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無名のタイ料理?自由の国で新たな「うまみ」を発掘せよ!

タイの屋台に並ぶタイ料理

おいしい料理を「うまみ」と呼ぶこともあるタイ。世界三大スープの一角トムヤムクンは最も有名だ。また、そのおいしさからグリーンカレーやガパオライスも日本で大衆的な料理となった。今回は現地タイ人が舌鼓を打つ「うまみ」をいくつか取り上げてみたい。

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タイ旅行で友人たちと楽しみたい料理

お皿に盛られたパッタイ

タイ*1旅行においてタイ料理は楽しみの一つであるはずだ。出発前にガイドブック*2をむさぼり読み、限られた時間の中で食べたい料理を取捨選択するのも醍醐味(だいごみ)である。その有力な候補となり得る、タイ人もお薦めの「タイ料理」をご紹介したい。

パットシーユー(ผัดซีอิ้ว)

お皿に盛られた具沢山のパットシーユー

タイ料理の麺といえばクイッティアオ(ก๋วยเตี๋ยว)のような汁麺を思い浮かべるかもしれない。しかし、汁なしの焼きそばのような風味が好物ならば、パットシーユーも試してみる価値ありだ。

日本人にとってはパッタイ(ผัดไทย)の方が周知されている。パッタイは中太のきしめんのような米麺を豆腐とともにタマリンド*3を使用して炒め、食前にモヤシ*4、ニラ*5、砂糖、唐辛子*6を加えて食べる料理だ。

一方、パットシーユーは明確なレシピ*7が存在しない「タイ風焼きそば」だ。しょうゆ風味の麺なので、われわれ日本人にとっても食べやすい味付けとなっている。ただし、しょうゆといってもタイの黒しょうゆであるシーイウダム(ซีอิ้วดำ)を使用するので、黒蜜に類似した一種独特の味わいがある。

パットシーユーも他のタイ料理と同様に、エビ、鶏肉、豚肉などの入れる具材を指定することができる。また、麺の太さを選ぶことができる場合もある。

入れる具材

  1. エビ入りタイ風焼きそば:パットシーユー・クン(ผัดซีอิ้วกุ้ง)
  2. 鶏肉入りタイ風焼きそば:パットシーユー・ガイ(ผัดซีอิ้วไก่)
  3. 豚入りタイ風焼きそば:パットシーユー・ムー(ผัดซีอิ้วหมู)

麺の太さ

  1. 細麺:セン・レック(เส้นเล็ก)
  2. 太麺:セン・ヤイ(เส้นใหญ่)

ティムサム(ติ่มซํา)

せいろに入れられたタイの点心

もしタイで朝食に迷ったなら、ティムサムを推薦したい。ティムサムはタイ語表記ではあるが、元々中華料理*8の「点心*9」を指しており、英語でも「Dim sum」と表記される国際的に認知度の高い料理だ。

専門のレストラン*10で楽しむことができるティムサムはそれ自体が一つの料理を指すのではない。まずお店に入ったら、ご飯、おかゆのどちらかを注文しよう。まんじゅうや麺類が大抵含まれていないのが、中国*11や他のアジア諸国の点心と異なる点だ。

その後せいろ蒸しされているテーブル*12に行き、水ギョーザ*13、シューマイ*14、春巻き*15などから好みの点心を選ぶ。中華料理とタイ料理が融合し、独自の食文化として根付いているのが興味深い。朝食だけの献立となるので、機会があれば一度お試しあれ。

タイの魚料理

一匹丸ごと使われるタイの魚料理

ほとんどのタイ料理レストランでは魚の丸ごと料理が提供されている。そこでは魚の種類と調理方法を注文することになる。魚の種類は大別するとテラピア*16などの淡水魚とフエダイ*17などの海水魚に分かれる。

淡水魚は泥臭いと毛嫌いされがちだが、タイ料理ではレモングラス*18などの香辛料がふんだんに使われているため、臭いは全くといっていいほど消え去っている。なんにでも合う癖のない魚肉と店によって特徴のあるたれがたまらない。

原形をとどめた魚料理は食卓を見事に引き立ててくれる。だから、レストランでは豪華でおいしいタイの魚料理を注文してみてはいかがだろうか。

タイの魚料理の調理例

  1. 魚の姿焼き:プラー・パオ(ปลาเผา)
  2. 魚の揚げ物:プラー・トート(ปลาทอด)
  3. 蒸し魚:プラー・ヌン(ปลานึ่ง)

ロールアイスクリーム(ไอติมผัด)

タイ発祥のロールアイスクリーム

締めくくりにタイのデザート*19をご紹介したい。タイでは屋台でもデザートが売られているが、近年人気を集めているのが「ロールアイスクリーム」だ。冷やした鉄板の上に液状のクリームを載せ、目の前でアイスクリームをこしらえてくれる。

アイスクリームが次第に出来上がっていく光景を目前にできるのは斬新で面白い。やがて液体から固体になれば、へらで平たく伸ばし、巻いた状態にして容器の中に入れてくれる。そして、トッピング*20をして完成だ。かわいらしさと目新しさが受けて、日本をはじめとした世界中のあちこちで、タイ発祥のアイスクリームが人気を博している。

