オープン戦の結果は当てにならず?公式戦の成績との関連性
オープン戦はレギュラー選手やベテラン選手にとっては調整の場である。一方、若手選手にとっては一軍生き残りを懸けた戦場と化す。それぞれの立場から残した成績は開幕後の成績に、密接な関わりを持ってくるのかを探ってみたい。
スポンサーリンク
オープン戦の首位打者の公式戦成績
オープン戦*1は首脳陣が各選手の状態を見極めたい性質上、公式戦と比べて出場機会が満遍なく与えられる。そのため、必然的に打数が少なくなり、首位打者の打率は4割に達することも決して珍しくない。レギュラー*2の座を射止めるために結果を残した選手たち。果たして開幕してからの成績はどのようになっているのだろうか。
オープン戦首位打者と公式戦成績の比較
直近10年間のオープン戦首位打者が公式戦で残す打撃成績を比較していく。春先の好調が公式戦にも反映されれば、首脳陣も指揮も取りやすいはずだ。しかし、意外な事実が浮き彫りになった。この資料から選手起用の難しさを垣間見た気がする。
オープン戦首位打者の公式戦打撃成績
年度 | 選手名 | オープン戦 | 公式戦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
打率 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 本塁打 | 打点 | ||
2008 | 稲葉篤紀(日ハム) | .400 | 2 | 8 | .301 | 20 | 82 |
2009 | 栗山巧(西武) | .400 | 1 | 3 | .267 | 12 | 57 |
2010 | G.G.佐藤(西武) | .433 | 3 | 9 | .204 | 6 | 19 |
2011 | 浅村栄斗(西武) | .441 | 2 | 7 | .268 | 9 | 45 |
2012 | 松山竜平(広島) | .403 | 1 | 8 | .204 | 0 | 7 |
2013 | 畠山和洋(ヤクルト) | .393 | 3 | 12 | .219 | 12 | 51 |
2014 | 井上晴哉(ロッテ) | .435 | 2 | 7 | .211 | 2 | 7 |
2015 | 秋山翔吾(西武) | .459 | 0 | 8 | .359 | 14 | 55 |
2016 | 鈴木大地(ロッテ) | .400 | 1 | 9 | .285 | 6 | 61 |
坂田遼(西武) | .400 | 1 | 9 | .245 | 3 | 26 | |
2017 | アウディ・シリアコ(DeNA) | .375 | 1 | 6 | .074 | 0 | 0 |
打者に関しては2015年の秋山選手がシーズンに入ってからも好調を維持し、パ・リーグ*32位の打率3割5分9厘、216本の最多安打記録を樹立するなど活躍している。しかし、その他では2008年の稲葉氏と2016年の鈴木選手が及第点といったところだろうか。それ以外の選手たちはオープン戦の勢いを維持できたとは言い難い。
若手選手であればキャンプ*4から売り込みを続け、さらにオープン戦にも全力で臨んでいるはずだ。だから、せっかくの好機をつかんだものの、開幕後には息切れしてしまう場合もあるはずだ。過酷な世界での「生存競争」の難しさを改めて感じさせる結果だ。
そして、外国人選手はオープン戦の成績が当てにならない顕著な傾向が見られる。昨年のシリアコ選手はオープン戦の好調を買われ、開幕戦は5番サード*5で先発出場するも振るわず。わずか12試合の出場に留まり1年で退団している。
一方、DeNAのホセ・ロペス選手はオープン戦で打率1割4分3厘、巨人のケーシー・マギー選手も打率1割4分8厘だった。それぞれの打率は規定打席に到達している選手の中で、下から数えて1位と2位だったため、絶不調を心配された。ところが、いざシーズンが終了してみるとロペス選手は打率3割0分1厘、30本塁打105打点、マギー選手も打率3割1分5厘、18本塁打77打点と申し分のない働きをしたのだ。
助っ人のオープン戦と公式戦の打撃成績
年度 | 選手名 | オープン戦 | 公式戦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
打率 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 本塁打 | 打点 | ||
2017 | ホセ・ロペス(DeNA) | .143 | 2 | 11 | .301 | 30 | 105 |
ケーシー・マギー(巨人) | .148 | 0 | 3 | .315 | 18 | 77 |
とはいえ、ファンであれば応援するチーム*6の助っ人*7が、たとえオープン戦でも鳴かず飛ばずなら、やきもきするのは当然だろう。また、無い物ねだりで、オープン戦で打ち過ぎたら打ち過ぎたで心配になってしまう。「外国人選手はふたを開けてみないと分からない」とはよく言ったものだ。
オープン戦の防御率が首位の投手は?
