すぎやまこういち氏とドラクエのオーケストラコンサート
ドラゴンクエストの作曲者といえば椙山 浩一(すぎやまこういち)氏を置いて他にない。最高齢でゲーム音楽を作曲したとしてギネス認定され、話題になったのは記憶に新しい。今回は名曲たちと各地で開催されている管弦楽団によるコンサートについて語りたい。
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ドラゴンクエストの音楽とオーケストラ
1987年8月20日のサントリーホール*1での公演を皮切りに、昨年で30周年を迎えた。当時は奏者を含め、一般的にゲーム音楽を見下すやからも多かったのが事実だ。しかし、さすがに30年ともなると認知度や社会的地位も向上してきた。そして、楽団の中にもドラクエファンが半数近くもいるなんてことも珍しくなくないそうだ。今やドラクエに欠かせない音楽は好評さくさくである。
私も尊敬して止まない、すぎやまこういち氏自身に関する話題は他稿に譲りたい。
ちなみに、「10~目覚めし五つの種族 オンライン」の戦闘曲である「刃の旋律」が川口浩探検隊のテーマソング*2に酷似していると、重箱の隅をつつく一部の暇人にもてはやされたことがあった。
それに対してすぎやま氏は冒頭のフレーズ*3に両者とも「ラソファミ」の下降進行および刺しゅう音と呼ばれる常とう手段を採用していると理路整然と一蹴した。通しで聞くと「すぎやま節」が全開で、雄々しさと迫り来る危険が絶妙に表現されている名曲だ。どうやら「レベル80」を超えている経験豊かなすぎやま氏には「ダメージ*4」を与えられなかったようである。
ドラクエのコンサートに行ってみたい!
愛着のあるドラクエの音楽をライブ*5で聞きたくなるの至極当然の心向きであろう。しかし、オーケストラの敷居の高さやドレスコード*6などが気に掛かり、二の足を踏む方も多いはずだ。そんな心配はご無用であると断言しよう。
魅力的なドラクエのコンサート
コンサート*7ではすぎやま氏ご本人のお話が聞けるのも実に魅力的である。ただし、最近は津々浦々で開催されており、すぎやま氏不在の場合もある。だから、コンサートの情報欄に「お話:すぎやまこういち」と記載されているかをしっかり確認しておきたい。
なんといってもチケット料金が安く設定されている。相撲の砂かぶり*8に当たる特別席のS席でも平均5000円程度に抑えられている。クラシックに限らず、他のゲーム音楽でもオーケストラコンサートの場合、倍以上の料金もざらにある。その中で一貫して良心的な金額なのは実にありがたい。
ドラクエのコンサートの客層と服装
先に述べたが敷居は決して高くない。15年近く前は男性が多く、男女比は7対3くらいの割合だった。現在は女性も増えて半々くらいだろう。年齢層も小学生からお年寄りまでと幅広く訪れるので「場違い」とは無縁である。
服装もひどくかしこまる必要は何もない。ただし、さすがに寝間着やジャージー*9などで行くのはコンサートうんぬんではなく、礼節を欠くのでご法度だ。人様に見られても恥ずかしくない服装を心掛けていれば大丈夫だ。スライムTシャツ*10でも奇麗なドレスでもいいだろう。いずれにも「ドラクエ愛」を感じ、思わずにっこりしてしまう。
しかし、一点注意してもらいたい。それは迷惑行為の観点からコスプレ*11が禁止されていることだ。他人を不快にさせるような服装をしてはいけない。
ドラクエのコンサートは一人ぼっちだと恥ずかしい?
