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タイ旅行者は要注意!知られざる禁煙促進国家タイランド?

たばこからもくもく上がる煙

日本では喫煙所の縮小などが加速しており、愛煙家は肩身が狭いはずだ。規制の厳しい日本から脱出し、自由を謳歌(おうか)したい喫煙家がいてもおかしくない。ところが、タイの方がはるかに規制が厳しく、泣きべそをかかないように基礎知識を知っておきたい。

タイの喫煙ルール

整理して積み重ねられたたばこ

「自由の国タイ*1」の先入観からかタイのたばこ産業も自由な印象を持ちがちだ。しかし、実際は厳格な規則が存在している。まずタイは健康被害を助長しているとし、たばこの販売自体に規制を設けた。2017年9月16日から施行された「たばこに関する新税制」によって販売価格が上昇している。

例えばタイ国産たばこであるクロン ティップ(KRONG THIP)は1箱86バーツ(約287円/2018年8月18日現在)~95バーツ(約317円/2018年8月18日現在)となっている。平均世帯月収が約2万6000バーツ*2(約8万7000円/2018年8月18日現在)のタイ人にとっては大きな負担になるだろう。たばこの包装にも健康被害に警鐘を鳴らす病巣の掲載が義務化された。また、喫煙場所に関してもレストランをはじめ店舗内での喫煙禁止などが法令化されている。

法律の適用範囲

タイ国内の大使館や領事館にいない限り、喫煙に関するタイの法律は日本人を含む外国人観光客にも当然適用される。すなわち、不正価格でたばこを購入したり、指定場所を無視して喫煙したりするとお縄になる。違反した場合にはタイ人と同様に最大で禁固1年、10万バーツ(約33万3000円/2018年8月18日現在)以下の罰金、あるいは両方が科されてしまう。

外国製たばこは値下げ?

新たに施行された新税制によって、外国製のたばこへの課税は約20%低減された。しかし、タイではマールボロやエルアンドエムなどは主に外国人のための上等商品とされ、タイ国産たばこよりも1箱当たり50バーツ(約167円/2018年8月18日現在)ほども高くなっている。

観光立国のタイにおいて外国製たばこの販売は外貨獲得のための一つの手段となっており、背に腹はかえられぬタイ政府の決定が「たばこ税の減税」だと読み取れる。しかし、喫煙可能区域などは地元のタイ人と同一なので注意してもらいたい。

2018年2月よりビーチの禁煙が厳格化

空港の荷物引取りターンテーブル

タイといえば南国ビーチの印象が強いかもしれない。2018年2月よりタイの24カ所のビーチで指定場所以外の禁煙が法律化された。喫煙家にとっては開放的な空間で一服するのは至福の一時かもしれないが、タイの南国ビーチでも「禁煙の波」は避けられなかったようだ。

禁煙が指定されたビーチはタイ中央部チョンブリー県のパタヤビーチ、タイ南部プーケット県のパトンビーチなどタイ全土に広がり、タイ政府の本気度がうかがえる。もし違反した場合には最大で禁固1年、10万バーツ(約33万3000円/2018年8月18日現在)以下の罰金、あるいは両方が科せられる。

町中でのぽい捨ては厳禁

首都バンコク*3では警察によるたばこのぽい捨て取り締まりが頻繁に行われている。特にバンコク中心地であるスクンビット通りの路上では毎日のように警察が目を光らせている。たばこのぽい捨て禁止の看板によると罰金は2000バーツ(約6700円/2018年8月18日現在)となっているが、路上での喫煙自体は禁止されていない。しかし、時には人山ができるバンコクの路上で喫煙するのは法律うんぬんでなく、他者への迷惑を考えて自重するのが賢明である。

タイへのたばこの持ち込み

各国は関税法によって海外から持ち込めるたばこの量が制限されており、タイの場合はタバコ1カートン*4200本、あるいは葉巻、刻みたばこ、嗅ぎたばこなどが250グラムまでとなっている。

特に電子たばこ*5の持ち込みが禁止されているのが注意すべき点である。もし規定量を超えるたばこが空港や国境の関税で発見された場合は1カートン当たり4785バーツ(約1万6000円/2018年8月18日現在)の罰金が課せられる。

特に電子たばこには注意!

電子たばこ裏面の差し込み端子

タイ商務省では2014年12月には電子たばこの輸入・販売・所持・使用を禁止する「電子たばこ禁止条例」が制定されている。違反した場合は最高10年の懲役、あるいは50万バーツ(約166万5000円)の罰金のいずれかが科せられる。

電子たばこが普及していないタイでは外国人の使用者が目立ち、次々と摘発されて「不良外国人」の烙印(らくいん)を押されている。あしき前例とならぬよう、タイ旅行に出掛ける喫煙者はたばこに関する規制内容を把握しておきたい。

批判的な意見

たばこに関する各国の規制は健康被害に関する認識だけでなく、たばこ会社の影響力や政治家の意識次第ともいわれる。だから、国によって基準もばらばらである。

タイでは啓発活動を得意の動画によるCM*6も駆使し、積極的に行われている。子どもを登場させ、一風変わった方法で喫煙者がたばこの害悪を断然と考えることを促す内容になっている。

まとめ

空中を舞うたばこの煙

たばこのような嗜好品には賛否両論あり、価値観の相反する者同士間で擦ったもんだの議論が延々となされている。日本でも受動喫煙*7防止法が成立し、悪質な喫煙者には最大30万円、施設管理者には最大50万円の罰金を科せられるようになった。

しかし、近年では電子たばこの登場によって線引きが複雑化しており、悩ましいところだ。タイのたばこ規制は加熱式たばこを含む電子たばこに関するものにさえ及んでおり、世界水準で見ても相当手厳しい条件となっている。

日本の受動喫煙防止法や条例では取り締まり機関がはっきりしておらず、実際に適応できるのか疑問の声も上がるほどだ。一方、タイでは警察が役割を担っており、監督が確実に行われている。禁煙の規則に関してはタイ政府が絶大な決定力を示した。批判を恐れて裁断が苦手な日本人もどこか見習えるような気がしてならない。

いずれにせよ、タイで電子たばこを所持しているだけで最高約170万円の罰金は一大痛恨事だ。タイだけに「手痛い出費はいらんど」ということである。

*1:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【baht】タイの通貨単位。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【Bangkok】タイ王国の首都。メナム(チャオプラヤ)河口近くにある。米・チーク材などの貿易港として発展、同国の商工業の中心。クルンテープ(「天使の都」の意)で始まる長い正式名称を持つ。人口830万5千(2010)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【carton】個々に包装された一定数の品物を大箱に詰めたもの。タバコの箱を10個詰めた大箱の類。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【電子煙草】紙巻タバコに似た形の筒中の液体を、電池の熱で蒸気化して吸引するための装置。煙やタールが発生せず、ニコチンの量が調節できる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【commercial】コマーシャル‐メッセージの略。民間放送で番組の合間に行う広告。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:他人の吸うタバコから出る煙を吸うこと。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)