Myanmar】東南アジア大陸部の西部にある連邦共和国。11~13世紀パガン朝が栄え、19世紀イギリスの支配下に入ったが、1948年ビルマ連邦として独立。89年現名に改称。住民はビルマ人を主とし少数民族も多い。大半は仏教を信奉。面積67万6600平方キロメートル。人口5028万(2014)。首都ネイピードー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:俗に,たくさんの量や種類の買い物を勢いよくすること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【boom(アメリカ)】ある物事がにわかに盛んになること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:あんぽん‐たん(アホタラの撥音化か)愚か者をののしっていう語。あほう。ばか。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:〔毛沢東の言葉から〕悪い見本として,かえって見習うべきようなもの。悪い面の手本。悪例。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:所かまわずゴミを投げ捨てること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【announce】告知すること。人の集まる場所で、放送により知らせること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:アプリケーションの略。特に、スマートフォンなどで用いるソフトウェア。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【resort hotel】避暑や保養の目的でリゾートに建てられたホテル。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【mass media】マス‐コミュニケーションの媒体。新聞・出版・放送・映画など。大衆媒体。大量伝達手段。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)