人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

死者が出るほど強力?タイの万能薬レッドブルとヤードム

レッドブルとウオツカ

栄養ドリンクを飲むのは日泰共通のようだ。日本の市場とは正反対でタイでは右肩上がりに成長中だ。また、町中を観察していると小指ほどの筒状の「ヤードム」を嗅いだり、鼻の穴に差し込んだりしている。物騒なうわさもあるタイ発の「二つ」を掘り下げたい。

タイ発の栄養ドリンク「レッドブル(Red Bull)」

赤い雄牛の模造

栄養ドリンク*1には異名がいくつかあって、エナジードリンク*2や機能性飲料*3とも呼ばれている。普通栄養ドリンクといえば100ml程度の小さな瓶を思い浮かべるのではないだろうか。タイ*4でも同様の形態で、多数の製造会社から販売されている。中でも世界的に知名度が高いのが「レッドブル」だ。現在は豪州の会社の製品となっているが、実はタイが発祥の地なのである。

タイの栄養ドリンクの種類

タイにはレッドブルをはじめ、M-150、カラバオ(CALABAO)、シャーク(SHARK)、その他たくさんの栄養ドリンクが販売されている。そして、日本からもリポビタンデー(LIPOVITAN-D)、リポプラス(LIPO-PLUS)が参入している。さすがレッドブル発祥の地だけあって、豊富な商品からも高い需要をうかがい知ることができる。コンビニエンスストア*5や地方の商店にも置いてあり、特に男性の肉体労働者や運転手に人気のようだ。

配合成分の違いに要注意!

栄養ドリンクに記載されている成分表によると、日本のものと比べてもおおむね差異がないようだ。しかし、看過してはならないのが「カフェイン*6」が多量に含有している点である。カフェインは眠気や疲れに対して一時的な効果があるものの、中毒症状を招く可能性もある強力な成分だけに、タイの栄養ドリンクには重々用心すべきだ。

タイの栄養ドリンクに限ったことではないが、世界中で栄養ドリンクに因果関係を疑われる死亡例が複数寄せられている。つまり、「適量」を逸すると「死」が待ち受けていることを片時も忘れないようにしよう。さらに、身体が小さい子どもの場合は同じ摂取量でも急性カフェイン中毒に陥る危険が高まるのだ。

いずれにせよ、体調に異変を感じた場合は速やかに専門家であるお医者さまの指示を仰ぐのが最善である。気持ちが浮かれる旅行中だからこそ、「立ち止まるのも勇気」だと肝に銘じておきたい。

また、タイの栄養ドリンクに含まれているタウリン*7が合成物となっている。合成タウリンの輸入を禁じている日本の薬事法*8に抵触するため、国内への持ち込みができない。タイで栄養ドリンクを購入したままかばんの中に入れっぱなしで、帰国してしまわないように気を付けよう。

ヤードムは口に塗らない

黒抜きの横顔

一般的な「ヤードム」は直径1・5センチ高さ6センチほどで、白色を下地にした筒状の容器に入っている。ピンからキリまであるが、安いものだと20バーツ(約68円/2018年2月19日現在)くらいで手に入る。ぱっと見はリップクリーム*9かのようだが、タイ語で「ヤー(薬)」「ドム(嗅ぐ)」となり、鼻から配合成分を吸引する「嗅ぎ薬」の意味となる。

ヤードムの種類と効果

香り豊かなハーブ

タイでは万能薬と名をとどろかせているヤードムだが、成分表を見るとターメリック*10、メントール*11、レモングラス*12などのハーブ*13やアロマ*14が中心であり、薬というよりは清涼剤に近い印象だ。

タイ人いわく、その用途は幅広い。しかし、抗生物質に由来する効果ではなく、清涼剤としての精神的な働きが大きいようだ。

ヤードムの効果

  1. かゆみ止め
  2. 気分転換
  3. 頭痛
  4. 眠気覚まし
  5. 乗り物酔い
  6. 鼻づまり
麻薬成分が入っているヤードム?

