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イチロー選手が引退?奇跡を再び起こす夢を与える神!

日の出間近の富士山

5月4日に激震が走った。イチロー選手が残り試合に出場しないとシアトル・マリナーズから発表されたのだ。選手登録を抹消され、今後は会長付き特別補佐としてチームに帯同する。しかし、来季は選手としての出場があり得るとするが、事実上の引退なのだろうか。

衰えを隠せなかった今季のイチロー選手

昨季所属していたフロリダ・マーリンズはイチロー選手と2018年の契約延長のオプション*1を保持し、当時のオーナー*2も契約延長の意思を示していた。ところが、元ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーター氏がオーナーに就任してからは方針が一変した。イチロー選手はおろか外野手のレギュラー*3を全てをトレード*4に出すおおなたを振るったのだ。

トレードが活発に行われている大リーグ*5においても、マーリンズファンの戸惑いはあらわとなった。かくして、イチロー選手に移籍先探しが始まったのだ。

2017年のイチロー選手は4番手の外野手として試合出場の機会が限定的であった。しかし、代打として大リーグ記録にあと一本と迫る27安打を記録し、打率2割5分5厘、本塁打3本と実力を遺憾なく発揮した。だから、少なくとも外野手の手薄なチームからの誘いがあると予想されのだが、そこに大きな誤算があった。なぜなら、近年まれに見る移籍市場の飽和*6状態だったからだ。

引く手あまたと呼び声が高かったダルビッシュ有投手さえも、キャンプ直前に移籍先が決まる有り様だった。来季大物選手がフリーエージェント*7になるため、選手の買い控えが背景にあったとするのが大方の見方である。イチロー選手も逆風をまともに受けながらも、ようやくマリナーズとの契約にこぎ着けたのが開幕直前の3月半ばであった。

マリナーズの主力外野手であるベン・ギャメル選手がけがで離脱したため、急きょ白羽の矢が立ったイチロー選手だったが、申し入れがなければ引退の可能性すらあった。そのため、イチロー選手にとってみれば、ありがたい契約であったのは間違いない。しかし、開幕直前での契約は裏を返すとイチロー選手の調整不足に直結していた。

それをつぶさに感じていたのはイチロー選手自身であったはずで、開幕に向けて急ピッチで体の状態を仕上げていたように映った。故障に強いイチロー選手が例年にはないふくらはぎの違和感を訴え、オープン戦を欠場したことにも現れていた。加えて、頭部への死球から数試合の欠場を余儀なくされてしまった。

元々本調子になるまで時間のかかるイチロー選手ではあるが、重なる不運によって調整遅れが明白な状態であった。しかし、マリナーズのスコット・サーバイス監督の信頼は揺るがず、開幕スタメン*8を果たすことになる。ただし、レギュラーであるギャメル選手が復帰するまで、非の打ちどころがない成績を残すことが求められた。

レギュラーあるいは4番手の外野手として一軍に残るには相応の数字が必須となってくる。ドングリの背比べの成績ならば、たとえ輝かしい実績を残してきた44歳のベテラン*9であっても、役立たずの烙印(らくいん)を押されてしまいかねない。未来を見据えての若手選手への切り替えは「野球の正道」ともいえるからだ。

衰えの見え始めた打撃に輪をかけ、調整不足と本調子でないことが痛手となってしまった。開幕後も周囲が納得する結果を残せなかったイチロー選手は、球団からの提案である「選手から経営首脳陣への配置転換」を甘受せざるを得なかったのではないだろうか。

野球選手イチローの復活

「会長付き特別補佐」にぴんと来ないが、イチロー選手はこのままチームに帯同する。他選手とともに練習もこなしながら、コーチ*10のような立ち位置で助言・忠告を送り、チームを支えていく。つまり、野球選手を引退するのではなく、来季からの復帰もあると球団は説明している。

前述したように付きにも見放され、今季のイチロー選手は例年通りの十分な調整ができたとは言い難い。ここで小休止を挟み、しっかりと体をいじめ抜いておけば、最良の状態で来季を待ち構える可能性はゼロではない。そのような観点からだと「50歳現役」を掲げるイチロー選手にとって、決して悪い話ではなかったはずだ。

しかし、本当に選手復帰はあり得るのだろうか。私は極めて困難な状況だと考える。なぜなら、時間を代償にして再調整を促すのであれば、シーズン中にもできるからだ。また、仮に外野手のレギュラーが戦列を離れれば、穴埋めを余儀なくされてイチロー選手を必要としたはずだ。ところが、球団はその選択肢を捨てたのだ。今季の残り全試合を欠場するという判断には限りなく「戦力外」の意味合いが強いと言わざるを得ない。

