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観光客必見!タイのぼっ手繰りに対する回避方法と考え方

一文無しの男性

法外な料金をむさぼり取る「ぼっ手繰り」。その暴利は公序良俗に反する行為としてタイでも処罰される。旅行会社でも旅行客に注意喚起しているが、タイ旅行での被害報告が後を絶たない。タイ旅行を楽しむためにも、その手口と対処策を最低限は把握しておこう。

日本人観光客が遭遇する問題

観光客が集まるタイの寺院

誰しも未踏の地では経験や土地勘が不足しており、現地のタイ人に頼らなくてはならない場面が当然出てくる。もしタイ*1に知人がいたり、信頼できる人間を紹介してもらえたりするなら至極安心なのだが。

しかし、大抵の旅程において、一面識もないタイ人とやりとりをすることになるはずだ。無論それこそが旅の醍醐味(だいごみ)であり、人間の優しさに触れたときの感動は忘れ難い思い出となる。ただし、ぼっ手繰られて不愉快な思いをしてしまっては、旅が台無しになってしまいかねない。

タイ人被害者

海辺で膝を抱くタイ人女性

興味深いのはぼっ手繰り被害に遭うのは外国人観光客だけではないことだ。実は現地のタイ人もタクシー*2で詐欺に遭い、屋台で価格をごまかされることがあるそうだ。タイ警察もタクシー運転手を対象とした検問を熱心に行っているし、屋台にも検査が入っている。違法就労をしている運転手や店舗は処分を受けることもしばしばある。

ぼっ手繰りをしているやからは外国人観光客のみならず、獲物を物色しているようだ。現地人すらだまされるのだから、手ごわい相手といえるが、予備知識を持つことで未然に防げる悪事もある。

タイのぼっ手繰りの事例

忍び寄る魔の手

少額から高額までさまざまな報告があるが、旅行者は空港を出た時点から標的となる。例えば空港からホテル*3にタクシーで移動する際に、運転手によるぼったくりが頻発しているから、用心しなければならない。

また、市街で買い物をする際も同様だ。悪質な店舗では現地人価格や外国人価格の裏設定の存在がまことしやかにささやかれている。さらに、違法な偽物を高額で購入させられ、日本の税関で没収される憂き目に遭う例もある。ちなみに、話の種にと「偽ブランド*4」と認識して日本国内に持ち込もうとした場合、関税法違反により重罪に処されることもある。

タイのタクシー運賃

ガイドブック*5にもタイのタクシーに乗車する際、「メーター*6」の使用を運転手に告げるよう述べられている。タイのタクシーは外国人観光客に対し、規定よりも高い値段を請求する悪例が相次いでいる。

その背景に着目すると犯行の動機が見え隠れする。タイのタクシー運転手はタクシー会社の社員ではなく、タクシー運営会社から車両を借り受けた個人によって営業されていることがほとんどだ。その場合は運転手の収入が完全な歩合制となっており、短時間で利益率を上げようする嫌いがある。

また、問題が起きてもタクシー運営会社が事件の責任を負おうとはせず、責任の所在があいまいにされている。それらの状況がタイのタクシーにおける事故や事件が解消されない大きな要因となっているのは明白である。

ただし、支払いの際に端数の釣り銭をチップ*7とする慣習があるので、注意してもらいたい。例えば57バーツの運賃なら、60バーツを渡して3バーツを心付けとする形だ。

タイの屋台にはびこる外国人価格?

タイの屋台で舌鼓を打った後に、同じ料理を注文している隣席の価格が安いと気に掛かるもの。ましてや不慣れな文化や言葉の中で起きた出来事なので、特別仕様なのかぼっ手繰りなのかを考え出すと、しまいには疑心暗鬼になってしまう。

悪意の有無は不明だが、タイの屋台では外国人が注文した場合、同じ料理でも大盛りを出されることも少なくない。ただし、よっぽど度を超した価格でない限り、あまり目くじらを立てないでよいのではないだろうか。むしろ親切心でやってくれたと信じ、疑念を晴らす方が賢明なはずだ。ちなみに、大盛り価格の目安は通常の1・5倍程度までだと覚えておくと参考になるだろう。

