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時は来た!今こそ松坂世代の再起で球界を盛り上げてほしい

野球場の照明

松坂大輔投手が福岡ソフトバンクホークスを退団した。育成契約の提示を蹴り、投げられるめどを示せないまま飛び出したのだ。同じくして38歳を迎える「松坂世代」の同学年の選手たちも、それぞれが苦境に立ちながら、復活を期して戦っている。

2018年2月16日:用字用語の整理。

戦力外通告からはい上がる村田修一選手

1998年の春の選抜高校野球。東福岡高校の村田選手は松坂投手擁する横浜高校と対戦する。エース*1としてマウンド*2に立った村田選手は6回まで投手戦を繰り広げるが、松坂投手にレフトフェンス直撃のタイムリー*3二塁打を浴び、均衡を破られる。

強打の横浜高校を相手に3失点と好投するも、東福岡高校は松坂投手に13三振を喫し、村田選手も4打数の無安打、2三振となすすべなく敗れてしまう。この試合で松坂投手との差を痛感した村田選手は投手の道を諦め、打者専念を決意。やがては日本を代表する4番打者に登り詰めることになる。

村田選手が読売ジャイアンツから戦力外通告を受けてから3カ月近くが経った。しかし、いまだに去就は決まっていない。前季は序盤戦こそ代打としてスターティングメンバー*4に名を連ねることは少なかったものの、後半戦には出場機会が増え、調子を上げていった。

終わってみれば、打率2割6分2厘、16本塁打とそれなりの結果を残した。打棒を奮うことはさることながらゴールデングラブ賞*53回の堅守は何度もチームの危機を救ってきた。

2000本安打まであと135本。松坂世代の選手たちの中で、名球会入りが最も近い選手である。「『俺は名球会に入ったよ』と言いたい」。2000本安打を達成し、「松坂世代」として球史に名を残したい。今の村田選手の大きな動機付けとなっているはずだ。

股関節手術からの復活を目指す杉内俊哉投手

1998年夏の甲子園。鹿児島実業高校の杉内俊哉投手は1回戦の八戸工大第一高校戦でノーヒットノーランを達成し、その勢いのまま2回戦で横浜高校に挑んだ。

この試合も中盤まで0対0の投手戦となる。しかし、均衡を破るのは横浜高校だった。現横浜DeNAベイスターズの後藤武敏選手の犠飛で先制され、8回には松坂投手に2ランホームランを浴び、計6失点を喫する。一方、松坂投手は9奪三振の完封勝利。またしても相手を圧倒してねじ伏せた。

杉内投手は高校卒業後、社会人野球に進む。松坂投手に格の違いを見せつけられた杉内投手は、高校で多投していた得意のカーブ*6だけでなく直球やスライダー*7に磨きをかけ、大きく成長を遂げる。2001年のドラフト3位でソフトバンクホークスに指名され、再び松坂投手の待つプロ野球の世界へ飛び込むこととなる。

プロ野球では142勝を挙げ、ソフトバンクでは名実共にエース。移籍した巨人でも3年連続二桁勝利と、松坂投手さえ成し遂げていないノーヒットノーランを達成する。ワールドベースボールクラシック*8では松坂投手と投手陣を支える主軸となり2連覇に大きく貢献し、日本を代表する投手となった。

その杉内投手を股関節*9痛が襲ったのは2015年。治療には手術が必要不可欠であるが、過去に前例のない手術のため、復帰の見当が立たない厳しい状況。それでも200勝を目標に現役復帰への道を望み、手術を敢行した。今も長いリハビリ*10生活に臨んでいる。

「40歳まではなんとか続けたい」。38歳を迎える今季は結果が求められる年となるだろう。迫られた厳しい状況は松坂投手と同じだ。復帰の足掛かりを得て、再びマウンドに立つことができるだろうか。

復活を諦めない松坂投手

甲子園で春夏連覇。プロ野球初登板で155キロ。イチロー選手との初対決で3奪三振。大リーグ*11に挑戦して1年目にしてワールド*12チャンピオン*13。ワールドベースボールクラシックで2大会連続のMVP*14など、「怪物」の栄光は枚挙にいとまがない。