無論一人でも問題ない。むしろ聴衆を一見すると複数人の方が少ないくらいだから安心してもらいたい。ドラクエのコンサートの参加に「一人ぼっちだから」などの羞恥心は無用の長物である。なぜなら、周りは趣味を共有するドラクエ好きの冒険者たちなのだから。ただし、ビアンカやフローラが見つかるかどうかは別問題である。
すぎやま氏の指揮
これまではすぎやま氏がずっとタクト*12を振って演奏されてきた。しかし、最近では一部公演を除いて指揮者からは退き、おしゃべりが中心となっている。その代わり、コンサートの回数は倍増した形だ。すぎやま氏の指揮する英姿を目にしたい思いもよく理解できる。一方、開催地が増え、ドラクエの音楽に触れる機会に恵まれるのは歓迎されているはずだ。
すぎやま氏以外の指揮者
近来はすぎやま氏以外にもたくさんの指揮者が演奏している。それによって指揮者それぞれの個性ある演奏を堪能できるのは魅力の一つだろう。同じ楽曲なのに「味付け」が少々変わるだけで、全く違った側面を発見させられる。幸運だと特別に一部の楽曲を指揮するすぎやま氏に出会えるかもしれない。
観賞の行儀作法
オーケストラコンサートが一般化し、誰でも気軽に行けるようになった。その反面、マナー*13を守れないやからが増えているのも事実である。
殊に「繊細な音を楽しむ」色合いが濃いドラクエのコンサートだ。最低限の行儀作法は身に付けておきたいところだ。雑音は聴衆だけでなく、演奏者も困らせることになりかねないから最新の注意を払いたい。
演奏中の物音を挙げれば数限りないが、私語やお菓子の袋の音は我慢すれば済む話なので、やめてもらいたい。また、携帯電話は振動音すら雑音になってしまうので、マナーモードではなく、必ず電源を切るように心掛けよう。
せきが出そうなときは速やかに退席しよう。また、体調が優れず、薬を服用しても鼻水やせきが止まらないようなときは勇気を持って欠席すべきだ。
感動に胸が高ぶり、早る気持ちも分からなくはない。しかし、曲が終わってもいないのに早まって拍手するのは慎んでもらいたい。せっかく余韻を楽しんでいる聴衆の妨害になってしまうからだ。従って、指揮者がタクトを完全に下ろしたことを確認してから、賛嘆の思いを拍手に込めよう。
いずれにせよ、「観客全員のパーティー*14」でドラクエの雰囲気を気持ちよく楽しむ。そんな意識さえ持っていれば大失敗しないはずだ。
まとめ
音楽は心の貯金(ごちそう)です
はすぎやま氏の名言だ。
これまでのドラクエの思い出と人生が連結し、「序曲で泣いた」聴衆も数知れない。生の音楽を心に刻んで、ドラクエの旅をさらに謳歌(おうか)したいものだ。
幾つかの選択肢があるならば、演奏に定評のある「日本センチュリー交響楽団」のコンサートをお勧めしたい。去る2月11日に堀井雄二氏の古里で開催されたドラクエのコンサートも同交響楽団が担当していた。ただし、音の好悪は人それぞれ異なるので、聞き比べるのが最良だ。例えば「4~導かれ者たち」の通常戦闘曲である「栄光への戦い」はNHK交響楽団、東京都交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団などが演奏しているが、全く違う仕上がりになっている。
大魔王と対峙(たいじ)していた過去の冒険を鮮明によみがえらせてくれるのが、すぎやまこういち氏の「音楽」である。それと同時に若かりし自分に出会い、何かをつかんだ人も多いはず。これまで離れ離れだった音楽とゲームを点から線にした功績は計り知れないのだ。
すぎやま氏にはいつまでも健康で幸せであり続けてもらいたい。それこそがドラクエファンのわれわれにとっての「宝物」であるからだ。
勇者すぎやんが「LV100」を超えますように。心を込めて「スクルト」と「バイキルト」を捧げたい。
(出典:株式会社スクウェア・エニックス/すぎやまこういちの世界)
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*1:【hall】会館。会堂。講堂。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*2:(和製語Thema song)主題歌。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*3:【phrase】楽句。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*4:【damage】痛手。打撃。損害。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*5:【live】生放送。劇場・コンサートなどでの生演奏。また、音楽をその場で録音したもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*6:【dress code】特定の場所や場面にふさわしい服装についてのきまり。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*7:【concert】演奏会。音楽会。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*8:【砂被り】相撲で、土俵際(ぎわ)の見物席。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*9:【jersey】(イギリスのジャージー島で作られたことから)軽くて伸縮性のある厚地のメリヤス生地。また、その製品。プルオーバー・運動着などに用いる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*10:【T shirt】(袖を広げた形がTの字に似るのでいう)襟のない半袖または長袖のニット製のシャツ。元来、男性用下着で、1960年代後半より男女の普段着として普及。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*11:(コスチューム‐プレーの略)漫画・アニメ・ゲームなどの登場人物の扮装をして楽しむこと。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*12:【Takt(ドイツ)】(Taktstock(ドイツ))日本で、指揮棒。また、指揮。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*13:【manner(s)】行儀。作法。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*14:【party】組。一行。特に、登山隊。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)