タイ人による釣り銭の計算間違い

レジ*8のない店舗で支払いを済ませた後、受け取った釣り銭が合わないことに気付いた経験はないだろうか。釣り銭を詐取しようとする悪巧みだと判断されがちだが、実はその確率は低そうだ。

2016年東南アジア諸国連合(ASEAN)学力調査で、タイは10カ国中8位である。名目国内総生産*9が10カ国中2位の経済力を持つタイだけに意外な結果ではある。タイ人によればタイの学校では九九を12の段まで学習するそうだ。それなら、暗算が得意かと思いきや、小学校6年間を費やして習得するカリキュラム*10のせいか、計算を苦手とするタイ人が多いそうだ。

日本人が好みそうな「小銭の出ない支払い方」なども、不慣れなタイ人にとっては計算しづらいかもしれない。無論全てのタイ人に当てはまらないが、一般的にタイの所得水準と教育水準が比例することも頭に入れておきたい。従って、レジのないような店舗で仮に釣り銭が合わなかったとしても、とがめ立てずに穏便に済ませたい。ましてや相手がご老人なら「ちょっとした気遣い」で懐が深いところを見せたいものだ。

ぼったくりから身を守る方法

頑丈そうなフェンス

せっかくのタイ観光旅行も不公平に扱われたり、だましに遭ってしまったりすると楽しさが半減してしまいがちである。そんな問題事から身を守るすべをいくつかご紹介したい。何はともあれ、備えあれば憂いなしだ。続いて、万が一遭遇してしまった場合の対処の仕方にも触れておきたい。

危険な場所には行かない

海外で犯罪に巻き込まれる場合、後々に振り返ると大概は起こるべくして起きているのがほとんどだ。つまり、薬物売買、違法売春、法外な利得などに絡む事件が非常に目に付く。本人の意思とは関係なく、いかさまばくちや偽物の宝石の販売店に半ば強制的に連れて行かれ、だまされる事件も多発している。

しかし、大抵は被害者の身から出たさび*11である。地下組織の運営する「風俗や賭け事」に興味をそそられたのが契機になっていることも多い。とにかく、身の安全のために、むやみに無法地帯に足を踏み入れてはならない。地下にあるのが、あなたの亡きがらにならないためにもだ。

レジのある店舗で購入する

バーコード*12などにより商品管理がしっかりされていない店舗だと、ごたごたが起きやすい。タイらしさを求めて食品や衣料の屋台でも買い物をしてみるのもいいだろう。ただし、言語の壁や物価の無知に付け込まれ、ぼっ手繰りが横行しているのも事実だ。

一度でもだまされた外国人観光客も節度なく値切り小切りをし、断られて逆切れ*13をする場合もあり、悪循環に陥っているように見受けられる。楽しいはずの旅先で、結果的に双方が気分を害するのは残念だ。

そこで選択肢に入れたいのが、POS*14により商品管理がされているレジ精算を採用している店舗での買い物だ。特に限られた時間での旅行だと、値引き交渉の煩わしさからも解放されて重宝するはずだ。

だまされた被害を冷静に判断する

的外れな忠告だと思われるかもしれないが、タイ旅行を心行くまで味わうための一丁目一番地になる考え方のはずだ。

タクシー運転手が小銭不足を理由にお釣りを支払わない。屋台で注文した料理が勝手に具だくさんにされている。ホテルに戻ってから釣り銭を確認したら足りない。

他にも色んな場面が想定されるが、いずれも悪気のない行動の可能性もあり得るから早とちりして、叱責(しっせき)してはいけない。仮に落ち度が認められたとしても、人前で怒られることを極度に嫌うタイ人のことだ。面子を立ててあげる努力も忘れたくない。

核心に迫るが、金銭的な損失を計算してみると答えが明らかになる。本来151バーツ*15(約512円/2018年3月19日現在)のタクシー運賃を200バーツ(約679円/2018年3月19日現在)支払ったとしよう。その差額は167円ほどである。金額うんぬんではなく、欺瞞(ぎまん)に満ちた「その気持ち」が許容できないのも痛いほどよく分かる。

