セイバーメトリクスで野球を面白く!米国の分析手法とは?
最近のテレビ中継でも、ちらほら目にする、OPSやWHIPなどの野球選手に対する客観的な評価基準をご存じだろうか。米国生まれのとっつきにくい横文字ではあるが、頭に入れておけば、選手の能力を多角的に分析することができ、さらに野球が楽しめそうである。
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2017年11月21日:用字用語の整理。
OPSから見える「打者の得点に対する貢献度」
点取り合戦の野球において、まず必要になるのは出塁である。出塁率に加えて、自ら長打も打てる打者なら、さらに得点率は上昇する。
ここに注目したのが「OPS」であり、単純に「出塁率」と「長打率」を足した数値となる。選手の得点への貢献度を測る指標ということができる。
OPSの計算方法
OPS = 出塁率 + 長打率
出塁率の計算方法
出塁率 =(安打 + 四球 + 死球)÷(打数 + 四球 + 死球 + 犠飛)
長打率の計算方法
長打率 = 塁打 ÷ 打数
それでは、「規定打席」以上の打者成績で比較してみよう。
規定打席の計算方法
規定打席 = チームの試合数 × 3.1
セ・リーグの打率とOPS(2017年8月2日現在)
打率 | OPS | |
---|---|---|
1 | 宮崎 敏郎(DeNA).337 | エルドレッド(広島).959 |
2 | 坂本 勇人(巨人).335 | ゲレーロ(中日).938 |
3 | 大島 洋平(中日).315 | 丸佳浩(広島).928 |
4 | 丸 佳浩(広島).311 | 鈴木誠也(広島).924 |
5 | ロペス(DeNA).308 | バレンティン(ヤクルト).917 |
6 | マギー(巨人).307 | 坂本 勇人(巨人).899 |
7 | 安部 友裕(広島).306 | 筒香 嘉智(DeNA).885 |
8 | 鈴木 誠也(広島).303 | マギー(巨人).883 |
9 | 田中 広輔(広島).299 | 宮﨑 敏郎(DeNA).874 |
10 | 菊池 涼介(広島).291 | ロペス(DeNA).867 |
パ・リーグの打率とOPS(2017年8月2日現在)
打率 | OPS | |
---|---|---|
1 | 柳田悠岐(ソフトバンク).331 | 柳田悠岐(ソフトバンク)1.093 |
2 | 秋山翔吾(西武).329 | 秋山翔吾(西武).973 |
3 | 銀次(楽天).310 | ペゲーロ(楽天).926 |
4 | 浅村栄斗(西武).309 | T-岡田(オリックス).902 |
5 | ペゲーロ(楽天).307 | ウィーラー(楽天).897 |
6 | 西川 遥輝(日本ハム).302 | デスパイネ(ソフトバンク).837 |
7 | ウィーラー(楽天).287 | 浅村 栄斗(西武).824 |
8 | T-岡田(オリックス).284 | メヒア(西武).790 |
9 | 今宮 健太(ソフトバンク).283 | レアード(日本ハム).789 |
10 | 小谷野 栄一(オリックス).280 | 島内 宏明(楽天).785 |
打率とOPSで顔触れの一部が異なっている。OPSにおいてパシフィックリーグ*1では西部ライオンズの選手がベストテン*2に3名も入っている。他の数値を全く無視するため、妥当性は著しく低くなるが、主力選手の得点力が高いため、直近の試合で首位球団を猛追する可能性もあるだろう。
ただし、単打を重ねるような好打者*3と三振かホームランかのような打者が同じ数値をはじき出してしまう。だから、OPSは打者の特性まで特定できない、粗削りな情報であることを前提にしなければならい。また、出塁後の走力は反映されないため、あくまでも打者の打撃力を測る基準の一つとして参考にすべきだ。
WHIPから分かる「投手の安定感」
「WHIP」は「被安打」と「与四球」を足した数字を「投球イニング*4」で割った数値である。
WHIPの計算方法
WHIP = (被安打 + 与四球)÷ 投球イニング
つまり、1イニングに何人の出塁を許したか、どれだけ安定したピッチング*5をしているかが明らかになる指標である。
防御率の場合は極言すれば、被安打や四死球によって満塁にしたとしても、無失点に抑えれば数値は悪くならない。
防御率の計算方法
