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リクエスト制度の盲点を突く!浮き彫りになる課題とは?

設置式のビデオカメラ

今季から新しく導入されたリクエスト制度。際どい判定に対して監督がビデオ映像での検証を依頼できるものだ。明白な誤審が減るものの、その都度試合が中断してしまい、選手や観客の一体感に水を差してしまいがちだ。現状のリクエスト制度の課題を考察したい。

観客は本当に必要としている?

公式戦の開幕当初は不慣れからか、どこか違和感を覚えたリクエスト*1制度であった。しかし、見慣れるに従い、徐々に受け入れられてきた感がある。監督が両手でディスプレー*2の四角を描き、ビデオ判定*3を要求する動きも定着しつつある。

これまでは明々白々な誤審には十中八九リクエストがなされ、不可解な判定によって勝敗が決するような試合は激減した。ファンの中でも一定の評価は得ているといえるだろう。しかし、リクエストがされるたびに試合は中断し、勝敗を分ける重要な要素である「流れ」を止めてしまう。また、せっかく盛り上がった観客を白けさせてしまいがちだ。

中には駄目元*4でリクエストを積極的に行使すべきと考える監督もおり、観客はいや応なく観戦を中断され、お預けを食らうような状況に立たされる。

一方、審判も自信を持って下した判定に、手軽にビデオ判定を要求されれば威厳も地に落ちてしまうというものだ。加えて、審判の存在意義に疑問符を付けられても仕方がない。リクエスト制度は審判の技術向上の意味合いもあるはずだが、現在のリクエスト乱発の状況は方向性が正しいとは言い難い。

無論ビデオ判定を経ることで、誤審は段違いに減った。しかし、それがそのままプロ野球ファン*5の満足感につながっていると判断するのは早のみ込みである。ビデオ判定の必要性は認識しているが、現行の制度に満足しているわけではない。これが現状のファンの本音ではないだろうか。

望まれる時間短縮と技術向上

一度リクエストをすると、意外にも事実確認に時間がかかる。リプレー*6検証にかける時間を最大5分と決めているが、待たされているファンにとっては長く退屈な時間のはずだ。四方八方からの映像を何度も見返し、正確な判定を出すとしても長過ぎるのは否めない。

ちなみに、チャレンジ*7の名称で運用されている大リーグ*8では検証に使う時間を最大2分に限定している。リプレー検証のための専門職が準備しており、審判は照会するだけの仕組みで、2分を超過するようなら検証前の判定通りとする特徴がある。

つまり、余分に時間がかかってしまうなら、審判の判定がビデオ判定に優越する考え方だ。従来通りの審判の判定を尊重しつつ、絶対的な立場もしっかりと確保されているのだ。

敏速に試合が進行するのは試合観戦における大前提だ。さらに、最優先にされるべきプロ野球ファンとする視点を忘れていないのだ。もちろん審判の技術向上は担保されるべきであり、あくまでもビデオ判定が行われない試合こそ理想的である。審判の存在意義を疑問視されることなく、一定の技術水準を維持するのが絶対条件であるのは言うまでもない。

プロ野球ファンや審判の立場に立った制度であるべきだ

現在日本プロ野球で認められているリクエストの回数は2回である。しかし、リクエストをして判定が覆れば回数は減らず、何度でも行使することができるルール*9である。だから、試合終盤を迎えてリクエストが余っていると、やたらめったらビデオ判定を要求する場面がちらほら見られる。

戦略的な側面もあり得るリクエスト制度だが、一丁目一番地は「プロ野球ファンの満足」である。プロ野球ファンが不可解な判定にストレス*10を感じることなく、楽しむのが何より大切なはずである。だから、いたずらに試合を中断させる行為は無意義ではないだろうか。

その観点からリクエスト回数を「1回だけ」とし、ストライク・ボールにも適用できるルールを提案したい。要求の成功・失敗を問わず、1回に制限するのである。その試合の天王山となるような重大局面にのみ行使すべきなのだ。1回では少ないと見る向きもあるだろう。しかし、伝家の宝刀を抜くのは一度だからこそ緊張感もみなぎり、盛り上がりにつながるはずである。何度も何度も試合の中断が繰り返されては間延びしてしまい、面白さを半減させてしまいかねない。

その環境設定こそが審判の技術向上を後押しする土台であり、緊張感を持った試合が保たれる要素ではないだろうか。3回も4回も必要なのであれば、審判の存在価値はおのずと失墜してしまう。そもそもリクエストをされること自体が審判にとって不本意なのである。その回数が増えれば増えるほど審判の技術向上の障壁となってしまうはずだ。リクエストの回数を減らすことがプロ野球ファンにとっても審判にとっても好循環のきっかけとなるのを期待したい。

今こそプロ野球ファンの立場に立ったルールの確立と、審判が本来の意味で自己研鑽につながるような制度の再構築が望まれるところである。

まとめ

リクエスト制度は今季より導入されたものであり、未熟な制度である。6月22日のオリックス・バファローズ対ソフトバンク・ホークス戦では誤審に誤審を重ねる悪例となった。当初ホームラン性の打球をファウル*11と判定したが、ビデオ判定を経てホームランとした。しかし、試合後に実施した映像の再確認によりファウルと判明したのだ。

しかし、どのように改善をするとしても、プロ野球ファンの目線に基づいた進路でなければならない。そして、リクエスト制度や審判が決して試合の主役となってはいけない。なぜならば、あくまでも主役は選手であり、観客であるからだ。その出発地点を念頭に置いた制度でなければプロ野球ファンは離れ、本来の目的を失ってしまう。

日本プロ野球連盟の幹部にはリクエスト前後の観客の反応をぜひともリプレー検証してほしいものである。

*1:【request】要求。請求。注文。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【display】コンピューターから出力する文字・画像等を画面に表示する装置。モニター。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:スポーツ競技で審判による判定が難しい場合,録画した映像を利用して判定を行う方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:俗に,「駄目でもともと」を略していう語。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【fan(アメリカ)】スポーツ・演劇・映画・音楽などで、ある分野・団体・個人をひいきにする人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【replay】〔リプレイとも〕(録画・録音テープの)再生。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【challenge】審判にビデオによる確認を求めること。アメリカン-フットボールの NFL やテニスの世界大会などで採用されている。〔テニスの場合,複数台のカメラから得られた情報から作製した CG 映像により確認する〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:(major league)アメリカ二大プロ野球リーグのこと。アメリカン‐リーグとナショナル‐リーグで構成。メジャー‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【rule】規則。通則。準則。例規。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:種々の外部刺激が負担として働くとき、心身に生じる機能変化。ストレスの原因となる要素(ストレッサー)は寒暑・騒音・化学物質など物理化学的なもの、飢餓・感染・過労・睡眠不足など生物学的なもの、精神緊張・不安・恐怖・興奮など社会的なものなど多様である/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【foul】野球で、ファウル‐ラインの外方へ打球が出ること。また、その球。ファウル‐ボール。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)