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ごろごろ転がり傷だらけ!英国のチーズ転がし祭りとは?

必死で追い掛けるチーズ転がし祭りの参加者たち

普段は見向きもしない競走でも、懸賞がかかると途端に熱気を帯びてくるもの。賞品や賞金のため、なりふりなんて構っていられない。どんな障害が行く手を阻もうとも猪突猛進あるのみだが、くれぐれも安全第一だ。チーズが伸びるのはいいが、人間だと一大事。

骨折に流血!チーズを巡る死闘の数々

でこぼこな坂道を駆け降りる祭りの参加者たち。中にはチーズ*1よりも速く転がり落ちたり、転倒して失神したりと茶々むちゃだ。決して何かに追い掛けられて逃走しているわけではない。画面だと分かりづらいが、小高い丘の上から落とされたチーズを手にするために我先にと坂下に急行しているのだ。

この動画は英国*2・コッツウォルズ*3地方の年中行事である「チーズ転がし祭り」の一幕。競争ごとに選ばれた20名が、一つのチーズを求めて勇戦奮闘を繰り広げる。高所から落とされたチーズが加速し、時速100キロ以上に達することもあるそうだ。そんな疾風のごとく転がり落ちるチーズをつかみ取ろうと、けがも辞さないで半ば急坂に身を任せる精鋭たち。

ただし、チーズを追い掛ける過程で負傷し、流血や骨折などの痛々しい姿も見られた。万事において無用の危険を負わないことが重視され、スポーツ科学*4やスポーツ医学*5の隆盛が著しい昨今である。しかし、あえて危険をも受容し、伝統文化を守り続ける姿勢に共鳴せずにいられない。

チーズ転がし祭りの起源

グロスターチーズとクラッカー

このきてれつなチーズ転がし祭りは正確な年代は不明ではあるが、200年ほど前からコッツウォルズ地方で行われている伝統行事である。毎年5月最後の月曜日に、同地方にあるグロスターという町にある丘陵地帯で開催される。

元々は地方で行われる小さな行事だったが、21世紀に入ってからインターネット*6の影響で広く知れわたり、参加希望者が急増したそうだ。その参加希望者たちを円滑に管理するため、地元の有志たちが運営に携わるようになった。そして、子ども向け、女性向け、大人向けの3種類に分類されて計5~8レース*7行われるようになった。

使用されるチーズは円筒形のグロスターチーズと呼ばれる比較的硬いセミ*8ハード*9タイプ*10のもので、酷があるのに余計な癖や臭いもなく、幅広い料理に活用できる。スーパー*11でこのチーズを見掛けたら、一度買って食してみたいものだ。そう考えるとチーズ転がし祭りの経済効果も少なくないはずだ。日本の地方も伝統的な祭りを維持するため、チーズ転がし祭りを模範例とできるのではないだろうか。

ちなみに、大会会場の最寄りにはパブ*12「ザ・クロス・ハンズ(The Cross Hands)」があり、参加者など関係者でにぎわうそうだ。

仲間同士でわいわい騒ぎながら一献傾け、「はい、チーズ」とにっこり笑って写真撮影をしているに違いない。

(出典:YouTube

*1:【cheese】乳製品の一つ。牛などの乳汁を乳酸菌・酵素で凝固させ、脱水・成形したものをそのまま、または微生物の作用で熟成させた食品。蛋白質・脂肪などが濃縮されて含まれ、栄養価が高い。製法によりナチュラル‐チーズ・プロセス‐チーズに2大別。乾酪(かんらく)。カーズ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【Inglez(ポルトガル)・英吉利】(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)ヨーロッパ大陸の西方、大西洋上にある立憲連合王国。グレート‐ブリテン島(イングランド・スコットランド・ウェールズを含む)と北アイルランドおよび付近の900以上の島々からなる。面積24万2500平方キロメートル。人口6338万(2011)。民族は主にアングロ‐サクソン人とケルト人。宗教は、ヘンリー8世時代以後、国教会を主とし、プロテスタント各派とカトリックがある。産業革命の発祥国で、政党政治・責任内閣制がよく発達。首都ロンドン。江戸時代、日本ではエゲレス・アンゲリアなどと称した。イギリス。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【Cotswolds】イギリス、イングランド中西部にある丘陵地帯。かつて羊毛業が栄え、石積みの建築物などの田園風景美で有名。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:スポーツを研究対象とする諸科学の総称。スポーツ医学・スポーツ生理学・スポーツ心理学・バイオメカニクス・スポーツ哲学・スポーツ史・スポーツ人類学・スポーツ運動学・スポーツ社会学など。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:スポーツの人体に及ぼす影響、競技者の健康管理などを研究・実践する医学。運動生理学・スポーツ臨床医学などを含む。体育運動医学。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【internet】世界規模のコンピューター‐ネットワーク。複数のネットワークを相互接続するもので、これに繫がるすべてのホスト‐コンピューターは固有のIPアドレスで識別され、ネットワーク間を中継する仕組みによって全世界での通信が可能。アメリカ国防総省が構築した実験的な軍事用ネットワークから発展した。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【race】競走。また特に競技においてゴールを目指してタイムを競い合うこと。競走・競泳・競漕(きょうそう)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【semi】「幾分」「半」「準」の意。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【hard】かたいさま。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【type】型。類型。典型。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【supermarket】主に食料品・日用品を扱い、買手が売場から直接商品を籠に入れ、レジで代金を支払うセルフ‐サービス方式の大規模店。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【pub】(public house の略)大衆的なバー。洋風の居酒屋。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)