防御率 = (自責点 × 9 × 3) ÷ (投球イニング × 3)
しかし、WHIPは被安打に加えて、与四球の観点から捉える。そのため、要所で踏ん張ると好成績を維持できる「防御率」と組み合わせるのが望ましいだろう。そうすることで、当該投手の妥当性の高い安定度を測定できる。
それでは、2投手の成績を基に見ていきたい。
セ・リーグの防御率とWHIP(2017年8月2日現在)
防御率 | WHIP | |
---|---|---|
マイコラス(巨人) | 2.60 | 1.08 |
メッセンジャー(阪神) | 2.61 | 1.34 |
防御率に着目した場合、大差のない成績である。ところが、WHIPで比較すると、両者に歴然たる差が生じてくる。メッセンジャー投手の方が被安打や四球が多く、走者を賑わし、やや安定感に欠ける投球内容を示している。
BABIPは「打者の運」が分かる?
「BABIP」は本塁打と三振を除く、フェアグラウンド*6への飛球がヒットになった割合を示す。
BABIPの計算方法
WHIP = (安打 - 本塁打) ÷ (打数 - 奪三振 - 本塁打 + 犠飛)
どんな打者でも本塁打を除いたフェアグラウンド)への打球が、ヒットになる確率は「3割」だと考える。つまり、BABIPが3割を超えている打者は野手の間に打球が落ちる「ポテンヒット」や「内野安打」などの幸運によるヒットが多い。反対に3割を下回る打者は、ライナーが野手の真正面を突くなど不運な打球が多い。これがBABIPの基本的な理論である。
それでは、この考え方を2選手に当てはめてみたい。
セ・リーグの打率とBABIP(2017年8月2日現在)
打率 | BABIP | |
---|---|---|
宮崎 敏郎(DeNA) | .337 | .355 |
山田 哲人(ヤクルト) | .230 | .258 |
宮崎選手の場合、BABIPの指標からすると、3割を超えているから、幸運なヒットが多く、今後打率を維持するのは難しいと予想できる。
一方、山田選手は不運な打球も多く、BABIPの理論によれば、今後の打率が上がっていくと予想できる。
BABIPは相手チームの投手力や守備能力なども影響を与えるが、運の占める割合が大きいことは否定できない。そのため、単独ではなく、打率などその他のデータと併用するのが望ましいだろう。数値の高低により、打率の推移などを参考程度に予測できるだろう。BABIPの数値が異常に高ければ、実力以上の力を発揮していることになるはずだ。
まとめ
ここのところ野球中継でも耳にするようになった、新しい指標の代表的な三つを挙げてみた。いずれも首位打者や最多勝のように、タイトルに直結する数字ではない。しかし、打率や防御率などと合わせ見ることで、興味深い参考資料として新たな発見が生まれ、野球を楽しむ一つの要素になり得るのではないだろうか。
かわいいビールの売り子さんに巡り合う率「PBER」を近日中に提唱するつもりだ。
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*1:【Pacific League】日本のプロ野球リーグの一。1949年(昭和24)結成。六球団が所属する。パ-リーグ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*2:【best ten】優秀な順に一〇番目までのもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*3:野球で,打撃のうまい者。安打を多く打つ者。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*4:【inning】野球で,両チームが攻撃と守備とを一度ずつ行う区分。インニング。回。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*5:【pitching】野球で,投手が打者に向かって球を投げること。投球。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)
*6:〔和製語 fair+ground〕野球で,ファウル-ラインの線上から内側の区域。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)