数え切れないほどの種類があり、かさばらないのでお土産にも重宝されるヤードム。しかし、ごく一部の商品には日本の薬事法で使用と輸入が禁止されている成分「Lデソキシェフェドリン(l-desoxyephedrine)」が含まれている。そのため、薬剤師のいる薬局での購入をお勧めしたい。

ヤードムの使用法に見る感受性の違い

効能としてのヤードムも興味深いのだが、使用方法には日本とタイで大きな相違を目の当たりにすることになる。それはヤードムを鼻の穴に突き刺して歩いている姿を頻繁に目撃することだ。

日本人はヤードムになじみがないので、リップクリームがえらいことになっていると思わず目を疑ってしまう。日本で何かを鼻の穴に入れたまま、外出できるだろうか。恐らく、大多数の方が羞恥心が邪魔して「できない」と答えるはずだ。

ところが、さすがは愛すべき「自由の国」である。いちいちヤードムを取り出しては嗅ぐ「面倒くささ」が「恥ずかしさ」を上回ったのだろう。ここに大きな感受性の違いと、ささいなことを気に留めない寛大さを感じさせられた。

まとめ

急須と茶飲み茶わん

古今東西の人間が健康に関心を持ってきたはずだ。それは洋をわたったタイにおいても、スポーツ*15、サプリメント*16などの一大市場を現在も抱えていることから、注目度の高さが読み取れる。

ただし、日本で販売されている製品であっても、タイ版には含まれる成分などに大小の違いがあるため、購入する際には注意が必要である。

タイで苦みのある日本茶で一服しようとしたら、大量に砂糖が入っていたことがあった。「その甘みではない」と声高に突っ込みそうになったことがある。

しかし、ヤードムを吸って心を落ち着けたとさ。

*1:肉体疲労時の栄養補給などに用いる飲料。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【energy drink】機能性飲料の一。カフェイン,炭酸などを含み,気分を爽快にする,パフォーマンスを向上させるなどの機能を有するとうたったもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:生体活動を調節する機能をもつとされる成分を配合した清涼飲料水。各種ビタミンやアミノ酸,食物繊維などが含まれる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【Thai・泰】(Thailand)インドシナ半島中央部にある王国。旧称シャム。13世紀以後タイ人の国が起こり、先住のモン人・クメール人などを合わせ、1782年現ラタナコーシン王朝が成立、1932年立憲君主制。面積51万3000平方キロメートル。人口6598万2千(2010)。国民の大多数が仏教徒。首都バンコク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【convenience store】食料品・日用品を中心にした小型セルフ‐サービス店。適地立地・無休・深夜営業など便利さを特徴とする。コンビニ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【Kaffein(ドイツ)】茶の葉、コーヒーの実・葉などに含まれるアルカロイドの一つ。無色・無臭の白色針状結晶。水・アルコールには溶けにくく、クロロホルムに溶ける。少量で中枢神経系を興奮させ、多量で麻痺させる。強心・利尿・興奮剤。テイン。茶素。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【taurine】示性式 NH2(CH2)2SO3H 胆汁に多く、肝臓・筋肉にも含まれる。また、イカ・タコなどの肉エキスには多量に含まれる。アミノエチルスルホン酸。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:地方薬事審議会、薬局ならびに医薬品および医療機器等の基準・検定・取扱いなどについて規定し、国民の保健衛生の向上を期した法律。現行法は1960年制定。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:(和製語 lip cream)唇が荒れないように塗るクリーム。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【turmeric】鬱金(うこん)の根茎を乾燥したもの。染料や、香辛料としてカレー粉などの着色に用いる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【Menthol(ドイツ)】テルペンに属するアルコール。分子式 C10H20O 無色の結晶。薄荷油(はっかゆ)の主成分。ゲラニルアミンの不斉異性化反応を鍵反応とする合成もされる。食用香味・鎮痛剤・止痒剤などに用いる。薄荷脳(はっかのう)。メンソール。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【lemon grass】イネ科の多年草。熱帯アジア原産。高さ約1.5メートル。葉は群がって株を作り、硬く線形で、長さ約50センチメートル、幅1センチメートル。全体に芳香があり、精油を採って化粧品や飲料・食品の香料などに用いる。レモンガヤ。レモン草。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【herb】薬草、香味料とする草の総称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【aroma】香り。芳香。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【sport(s)】陸上競技・野球・テニス・水泳・ボートレースなどから登山・狩猟などにいたるまで、遊戯・競争・肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【supplement】栄養補助食品。体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを、錠剤・カプセル・飲料などの形にしたもの。サプリ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)