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フランスが送り出すぴりりと辛いルノー・トゥインゴとは?

斜め前方から見た赤色のルノー・トゥインゴと女性

2014年にスイスで行われたジュネーブ・モーターショーでお披露目された3代目トゥインゴ。日本国内へも2016年7月に正式導入された。過去にイタリアのFIAT 500を度々ご紹介したが、これに負けず劣らずの個性を放つトゥインゴの魅力を改めて見てみたいと思う。

2018年3月29日:用字用語の整理。

RENAULT(ルノー)とTWINGO(トゥインゴ)の歴史

斜め前方から見たルノー・4CV

ルノー社はフランス*1の自動車会社であり、グループ会社も含めると欧州で最大の自動車会社である。現在の代表者はカルロス・ゴーン氏で、日産の代表と兼任している。ルノー社の歴史は非常に古く、自動車が誕生したのとほぼ同時期の1898年に設立された。

ルノー社はルイ・ルノー(Louis Renault)氏が設立した自動車会社であるが、大東亜戦争後の1945年にはフランス国有会社のルノー公団となった経験もある。余談であるが、ルノー社は1946年に小型車「4CV」を発表、これが日本でも日野自動車によりライセンス生産*2された「日野ルノー」であり、日本との関りも古くから見られる。

「4CV」をはじめとして、「4(キャトル)」など愛嬌のあるフランスらしい車を世に送り出し続けたルノーであるが、1972年に登場した「5(サンク)」は1980年になってWRC*3向けの「5ターボ」も発表された。この「5ターボ」は1・4Lのターボエンジンを車体の中心付近に搭載し、後輪を駆動する車種で、異色の硬派なものであった。今回ご紹介する3代目トゥインゴは、この「5」のデザインが随所に採用されている。

1992年に登場した初代のルノー・トゥインゴは三日月ヘッドライト*4が印象的だった。2007年までの16年間にわたって生産・販売された。

2代目トゥインゴは2007年から2013年の期間で存在したが、特に前期型は他の小型車に埋もれてしまうようなデザインのため、脳裏に焼き付いていない方も多いはずだ。

そして、2014年になってお目見えした3代目トゥインゴだ。名称は引き継がれたものの、従来と異なる生産体系により、全く違った構成になったといえる。その詳細は次項でご紹介しよう。

3代目トゥインゴは相乗効果で魅力が大幅に増大

斜め前方から見たルノー・ターボ

2010年4月、ルノー社とDaimler AG(ダイムラー)社の戦略的提携が発表された。ダイムラー社は言わずもがなMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)を生産するドイツの自動車会社である。この提携において、「小型車の共同開発」「エンジンの共用」「小型商用車の共同開発」などが挙げられた。ルノーの事実上傘下には日産も加わっており、日産・スカイライン200GT-tがベンツのエンジンを搭載するのも、この流れの一環である。

この中で「小型車の共同開発」が、3代目ルノー・トゥインゴ誕生の背景である。ダイムラー社の完全子会社にはsmart(スマート)社がある。スマート社は元々スイスの時計屋であるSwatch(スウォッチ)が発案した小型車製造販売計画だ。スマート社は1998年以降に「fortwo(フォーツー)」「forfour(フォーフォー)」などの小型車を製造販売してきた。「フォーフォー」は2004年初代が三菱・コルトとの姉妹車として登場。しかし、販売が振るわず3年間ほどで消滅していた。

2014年になって、この2代目「スマート・フォーフォー」と3代目「ルノー・トゥインゴ」が姉妹車として仕切り直しを計り、登場してきた運びとなる。

開発はルノー主導の下に進んだそうだが、この両者の基本構成は現代において非常に珍しいRR*5方式が採用されている。先代までの「スマート・フォーフォー」「ルノー・トゥインゴ」はFF方式を採用しており、180度転換の発想となっている。

トゥインゴとFIAT 500(フィアット チンクエチェント)の比較

RR方式のルノー・トゥインゴの構成図

「スマート・フォーフォー」と「ルノー・トゥインゴ」が姉妹車であることは前項で述べた通りだ。共に日本国内へも正規販売されているが、ルノー・ジャポンによるトゥインゴ発表会の中で、「より敷居を低く設定したトゥインゴにはベンツを好むスマート消費者は見向きもしないだろう」と述べられた。うまくすみ分けがなされたようである。

さて、敷居の低い国産以外の小型車といえば、やはりFIAT 500であろう。FIAT 500は2006年の発売から10年以上を経たわけだが、その魅力は今もって色あせない。車体外寸を比べてみると、トゥインゴが3620mm × 1650mm × 1545mm、FIAT 500は3570mm × 1625mm × 1515mmと、わずかにトゥインゴの方が大きい。

