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ペナントレースの意義!勝率5割以下ならCS出場権を剥奪?

外角球を投げ込むピッチャー

2007年から始まり、紆余(うよ)曲折を経ながらもファンの間で定着しつつあるCS。しかし、依然ペナントレースの勝率が5割を切るチームでも、日本一となる毒を残す現行のルール。年間で最強のチームを決する意味合いからも矛盾が生じてしまっている。

日本一も有り得た昨季の横浜DeNAベイスターズ

これまでも公式戦の戦績が5割を切りながらも3位に滑り込み、CS*1に進出したチーム*2があった。勝率が5割を欠くチームであっても、公式戦終盤におけるCSを巡る熱戦は盛況であり、消化試合が激減したことで収益に直結する観客動員数も上昇してきた。

下克上を狙うチームを迎え撃つ上位チームには精神的な重圧がかかり、普段の試合と異なった戦いを強いられる。昨季のDeNAの快進撃がそうだった。勝率5割を切ってCSに進出し、ルール*3上は有利であった上位の阪神タイガースと広島東洋カープを次々と破り、日本シリーズ*4に駒を進めた。破竹の勢いで挑んだDeNAだったが、福岡ソフトバンクホークスの前に2勝4敗で惜敗した。しかし、実力を遺憾無く発揮する健闘を見せた。

しかし、それと同時に問題視されたのが、勝率5割にも満たないチームが「日本一」になれる点だ。勝率は低けれども上位3チームに肩を並べる力があるならば、チームの好不調によって勝ち上がっても不思議ではない。そもそも同じプロ野球チームなのだから、実力に歴然たる格差が生じるわけではない。勝ち上がって威勢のいいチームが上位チームの足をすくうことは往々に考えられる。

やはり「てっ辺」に立つのは長丁場であるペナントレース*5で、勝ち星を一番重ねた優勝チームであってほしい。公式戦の大詰めに調子を最高潮に持ってきたチームが簡単に王座に就けるのは考え物だ。過酷な143試合を一位で勝ち抜いたとしても、日本シリーズ進出が確約されないのが現状のルールの盲点といえる。高まりを見せるCSの陰で、どこかいびつな印象を拭い切れないのだ。

各球団には欠かせないCS

野球ファン*6が複雑な気持ちを抱えているが、各球団の運営としてはCSの存在は観客動員数の側面からも大きな効果をもたらしている。CS進出を懸けた終局の盛り上がりは1位のみが日本シリーズへ出場していた「旧方式」では見られなかったからだ。

優勝の可能性がついえたチームは以降の試合が「消化試合」となり、観客動員は望むべくもなかった。しかし、現在ではCSによって最後の最後まで目が離せない状況になっている。たとえ最下位に沈むチームであっても、対戦チームがCS争いに参戦していれば、一定の観客動員数が見込まれる。さらに、CS出場となればホームチーム1試合の興行収入は「3億円」に上るとも算出されている。各球団の興行面の功績は決して小さくないのである。

元来観客動員数低迷に危機感を覚え、導入が決断されたCS。収益的な成果を上げている以上、進出チームの勝率が5割を切ったとしても、出場権を奪うのは各球団からの反発必至である。

望まれるCSの進化

毎年熱狂に包まれている大リーグ*7のプレーオフ*8は一体どのような仕組みで行われているのだろうか。大リーグはナショナルリーグ*9とアメリカンリーグ*10の二つのリーグに分かれている。そして、それぞれの東地区、中地区、西地区の優勝チームに「ワイルドカード*11」と呼ばれる「地区無関係の勝率上位2チーム」を加え、各リーグ計5チームでリーグ優勝を争うのだ。

日本プロ野球とはチーム数が懸け離れているため、単純比較はできないが、大リーグでもリーグ優勝チーム同士がワールドシリーズで雌雄を決する方式を取っている。

仮に大リーグのやり方を一部模倣するならば、まず日本プロ野球12球団を3リーグに分解する。そして、各リーグの優勝チームとワイルドカードを加えた5チームで、7戦4勝制のトーナメント*12戦により日本一を決するといったところだろうか。

これならば勝率が5割を切るチームがCSに勝ち上がる可能性は低くなる。ただし、大リーグに右へ倣えでは面白みに欠けるので、CSには両リーグ2位までのチームが出場でき、各リーグの1位がたすき掛けにより他のリーグの2位とCSで決着を付けるのも一案として挙げておきたい。

いずれにせよ、現行のCS制度を維持していくのなら、思い切ってメスを入れなければ、野球ファンと球団の双方が納得する仕組みには帰結しない。

ファンが首肯するCSとは?

