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大谷翔平選手のとどまるところを知らない進化!

エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイムの外野席

大リーグへの挑戦を表明していた大谷選手の所属球団がロサンゼルス・エンゼルスに決定した。入団会見ではその決め手について「感覚的なもの」とお茶を濁したが、決断に至るまでに彼が望んだものとは一体何だったのかを考察してみた。

2017年2月16日:用字用語の整理。

二刀流は必ず実現する

大谷選手は所属チームを決めるために、まず大リーグ*1全球団に質問状を送り、各チームの反応を見ることから始めた。 内容は明らかにはなっていないが、「二刀流」の受け入れの可否が大きな論点であったに違いない。そして、それを実現するにあたって、どのような育成方針かも重視していたはずだ。

大谷選手が大リーグ挑戦を発表した記者会見の中で、チーム選びについて以下のように語っている。

「最初は僕と、交渉に当たっていただいたスカウトの方々や栗山監督、ごく少数の方たちが思い描いた二刀流だった。5年間通して多くのファンに応援していただいた。もう、自分だけのものではないというのもある」

(出典:株式会社産経デジタル

「自分としてはまだまだ足りない部分の方が多い選手。自分をもっと磨きたいというかそういう環境に自分を置きたい」

(出典:株式会社産経デジタル

これらの大谷の決意からは以下の思いが強くにじみ出ている。

  • 二刀流はファンのためにも必ず実現させたい
  • 自分はまだ発展途上であり、さらに能力に磨きをかける時間がほしい

いの一番に二刀流を球団として認めてくれること。加えて、即時結果に直結することを強いず、長い目で成長する「時間という名の土壌」を与えてくれることがもう一つの条件なのだろう。

スランプ*2に陥り、芳しくない状況が続いたとき、世間からの辛辣(しんらつ)な批評の矢面に立たされればどうだろうか。その過度な精神的重圧から「夢」が頓挫してしまう環境は敬遠したのだろう。

手厳しいファンや早々に最大限の結果を期待される大都市のチームであるニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスといった球団は、これらの「土壌」の問題から脱落していったと予測される。たとえ高額な年俸での契約を提示されたとしても、大谷選手の希望はそこにはない。自分が何を目的に海を渡るのかを明確に意識した球団選びであり、周囲の騒々しさに惑わされない落ち着きぶりは驚かされるばかりだ。

必要な「中6日」の登板間隔

大谷選手は北海道日本ハムファイターズに在籍した5年間で、二刀流を成立させるために練習メニューを試行錯誤しながらも、独自の調整方法を確立してきた。大リーグに挑戦すると言えども、ルーチン*3となり、結果も残してきた調整法をできる限りいじりたくないのが本音だろう。つまり、日本ハムのローテーション*4同じ「中6日」かそれに近い登板間隔を与えてくれるチームが候補となったはずだ。

基本的に大リーグの先発投手は5人体制だ。従って、「中4日」でローテーションを組むことが普通であるが、大谷選手を「中6日」で起用するのであれば、ローテーションを6人に増員する必要がある。

ところが、「1人の先発投手を増やすだけ」のように単純な話ではないのだ。日本プロ野球では一軍登録人数は28人。その中からベンチ入り25人を選ぶ方式である。外れる3人は基本的に登板機会のない、いわゆる「あがり」と呼ばれるローテーション投手たちであり、登録28人を余すことなく起用することができる。

一方、大リーグは登録25人のため、先発を6人にするには中継ぎ投手か野手1人を減員する必要が生じるのだ。

また、大リーグは年間162試合に加えて、ポストシーズンゲーム*5も含めれば、最長180試合にも達する長丁場である。その中で中継ぎ投手1人もしくは野手を減らすことは他の選手の負担が増すため出血覚悟の選択となる。

ところが、二刀流の大谷選手ならばどうだろうか。野手を1人も削ることなく、6人制のローテーションが組めるのだ。もちろん実力の側面からも投手と打者として即刻レギュラーを奪取するのは現実的ではない。だから、チームとして先発投手6人制に理解があり、ある程度時間をかけて成長を見守ってくれる球団が理想的であるのだ。それを提案したのがエンゼルスだったのだろう。