トゥインゴが採用したRR方式だが、国産車ではスバル・サンバーを最後に絶滅してしまった。海外でも今はPorsche A.G.(ポルシェ)やくらいしか見当たらない。RR方式の利点は加速時に重心が後部にかかるため、駆動力をしっかりと確保できる点と、操舵輪の内側にエンジンがないため、だ角を大きく取ることができ、小回りが利くことであろう。

また、通常FF*6でエンジンが収まるボンネット*7部分は収納として活用できそうなものだが、トゥインゴはボンネットが通常の支点を中心としてフロントガラス*8の方に開く型とは異なり、車体と平行して若干前方に滑らせただけで、補器類がのぞくくらいとなっている。ここは利点を活かせず残念と言わざるを得ない。

トゥインゴの操舵(そうだ)感としては重量物が前半にないことにより、軽快な印象が強いとある。時に1010kgの重くない車体に0・9Lターボエンジンと5MT*9を組み合わせたトゥインゴ GTは、楽しい車に仕上がっているであろうことは想像に難くない。トゥインゴ GTは200台の限定車として即完売したが、2018年には通常販売車として帰ってきてくれるようであるので、楽しみに待ちたい。

まとめ

だいだい色のルノー・トゥインゴ GT

トゥインゴとFIAT 500を比べてみたが、トゥインゴは一段とそのお値打ち感も高く設定されている。FIAT 500の国内新車価格199・8万円からであるのに対し、トゥインゴは171万円からとなっている。トゥインゴの場合、FIAT 500の通常販売車にはない5MT車を最廉価車種に設定し、マニュアル車という希少価値をあえて最前列に並べているような印象を受ける。

車にさほど関心がなく、見た目重視で判断される方であれば、トゥインゴがRR方式となっていることなど、気付くことはないだろう。つまり、それほど何気なく「普通」に仕上がっているのだ。

トゥインゴは最廉価版の5MT車には1・0Lの自然吸気エンジンだ。それ以外は6速EDC(エフィシエント デュアル クラッチ)と呼ばれる6ATに0・9Lのターボエンジンが組み合わされる。EDCは変速時の段付きが国産車に比べて強いようで、それを嫌う向きにはやはり5MTで乗りたい車種である。しかし、5MTの自然吸気エンジンでは力不足を感じる場面も出てくるため、お勧めは間違いなく5MT + 0・9Lターボのトゥインゴ GTとなってくる。

トゥインゴにしても、FIAT 500にしても、国産車にはない特徴を持っている。外観でいえば、国産の小型車は室内空間を最大限に取ろうとした結果、貧乏くさく見える嫌いがある。また、駆動系では快適性と滑らかさが最重視され、なんの味わいもないものが多い。一方、トゥインゴとFIAT 500は、その点どちらも主張が強い。

トゥインゴのRR方式は、いずれEV化を前提としての構造なのかもしれないが、ガソリン車としての楽しみを多く与えてくれる1台であることは間違いない。また、歴代トゥインゴの中でも、渾身(こんしん)1台であるということを付け加えておきたい。

ちなみに、トィンゴの意味は「楽しみ」や「冒険」に由来するようだ。FIATもこの「RRの楽しい冒険」に付き合ってみてはいかがだろうか。

(出典:ルノー・ジャポン株式会社

*1:【France】ヨーロッパ西部,大西洋と地中海に面する共和国。農業生産,特に小麦・ワイン・トウモロコシの生産が盛ん。また,鉄・ボーキサイトなどの資源も豊富で鉄鋼・石油化学・航空機・機械などの工業も発達。世界的な観光国。古くガリアといいローマ帝国の属州。中世,西フランク王国の地。一七~一八世紀にはヨーロッパに君臨。1768年コルシカ島をジェノバ共和国から購入。89年フランス革命が起こり,92年王制が廃され,共和制が樹立。ナポレオン一世の第一帝政を経て,1848年二月革命により第二共和制,52年第二帝政,普仏戦争後の第三共和制,第二次大戦後の第四共和制,1958年ド=ゴール政権による第五共和制を経て現在に至る。住民はラテン系で大部分がカトリック教徒。首都パリ。面積54万4千平方キロメートル。人口6503万(2011)。正称,フランス共和国。〔「仏蘭西」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:他社が開発した製品を,一定のロイヤリティーを支払って実施権を得てその社の仕様どおりに生産すること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【World Rally Championship】世界ラリー選手権。世界中のコースを使用して年 10 数戦行う自動車ラリー。1973 年開始。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【headlight】自動車・自転車・船などの前方を照らすための灯火。前照灯。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【和製語 rear-engine, rear-drive】後部エンジン後輪駆動。自動車の後部に搭載したエンジンによる後輪駆動方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【和製語 front-engine, front-drive】自動車のエンジンの動力が,後輪にではなく前輪に伝わる方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【bonnet】自動車の前部の,エンジンを収容する部分のカバー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:〔和製語英 front+オランダ glas〕自動車の運転席の前面にあるガラス。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【manual transmission】自動車の手動変速機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)