マリナーズは来季の開幕戦を日本で開催することが既に決まっている。そこには日本球界屈指の伝説的な人物であるイチロー選手が必ずいてほしい。しかし、開幕戦を引退試合にするのではないかと勘繰ってしまう。選手復帰に含みを持たせているのとも妙に合点がいくのである。

それでも信じたい物語の続き

現実的には前途多難なイチロー選手の復帰だが、いちるの望みまでも消えうせたわけではない。マリナーズはイチロー選手をできる限り来季の日本での開幕戦に起用したいのは間違いない。日本で絶対的な人気を誇るイチロー選手の復帰となれば、この上ない営業効果を生み出すからだ。

恐らくマリナーズは来季イチロー選手とマイナー契約を結び、キャンプ招待選手として競争に参加させる。それなりの成績を残せばメジャー契約をし、結果を残せなければ開幕戦だけの契約を交わす。そして、引退試合の花道を用意するのが想定される「球団の台本」だ。

確率として低いのは否めないが、来季を通じて選手で活躍するには開幕戦に起用したい球団の思惑を逆手に取ればいいのではないだろうか。すなわち、オープン戦から他選手と懸け離れた優れた成績を残し、メジャー登録枠に食い込むしかない。今季を事実上の戦力外で退いたわけだから、周囲の評価を覆すのは容易ではない。

しかし、イチロー選手ならたとえ窮地に立たされたとしても、やり遂げてしまう気がしてならない。前述したように今季は実力を存分に発揮できる環境に程遠かった。それが来季は形式だけだとしても契約を約束されたのだ。満身創痍(そうい)であろう体の節々を回復に充てる時間も得たわけだ。そして、文句なしの状態で来春を迎えられれば、われわれは奇跡を目の当たりにするに違いない。

まとめ

日本での7年連続首位打者をはじめ7度のゴールデングラブ賞*11、史上初の3度のMVP*12など数々の実績を引っ提げて海を渡ったイチロー選手。大リーグでも10年連続の200安打、2度の首位打者にシーズン262安打の不滅の大記録を打ち立てた。 記録が塗り替えられるその度に、過去の伝説の英雄たちをわれわれの前によみがえらせてきた。

その彼が一つの区切りを迎えた。過去のどんな選手にも必ず訪れる瞬間だ。イチロー選手には永遠に訪れないようにも感じられたが、「その時」がついにやって来たのだろうか。

会長付き特別補佐の立場から主に画面を通して試合の行方を見詰める。選手としてグラウンド*13に立つことがなくなり、われわれは少しずつ現実を受け入れなくてはならい。しかし、いばらの道と知りながらも、夢を与えられる選手の復帰を願わずにはいられない。

ワールドベースボールクラシック*14決勝の延長10回、2点タイムリーを鮮やかにセンター*15前に放ったとき、誰もがそこに神を見た。その野球の神がグラウンドにいないことほど不自然なことはない。

その「振り子時計」は2019年の奇跡に向けて動き出している。

*1:【option】いくつかのものの中から自由に選びとること。選択。選択権。また、選びとる物。選択肢。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【owner】(持主の意)会社・店舗などの所有者。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【regular member】正式の成員(会員など)。正選手。常連。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【trade】プロ野球などで、チームが選手を移籍・交換すること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:(major league)アメリカ二大プロ野球リーグのこと。アメリカン‐リーグとナショナル‐リーグで構成。メジャー‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:最大限度まで満たされている状態。ある状態量を増加させる要因を増してもその状態量が一定限度に止まり、それ以上ふえない状態。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【free agent】プロ野球などで、出場選手登録日数などの規定を満たしたことにより、他球団と自由に契約交渉ができる権利を有する選手。FA/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【starting member】試合開始時の出場選手。先発メンバー。スタ‐メン。スターティング‐ライン‐アップ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【veteran(イギリス)・vétéran(フランス)】その方面について経験豊富な人。老練な人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【coach】競技の技術や戦術などを指導すること。また、それをする人。コーチャー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:(和製語 Golden Glove Award)日本のプロ野球で、守備に優れた選手に贈られる賞。5年以上の経験を持つ記者の投票により、各守備位置1人ずつでセ・パ両リーグからそれぞれ9人選出される。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:(most valuable player)最優秀選手。特に、プロ野球公式戦のシーズン、または日本シリーズなどのある期間に最も優れた活躍をした選手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【ground】運動場。野球などの競技場。グランド。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【World Baseball Classic】野球で、国または地域の代表チームが世界一を争う国際大会。主催はアメリカのメジャー‐リーグ機構と選手会。2006年に始まる。WBC/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【centre; center】球技などで、中央の位置。また、その位置を占める人。特に野球で、中堅、また中堅手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)