まとめ

プーケット島で出店しているすしの屋台

接待ならば名の知れたレストランでの食事が無難だろう。しかし、気心の知れた間柄なら高級レストランばかりでは肩がつかえるというもの。そんなときは大衆食堂のようなところで、タイ人に混じって「今のタイ料理」をつついてみてはいかがだろうか。きっと新たな発見に巡り合えるはずだ。まだまだ日本人が知らない「タイのうまみ」はたくさん眠っているはずだ。

また、タイで独自の進化を遂げたタイ国外由来の料理からも目が離せない。そして、改めて切っても切れない食文化と歴史のつながりから、さまざまな側面を学べるに違いない。

時にはタイで進化し過ぎた「和食」を目の当たりにするかもしれないが、「自由の国」「ほほ笑みの国」であることをどうかお忘れなく。

*1:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【guidebook】手引書。指南書。(旅行)案内書。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【tamarinde(オランダ)・答満林度】マメ科の高木。中央アフリカ原産の薬用植物。果肉は食用。清涼飲料・緩下剤にも用いる。街路樹にもされる。朝鮮藻玉(もだま)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【萌やし・糵】豆・麦などの種子を水に浸して発芽・軟白させたもの。また、その状態。食用。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【韮・韭】ヒガンバナ科(旧ユリ科)ネギ属の多年草。葉は長さ20~30センチメートルで扁平、全体に強い臭気がある。春の葉は柔らかく美味。夏、紫色をおびた白い小花を束状につける。原産地は東アジアとされ、古く中国から渡来。日本各地で食用として栽培。古名こみら・みら。〈 春 〉。「韮の花」は〈 夏 〉。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【唐辛子・唐芥子・蕃椒】ナス科の一年草。熱帯アメリカ原産とされる。果菜として世界で広く栽培、インド・東南アジアにも品種が多い。日本には16世紀頃に渡来。夏、白色の小五弁花をつける。果実は未熟の間は濃緑色、熟すると赤くなる。多くの栽培品種があり、辛味種は、果皮・種子に刺激性の辛味を有し、乾燥して香辛料とする。甘味種は、ピーマンと呼ばれ、食用。観賞用もある。南蛮辛子。南蛮。〈 秋 〉。「唐辛子の花」は〈 夏 〉。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【recipe】料理の材料や調理法。また、それを記したもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:中国で発達した料理。材料・調味料・調理法の種類が多い。大きくは北京料理・上海料理・四川料理・広東料理の4大料理系統に分かれる。日本の卓袱(しっぽく)料理・普茶料理は、その日本化したもの。中国料理。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:(テンジンとも)中国料理で、食事がわりの軽い食品の総称。転じて、茶請けの菓子。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【restaurant(フランス)】西洋料理店。日本では1857年(安政4)頃長崎に、62年(文久2)横浜に開業。洋食屋。レストラント。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:東アジアの国。きわめて古い時代に黄河中流域に定住した漢民族の開いた国で、伝説的な夏王朝に次いで、前16世紀頃から殷王朝が興り、他民族と対立・統合を繰り返しつつ、周から清までの諸王朝を経て、1912年共和政体の中華民国が成立、49年中華人民共和国が成立。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【table】平らな板に4脚ないし中央に1脚をもつ洋家具の総称。卓。食卓。洋卓。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【餃子】(中国山東省の中国語音から)小麦粉をこねて薄く伸ばした皮に、挽肉(ひきにく)・野菜を包んで焼き、または茹(ゆ)で、あるいは蒸したもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【焼売】(広東語)中国料理。鶏・豚などの挽肉(ひきにく)に野菜のみじん切りをまぜて塩・胡椒・砂糖で味をつけ、小麦粉をこねて薄くのばした皮に包んで蒸したもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:小麦粉で作った薄い皮で具を包み、揚げた中国料理の点心。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【tilapia】カワスズメ科(シクリッド科)ティラピア属などの淡水産硬骨魚の総称。カワスズメやナイル‐ティラピアなど。原産地はアフリカ。食用として世界各地に移植。タイ型で、暗褐色。全長30~50センチメートル。日本でも養殖され、市場に出る。ティラピア。チカダイ。イズミダイ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:【笛鯛】スズキ目の海魚。全長約40センチメートル。体は楕円形で,体高が大きく側扁する。吻(ふん)がやや突き出し,口は大きい。体色は赤色を帯びた黄褐色で,ひれは黄褐色。タイの仲間ではないが,食用魚として美味。本州中部から沖縄にかけての沿岸に分布。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:【lemon grass】イネ科の多年草。熱帯アジア原産。高さ約1.5メートル。葉は群がって株を作り、硬く線形で、長さ約50センチメートル、幅1センチメートル。全体に芳香があり、精油を採って化粧品や飲料・食品の香料などに用いる。レモンガヤ。レモン草。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:【dessert】西洋料理で、食事の最後に出す菓子・果物など。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:【topping】料理や菓子の仕上げに、調味や飾りのためにのせるもの。ピザの具やアイス‐クリームにふりかけるチョコレート‐チップなど。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)