結局野球ファンの全員が首を縦に振る仕組みなど存在しない。しかし、日本野球機構*13は現状にあぐらをかいてもいけない。常に危機感を持って変革に挑戦し続けることが肝要だ。なぜなら、CSの改善の向こう側にあるのが野球ファンの白熱する姿であるべきだからだ。

日本野球機構はCSにまつわる問題も決して放置せず、野球ファンの喜怒哀楽に耳を傾けてもらいたい。これまでもセパ交流戦*14やCSの導入などもファンの一声から議論が進み、プロ野球の発展に一石を投じてきた。野球ファンが球場に足を運ぶから選手も野球ができる。そして、子どもたちが野球に興味を持ち、野球全体の隆盛に向かっていけるのだ。

勝率5割を切るチームのCS出場が問われている。日本野球機構は野球ファンの声を見逃すことなく議論を重ねていき、変化を恐れない姿勢を持ち続けてもらいたい。

まとめ

プロ野球の観客動員数は両リーグ全体で見れば、近年は上昇を続けている。これはプロ野球ファンが現状に一定の満足感を示していることの裏付けであろう。しかし、これはプロ野球が絶えず試行錯誤し、各球団が営業に力を注いできたからこそ達成できた「努力の結晶」でもある。

人気は時流や景気だけでなく、嗜好(しこう)などの変化にも色濃く影響を受けるはずだ。だから、常に多方面にアンテナを張り、守るべきと壊すべきをしっかり見極め、野球ファンの目線を意識しながら進んでいかなければならない。

今回のCSに関しても一定の成果を挙げてきた。しかし、そこで立ち止まることなく、われわれの大好きな「野球」に磨きをかけてもらいたい。

ここでいう「変化」とは野球の進化にとって「ど真ん中の直球」であることを最後に付け加えておきたい。

*1:〔和製語 climax+series〕プロ野球セパ両リーグで行う,日本シリーズ出場権を争う試合。ペナント戦の上位 3 球団が出場して,2 位・3 位球団が 3 回戦制で対戦,その勝者と 1 位球団(アドバンテージ 1 勝)が 6 回戦制で対戦する。ただし両リーグの優勝球団はペナント戦の勝率 1 位の球団とする。2007 年(平成 19)より実施。クライマックスシリーズ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【team】二組以上に分かれて行う競技のそれぞれの組。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【rule】規則。通則。準則。例規。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:日本のプロ野球で、セントラル‐リーグとパシフィック‐リーグの優勝チームにより、年間の優勝を決めるために争われる選手権戦。先に4勝した方が勝利する7試合制。1950年から始まる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【pennant race】優勝旗争奪戦。特にプロ野球で、リーグ優勝を争う公式戦。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【fan(アメリカ)】スポーツ・演劇・映画・音楽などで、ある分野・団体・個人をひいきにする人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:(major league)アメリカ二大プロ野球リーグのこと。アメリカン‐リーグとナショナル‐リーグで構成。メジャー‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【play-off】引分け・同点のときの決勝戦。リーグ戦の終了後に行う優勝決定戦。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【National League】アメリカのプロ野球二大リーグの一つ。1876年に結成。略称ナ‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【American League】アメリカのプロ野球二大リーグの一つ。1900年に結成。略称ア‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【wild card】スポーツ競技などで、本来は出場資格のないチーム・選手に与えられる、次回戦の出場枠。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【tournament】競技で、回を重ねるごとに敗者を除外し、最後に残った二者で優勝を決する方式。勝抜き式。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:日本プロ野球組織を運営する社団法人。セントラル-リーグ,パシフィック-リーグおよびコミッショナー事務局から構成され,日本シリーズ・オールスター-ゲームを主催する。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:日本のプロ野球で,セントラル-リーグとパシフィック-リーグの球団が対戦する試合のこと。プロ野球改革の一環として,2005 年(平成 17)から公式試合に取り入れられた。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)