ただし、タイ旅行を満喫する時間が無尽蔵にあるわけではない。しかも、その貴重な時間の大部分を「憤激の色」で染めてしまうのは本当にもったいない。しかも、「ほほ笑みの国」なのにだ。だから、「負」に固執することなく、早々に手打ちにして、タイで最高の思い出をつくってもらいたい。

まとめ

赤色と青色の混ざり合った美しい空

どうしても日本と比べて海外はぼっ手繰りの危険が付きまとう。それはタイとて同じだ。少額のごまかしなら「計算間違い」として受け入れるのが総合的な見地からも賢明だろう。

本稿ではあくまで「暴利を許さじ」という立場で論じているが、海外では抗議すらままならない緊迫した場面に出くわす恐れもある。まず命を守ることを大前提に行動することを、いつなんどきも忘れるべきではない。

また、一にも二にも海外旅行で被害の回避に重要なのが、危険な地域に興味本位で入り込まないことだ。夜遊びにおいても酒が手伝い、殊の外一大事に発展してしまうことだってある。いかなる状況下においても自己責任であることを心に刻んで楽しみたい。

だましを疑う行為に直面したらどうすべきだろうか。相手が意図せず、間違っているだけかもしれない。ただし、感情的に怒鳴ったり、まくし立てたりするのは避けるべきだ。丁寧に諭すように指摘しよう。基本的に温厚なタイ人ではあるが、一度逆上すれば手が付けられない。そんな場面を幾度となく目にしてきたから注意してもらいたい。

だから、程度を超える額でないのなら、「時は金なり*16」という言葉を思い出して、次なる楽しみに一歩踏み出すのが得策といえる。せっかくのタイ観光旅行を鬼瓦のような面持ちで終始してはいけない。それは苦行以外の何物でもないからだ。

道中のちょっとした騒動も振り返れば、笑い話の一つになっているはずだ。たまには「予定通り」からほんのちょっぴりだけ脱線してみるのもいい。

その情景はあなたの心の一幕としてきっと輝き続けるだろう。

*1:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【taxi】街中などで求めに応じて目的地まで客を乗せ、所定の料金を取る貸切の営業用自動車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【hotel】旅館。特に、西洋風の宿泊施設。1860年(万延1)オランダ人による横浜ホテルに始まり、東京では68年(明治1)築地ホテル館が最初。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【brand】(焼印の意)商標。銘柄。特に、名の通った銘柄。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【guidebook】手引書。指南書。(旅行)案内書。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【metre; meter】計量器。計器。特に、タクシーの自動料金表示器や、電気・ガスなどの自動計量器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【tip】こころづけ。祝儀。茶代。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:自動金銭登録器。金銭計算器。レジスター。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:(gross domestic product)一定期間(通常1年間)に国内で新たに生産された財・サービスの価値の合計。国民総生産から海外での純所得を差し引いたもの。GDP/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【curriculum】(ラテン語 cursus(競走路)から)広義には、学習者の学習経路を枠付ける教育内容の系列。狭義には、学校教育の内容を発達段階や学習目標に応じて系統的に配列した教育課程。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:身から出た錆 (みからでたさび) 刀身に自然に生じた錆(さび)の意で、自分のした悪い行ないや過失のために、あとで自分が苦しんだり災難を受けたりすることをいう。/出典:故事ことわざ・慣用句 第二版(三省堂 2010年)

*12:太さの違う線とその間隔の並びで、英字・数字などを表現した符号。各種の製品に印刷または貼付される。機械による読み取りを前提に開発、POSシステムで多用される。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:(「逆に切れる」から)それまで叱られたり注意を受けたりしていた人が、逆に怒り出すこと。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:〔point-of-sale〕販売時に販売活動に関する情報処理を行うこと。各店舗のポス端末とホスト-コンピューターを結んで,売上管理・在庫管理などを自動的に行うことができる。販売時点情報管理システム。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【baht】タイの通貨単位。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:(Time is money.)時間は貴重・有効なものだから、むだに費やしてはいけない。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)