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フランス車らしい存在感を放つ?カングーの魅力に迫る!

町中を快走する黄色のルノー・カングー

ルノー4を起源とする小型ボンネットバンをフランスでは「フルゴネット」と呼ぶ。車両の前部は乗用車で、運転席後部からの車室を大きく持ち上げた姿形は一種独特の印象だ。そんな日本でも人気のフルゴネットの現代版ルノー・カングーに触れてみよう。

カングーの備える魅力

市街を走る白色のルノー・キャトル フルゴネット

ルノーといえば、ルノーグループ = 日産自動車 = 三菱自動車の提携である。国営化された経緯を持つルノーは1996年に完全民営化されたが、2016年時点でフランス*1政府が19%の株を所有している。

カングーは小型商用車と趣味にも使用できる多目的車として1997年に初代が発売された。かつてのフルゴネットは車両後部に箱を載せたような独自のデザイン*2をしていた。その発展形がこのカングーとなる。

フルゴネットは日本だと滅多に見掛けないデザインの車種といえる。ルノーと日産の提携は1999年に行なわれたが、それを予期するかのように日産も和製フルゴネットと呼べる「AD MAX (エーディー マックス)」を1992年から製造していたこともあった。

1997年に発売された初代カングーは使い勝手の良さに加えて、走行性能の優秀さからも高く評価されて人気を博した。一回り大きくなった2代目の新型カングーが市場の需要から2007年に導入され、日本市場には2009年9月から販売が開始されている。

カングーは日本でもなかなか受けがいい。カングーの年1回の祭典、「カングージャンボリー*3」も2018年の開催で10周年を迎えるほどだ。2017年開催時には全国から1243台ものカングーが集結したそうだ。

カングーが秀英なのは車内外の明るい雰囲気、商用車にも採用される使い勝手の良さ、簡素で広い室内を比較的自由に改変できる点であろう。まさにフランス語で「遊びの空間」を表す「ルドスパス」を具現化したものだ。

本国フランスのカングーにおけるグレード設定

軒先に停車している黒色のルノー・カングー グランド

カングーは外見も独特ながら、車名すら一風変わった響きだ。「カングー」はフランス語ではなく、特別の意味がない造語である。強いて言うなら「カンガルー」のフランス語が近い発音になるそうだ。

現在日本に正規導入されているのはZENというグレード*4のみである。6速MT*5とオートマチック*6限定免許でも運転できるデュアル*7クラッチ*8式の6速EDCとなっている。ちなみに、ZENはルノーの中間グレードに用いられ、日本語の「禅」から取ったそうだ。

現在日本では「ZEN」だけの1グレード構成のカングーであるが、本国フランスのグレード構成をここで現地新車価格とともにご紹介しよう。

フランスにおけるカングーのグレード構成(2018年4月23日現在)

本国グレード 価格
Life 20,350ユーロ
SL Nouvelle Limited 20,950ユーロ
Zen 21,700ユーロ
Nouvel EXtrem 22,550ユーロ
Grand Life 5 Places 22,750ユーロ
Intens 22,950ユーロ
Grand SL Nouvelle Limited 23,950ユーロ
Grand Zen 7 Places 24,700ユーロ
Grand Intens 7 Places 25,550ユーロ

フランスでは上記のように豊富なグレード構成となる。2018年4月23日現在の為替で換算すると、フランスでの新車価格は約269万6000円~338万5000円までの価格帯だ。日本向けのZEN新車価格は249万9000円~259万000円なので、同グレードのフランス価格の円換算287万5000円よりも、かなりお得な設定となっている。

日本仕様では1197cc直列4気筒DOHC*916バルブ*10直噴ターボのみであるが、フランス仕様には1461ccの4気筒直噴ディーゼル*11も用意される。また、上記表にある各「Grand」であるが、後席の後方が延長されたモデルである。通常モデルが全長4280ミリのところ、Grandでは4666ミリとなり、40センチ弱長い。

日本に導入されているZENは中間グレードとなっているのが分かる。フランスには他にも業務用である「カングー・エクスプレス」「カングーZ.E.」も別途設定されており、非常に豊富な顔触れとなっている。

カングーのエンジン

ルノー・カングーの透視画法

日本仕様の初代カングーと新型カングー発売当初にはルノー「K型」エンジンを搭載していた。K型エンジンは1995年から採用された直列4気筒ガソリンエンジンで、1・4L*12、1・5L、1・6Lが存在する。カングーに採用されていたのは1・6L自然吸気DOHCエンジン、K4M型であった。

2014年5月にはダウンサイジング*13ターボ*14である1・2Lエンジンが新たに採用された。この1・2Lエンジンは「H5F」と呼ばれ、2012年に発表されている。このエンジンは日産が開発した「HR」型が原型となっており、海外仕様の日産・ジュークにも搭載された記録がある。

このHR型1・2Lエンジンは日産・ノートにも搭載されている。しかし、HR型1・2LとカングーのH5F型1・2Lエンジンではシリンダー*15のボア × ストローク*16値からして異なっており、同じ原型とはいえ、手がこんだものとなっている。

H5Fエンジンは従来の1・6Lエンジン並みの動力性能実現を目指して開発された。ボア × ストロークは72・2 × 73・1ミリ、1197ccターボから最高出力84kW*17(115PS*18)/ 4500回転、最大トルク*19190Nm(19・4kgm*20)/ 1750回転(6MT車は2000回転)を発生する。1・6Lエンジンより数値上で10PS / 4・3kgm上回り、1430~1450キロと決して軽くない車体を過不足なく引っ張る。

