人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

18時間にもわたり一心不乱にさびた包丁を研ぎ続けたら?

さびだらけの包丁

古くなったものを捨てようとすると、祖父母から「もったいない」と叱られたことはないだろうか。暖衣飽食の現代日本も一昔前には大東亜戦争の焼け野原を経験したのだと痛感させられる。しかし、さしもの祖父母もこの包丁は幾らなんでも捨てていたはずなのだ。

異常にさびている包丁

接写されるさびきった包丁に驚かされる。一体どれだけ放置したら、これだけぼろぼろになるのだろうか。おんぼろ包丁を手作業のみで再生すべく、磨き始めた「もったいない精神」の持ち主がいる。果たして野村克也氏顔負けの「再生工場」となることはできるのだろうか。

紙やすりを小刻みに前後させては水を付け、切っ先*1から柄元までひたすら研ぎ続ける。すると、原形を留めていないほどにさびついた包丁が、少しずつながら本来の姿を取り戻し、刃に輝きが戻っていくのが分かる。

この時点で「ごしごし」をいかほど繰り返したのだろうか。見ているこちらがけんしょう炎*2になりそうくらい、丹念に作業を続けている。頑固なさびが落ちて、ぴかぴかが顔を出してくると実に爽快だ。

さらに、峰*3の部分や柄*4に入っている中子*5まで磨き上げる。それでも、物足りないのか、粗さが異なる何種類かの砥石(といし)を使い分けて研ぎ続ける。この男性はやると決めたらとことんやってみる凝り性のようだ。

苦節18時間、包丁は柄の部分まで取り換えられ、新品と遜色がない奇麗な状態に仕上がった。無論見た目だけでなく、紙やおしぼりなども一刀両断にできる。遮二無二に研ぎ上げた努力の結晶である。

消費から再利用の時代に?

植物が入っている電球

実体経済の不調や伝統工芸を見直す風潮も影響してか、近年古くなったものの再利用や廃材の活用が見直されつつある。クールジャパン*6なる言葉の普及も少なからず影響しているはずだ。

古くなったものをさっさと捨てるのではなく、最後の最後まで使い続けようとする価値観は定着すべきだと思う。なぜなら、暖衣飽食の時代に生まれたわれわれは資源が無尽蔵にあると勘違いしている嫌いがあるからだ。そして、「いらなくなれば捨てる」が人間関係にもあしき浸潤をしている気がしてならないのだ。ものを大切にすることから波及する好影響は決して少なくないはずだ。

ただし、消費期限をひどく超過した飲食物は別儀でござる。

(出典:YouTube

*1:【切っ先】刀などの刃物の先端部。刃先。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:腱鞘の炎症。細菌感染、機械的刺激、手や指の過労などによって起こり、疼痛・腫脹を主徴とする。キー‐パンチャー・プログラマー・ピアニストなどの職業病としても知られる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:刀剣の刃の背。棟(むね)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:手で持つために、器物につけた細長い部分。とって。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:刀身の、柄(つか)に入った部分。作者の銘などをこの部分に切る。刀心。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:〔和製語 COOL+Japan〕漫画・アニメ・ファッションなど,日本独自の文化が海外で高く評価されている現象。また,そうした文化。〔2010 年(平成 22)経済産業省がこうした文化を日本の経済活動とし,海外進出・人材育成を促進するためクールジャパン室を創設〕/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)