彼は早熟のエースだ。日米通算164勝のうち、145勝が20代で挙げたものである。つまり、その数字は高校時代からの選手としての完成度の高さを示す一方で、38歳の年齢から再起することの難しさも同時に暗示している。

その松坂投手がソフトバンクを退団し、自由契約となった。球団からは育成選手としての契約を打診されたが、自ら断る形となった。投げられる状態になれば、即刻支配下選手登録する厚遇であったにもかかわらずだ。松坂投手はその胸中を次のように述べている。

「いくら言葉にしても足りないくらいの感謝の想いを伝えるのは一軍のマウンドだと思っています」

(出典:報知新聞

誰しもがソフトバンク残留が復帰への近道と考える中での退団。しかし、裏を返せば、彼が復活への手応えを持っているということではなかろうか。また、百戦錬磨の勇士は自らをぬるま湯ではなく、あえて逆風にさらすことで勇を鼓そうとしたのかもしれない。

そんな状況下で中日ドラゴンズが獲得へ向けて動き出した。1月下旬に入団テストを行うという。現在松坂投手は米国で調整を行なっている。

一部の野球ファンからは厳しい意見があるのも確かだ。ソフトバンクから3年総額12億もの年俸をもらっておきながら一軍登板は1回のみに終わったこと。また、温情ともいえる育成契約の申し出を受けなかったことに対してだ。

しかし、松坂投手が再び投げる姿をただただ見たいのだ。それだけ野球界を熱狂させた大投手だからだ。今やファンの望みは松坂投手の155キロの豪速球ではない。もがき苦しんだとしても「人間松坂」の復活劇を心待ちにしているのだ。

もしかすると力のある投球は影を潜めるかもしれない。しかし、ファンはもう一度あの雄姿を見たい。これまで幾多のチームを圧倒してきたように、入団テストで「怪物」の勝負強さを見せてもらいたいのだ。

まとめ

怪物松坂大輔はその卓越した実力で相手をなぎ倒し、力を見せつけてきた。それと同時に、敗れた相手を奮起させ、更なる成長を引き出す存在でもあったのだ。

「松坂世代」の選手たちがここまでプロ野球や大リーグで活躍してきたことと、松坂大輔という旗頭を決して無関係ではないはずだ。勝ち星や称号の多い少ないの問題ではない。彼は自らが意識していなくても、旗を振り続けているのだ。

高校時代から数々の死闘の中で、比類なき実力で完膚無きまでにやっつけられ記憶は、いつまでも「松坂世代」から消えることはないだろう。

だからこそ今、象徴である松坂投手の復活を熱望したい。彼が戻ってくることが、同じくして苦しむ英雄たちに「あの時の輝き」を取り戻させるからだ。

まだまだ老け込む年ではない。この1月に捲土(けんど)重来を期し、吉報が届くなら、それは「松坂世代」の逆襲ののろしとなるに違いない。

*1:【ace】野球で,主戦投手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【mound】野球で,投手が投球する盛り土をした場所。中央に投手板がある。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【timely】野球で,走者をホーム-インさせることのできたヒット。適時打。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:〔和製語 starting+member〕試合開始時の出場選手。先発メンバー。スタ-メン。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:プロ野球で,守備のベスト-ナインに選ばれた選手に与えられる賞。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6: 【curve】野球で,投げた球が曲がること。また,その球。高低差を伴う。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【slider】野球で,投手の投げた腕と逆の方へ滑るように水平に曲がる変化球。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【World Baseball Classic】アメリカの大リーグ機構と選手会が主催する,野球の国別対抗戦。第 1 回大会は,北米・南米・アジア・ヨーロッパなどから 16 の国・地域が参加し,2006 年 3 月に開催され,日本が優勝した。WBC。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:骨盤と大腿骨(だいたいこつ)とを接続する関節。髀臼(ひきゆう)関節。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:事故・疾病で後遺症が残った者などを対象に,その能力を回復させるために行う訓練や療法。広義には,社会生活関係で脱落・背離した者に対する回復のための支援サービス。教育・職業・心理等の分野がある。社会復帰。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【world】世界。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【champion】選手権保持者。優勝者。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【most valuable player】スポーツ競技で最も優れた活躍をした選手。最優秀選手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)