外観から想像される通り、足回りは柔らかめの設定だが、ルノー・メガーヌと共通のC型プラットフォームの採用により、質感の高い走りを提供する。

まとめ

開けられたルノー・カングーのダブルバックドア

日本でも愛好家を着実に増やしつつあるカングーだ。少なからず癖のあるデザインではあるが、乗る者を楽しくさせてくれるFIAT 500と同じような魅力を持っているようだ。FIAT 500は基本的に2名まで乗車が適しているが、広々とした車内のカングーは家族全員を楽しませられる。

外寸は全長4280 × 全幅1830 × 全高1810ミリと、縦横比がほぼ真四角となる。FIAT 500と同程度の大きさと踏んで眼前にすると、思いの外のどっしりとした存在感に驚かされるカングーである。車幅もだいぶあるので、市街地での日常的な使用には若干つらさを感じるかもしれない。しかし、レジャー*21向けとしてなら、後席の両側スライドドア*22、後部の観音開き*23ドアにより、大柄な欠点も最大限に補われているため、その魅力を遺憾なく発揮する一台となるはずだ。

車内は大人がなんとか足を延ばして横になれるだけの余裕がある。その特長を生かし、ポップアップ*24ルーフ*25を仮装したキャンピングカー*26も愛知*27の「ホワイトハウス キャンパー」から登場して話題となった。

元々カングーは商用車の出であり、フランスでは郵便配達車としても活躍している。このような商用車は大きな車内空間と質素な内装を併せ持つのが常である。さらに、ちょっとしたおしゃれさも兼ね備えたカングーは日本車にはない魅力が備わっている。

「車を操る」楽しさには物足りなさを覚えるかもしれない。ただし、「家族を楽しませる」観点からだと、周囲に埋没しない個性的な一台になるだろう。デザインをはじめ、独特の風格を感じさせるカングー。一度対面したら、その愛嬌(あいきょう)が脳裏に焼き付くはずだ。

一目ぼれしてしまったのなら、質素だとかやかましいだとか欠点を「勘繰る」のはよして、その魔法にかかってみてはいかがだろうか。

(出典:ルノー・ジャポン株式会社

*1:【France・仏蘭西】ヨーロッパ大陸西部の共和国。古くはガリアと称しローマ帝国の属州、5世紀にフランク王国が成立、その後分裂したが14~15世紀の百年戦争を経て統一国家を形成、17~18世紀ヨーロッパ大陸に覇を唱え、アジア・アフリカに植民、高度の近代文化を築いた。1789年のフランス革命で第1共和制が成立、のちナポレオン1世による第1帝政、その没落後、王政復古および第2共和制・第2帝政を経て1871年第3共和制、第二次大戦後第4共和制、1958年ド=ゴールによる第5共和制で今に至る。面積55万1500平方キロメートル。人口6140万(2006)。首都パリ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【design】意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【jamboree(アメリカ)】(どんちゃん騒ぎの意)ボーイ‐スカウトの大会。キャンピング・作業・競技・キャンプ‐ファイアなどの催しを行う。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【grade】等級。段階。品等。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【manual transmission】自動車の手動変速機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:(automatic transmission)自動車の変速装置が自動式であること。AT/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【dual】二つの。二重の。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【clutch】一直線上にある二つの軸の一方から他方へ動力を任意に断続して伝える装置。咬合(かみあい)式・円板式・円錐(えんすい)式などがある。連軸器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:ダブル‐オーバーヘッド‐カムシャフトの略。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:(valve)管の途中や容器の口にとりつけ、気体または液体の出入りの調節をつかさどる器具。弁体を指すこともある。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:ディーゼルが発明した内燃機関。空気をシリンダー内でピストンにより急激に圧縮して高温とし、そこへ燃料を細孔から噴射して、自然に点火爆発させる。空気噴射式と無気噴射式とがある。船舶用・車両用・航空機用・発電用などに広く使用。重油機関。ジーゼル機関。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:(litre; liter)リットルの略号(L かつてはl)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【downsizing】規模を縮小すること。小型化すること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【turbo】過給器の一種。排ガスのエネルギーを利用する過給器。排気タービン過給器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【cylinder】往復運動機関の主要部分の一つ。鋼製または鋳鉄製の中空円筒状で、その内部をピストンが往復して所要の仕事を行う。気筒。シリンドル。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:(stroke)蒸気機関・内燃機関など往復機関で、シリンダー内でピストンが一端から他端まで動く距離。衝程。ストローク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:【kilowatt】仕事率・電力の単位キロワットを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:(Pferdestärke(ドイツ))(horsepower)動力(仕事率)の実用単位。1秒当り75重量キログラム‐メートルの仕事率を1仏馬力といい、735.5ワットに相当する。記号 PS 1秒当り550フート‐ポンドを1英馬力(746ワット)という。記号 HP,㏋,hp 日本では1999年以来仏馬力だけが特殊用途にかぎって法的に認められている。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:【torque】原動機の回転力。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:【フランス kilogrammètre】エネルギーまたはトルクの重力単位キログラムメートルを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【leisure】余暇。仕事のひま。転じて、余暇を利用してする遊び・娯楽。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*22:【slide door】横に滑らせて開閉するドア。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:(観世音の像をおさめた厨子の造り方に基づく)左右の扉が中央から両側に開くように造られた開き戸。仏壇・倉庫などに用いる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*24:【pop-up】(「飛び出す」の意)絵本などに組み込んだ、開くと絵の一部が飛び出してくる仕掛け。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*25:【roof】屋根。ビルの屋上。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*26:(和製語 camping car)キャンプ用に寝起きや炊事などの設備を備えた自動車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*27:中部地方、太平洋側西部の県。尾張・三河2国を管轄。県庁所在地は名古屋市。面積5172平方キロメートル。人口748万3千。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)