今後「中6日」がうまく機能し、軒並み好成績を残したとしたら、大リーグの「中4日」の登板間隔が見直されるかもしれない。そして、登録人数が増えれば、大谷選手は大リーグでも「維新の風」を吹かせることになるだろう。

日本ハムと類似点が複数あるエンゼルス

大谷選手が日本ハムに入団した2013年シーズンは前年のリーグ優勝から一転して、最下位に沈んだ年であった。武田勝投手や稲葉篤紀選手など、チームの屋台骨とも言えるベテラン*6たちに衰えが目立つようになった。中田翔選手は既に活躍していたものの、西川遥輝選手や近藤健介選手といった現在の中心選手たちが徐々に力を付けてきたころだった。

そこに前代未聞の二刀流を掲げて飛び込んだ大谷選手。まさにチームとともに成長し、彼が中心選手として二刀流を確固たるものにしたとき、日本ハムは日本一までたどり着いた。

エンゼルスは過去2度のMVP*7に輝いている格段の人気・注目を集めるマイク・トラウト選手はいる。しかし、打撃の両輪を担わなければならない通算600本のホームランを誇るアルバート・プホルス選手は38歳になり、成績も下降気味だ。

投手陣も二桁勝利しているのは2人だけと、若手の底上げが切望される現状だ。まるで大谷選手が日本ハムに入団した2013年と似通った状況なのだ。また、エンゼルスはDH*8制を採用しているアメリカンリーグ*9であり、これまでDH制を生かして二刀流の調整をしてきた大谷選手にとっては大きな利点となる。

つまり、大谷選手はチームに成長の機会をもらい、主力選手として二刀流を極めることでワールドチャンピオンへの道筋が開ける。

エンゼルス入団会見で唯一、入団の決め手として語った「縁」とは日本ハムのような自分自身も成長しながら、優勝を狙えるチームを指していたのではないだろうか。

まとめ

ついに大リーグ挑戦の出発点に立った大谷選手。手術した右足首の状態や文化・言葉も異なる環境での調整には戸惑いも覚えるはずだ。そして、何よりの大リーグでの二刀流の実現は、いばらの道に違いない。しかし、これまではいい意味で予想を裏切り、大活躍によって野球の常識を塗り替えてきた。

困難極まりないことだって、大谷選手なら「やってのけてしまう」と期待する野手ファンは大勢いるはずだ。1番打者の投手で出場し、初球を先頭打者ホームラン。DHから抑え投手で登板して165キロの弾丸ストレート。われわれの想像の域をはるかに超える「非常識を現実」に塗り替えたのだ。大谷選手の積年の念願を大リーグの大舞台でぜひともかなえてもらいたい。

あの大谷選手が着たエンゼルスのユニホームが、今から昇らんとする「日出づる色」に見えて仕方ない。夢のチャンピオンリング*10を目指して、まだまだ太陽は上昇していく。

*1:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【slump】気力や体調が一時的に衰え気味で,仕事の能率や成績が落ちる状態。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【routine】〔ルーティーン・ルーティンとも〕きまりきった仕事。日々の作業。ルーチン-ワーク。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【rotation】野球で,先発投手が登板する順序。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【postseason game】プロ-スポーツで,公式戦(リーグ戦)の終了後に行われる試合。多くの場合,公式戦の上位チームによる順位決定トーナメント戦となる。アメリカ大リーグにおける,地区プレーオフ,リーグ-プレーオフ,ワールド-シリーズなど。ポストシーズン。PSG。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【veteran】ある事柄について豊富な経験をもち,優れた技術を示す人。老練者。ふるつわもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【most valuable player】スポーツ競技で最も優れた活躍をした選手。最優秀選手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:〔designated hitter〕野球で,打順が投手のとき,投手に代わって打つように指名されている打撃専門の打者。指名打者 。

*9:【American League】アメリカのプロ野球の二大リーグの一。1900年結成。98年以降,一四チームが所属。ア-リーグ。AL。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:〔championship ring〕スポーツのポストシーズン-ゲームで優勝したチームが,その記念として制作し選手に授与する指輪。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)