打者と同じく投手も調整段階であるため、全体的に短いイニングでの登板が多い。オープン戦で先発投手が完投することは基本的にはないため、シーズン成績と直接比較することは難しいが、投手においてはオープン戦の好成績はシーズンに入っても変わらず続くのだろうか。
オープン戦の防御率が首位のピッチャーの公式戦成績
続いて、直近10年間のオープン戦防御率が首位のピッチャー*8の公式戦成績を比較していく。野球の勝ち負けは「8割」がピッチャーの出来具合で決まるとも言われるほどだ。そのため、開幕ローテーション*9はチームの死活を決する肝心要である。前述したオープン戦の打者成績のように、公式戦の結果とはあまり直結しないのだろうか。
オープン戦首位打者の公式戦打撃成績
年度 | 選手名 | オープン戦 | 公式戦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
防御率 | 勝敗 | 防御率 | 勝敗 | ||||
2008 | 岩田稔(阪神) | 0.00 | 0勝0敗 | 3.28 | 10勝10敗 | ||
2009 | 清水直行(ロッテ) | 2.57 | 2勝1敗 | 4.42 | 6勝7敗 | ||
2010 | 石川雅規(ヤクルト) | 0.43 | 1勝1敗 | 3.53 | 13勝8敗 | ||
2011 | 久保康友(阪神) | 0.00 | 2勝0敗 | 3.78 | 8勝8敗 | ||
2012 | 国吉佑樹(DeNA) | 0.00 | 2勝0敗 | 3.67 | 4勝12敗 | ||
2013 | 宮國椋丞(巨人) | 0.47 | 3勝0敗 | 4.93 | 6勝7敗 | ||
2014 | グレッグ・レイノルズ(西武) | 0.53 | 1勝0敗 | 5.46 | 3勝7敗 | ||
2015 | 野上亮磨(西武) | 0.82 | 0勝1敗 | 4.22 | 7勝7敗 | ||
2016 | 和田毅(ソフトバンク) | 0.00 | 1勝0敗 | 3.04 | 15勝5敗 | ||
2017 | 田口麗斗(巨人) | 0.90 | 1勝0敗 | 3.01 | 13勝4敗 |
2016年の和田投手は大リーグ*10から復帰した年であったが、オープン戦から終始安定した投球を続け、渡米前と変わらぬ実力を示した。
田口投手もオープン戦での0・90の防御率を引っ提げて開幕を迎える。菅野智之投手やマイルズ・マイコラス投手との先発3本柱を形成し、13勝を挙げる大活躍をした。田口投手は2016年のオープン戦でも0・87の結果を残している。そこから一軍の先発ローテーション入りの足掛かりを得て順調に成長し、昨年は主力投手へと大きく進化を遂げた。オープン戦で結果を残し、一軍の好機到来を見事につかみ取った好例の一つだ。
国吉投手とレイノルズ投手を除き、その他の投手も一軍に帯同し、先発や中継ぎを中心にそれ相応にチームに貢献した見方ができる。
これらから打者よりも投手の方がオープン戦の成績と公式戦の成績が比例する傾向にあると考えられる。投手はある程度の登板間隔がある。そのため、毎試合に出場して結果を求めていかなければならない打者と異なり、疲労や精神の状態を回復する時間を持ちやすい。こうした条件も好影響だと考えられる。
まとめ
オープン戦の打者・投手共に1位の成績を比較してみたが、投手の方がシーズンに入っても安定した成績を残すようだ。
一方、実績のある打者を除き、オープン戦での成績をシーズン通して保ち続けた選手は実に少ない。この傾向から打者は調子を落としやすく浮き沈みが激しいの分かる。まさに「打線は水物」である。
投手こそ状態の維持が難しいように思われがちだが、打者よりもなだらかに調子の波が変化することも読み取れる。
この考察が正しいならば、オープン戦の投手成績は信用度が高く、公式戦においても計算ができる。しかし、打者に関してはオープン戦の成績はいくつもある物差しの一つに過ぎない。従って、開幕直前の状態が重要であり、各選手の調子の波を再確認した上で起用しなければならない。そこに若手の将来性やベテラン*11の実績がどのように加味されるかだろう。
いずれにせよ、監督・コーチ陣が選手を見極める目が試されるのは間違いない。今年のオープン戦で好成績を収める選手は若手かベテランか。そして、開幕オーダー*12に名を連ね、一大飛躍を遂げるのは誰だろうか。
「オープン戦のジンクス*13」を蹴散らす選手と「オープン戦の実績」の威光を放つ投手のがっぷり四つの戦いに注目だ。
スポンサーリンク
*1:プロ野球などの非公式試合。オープンゲーム。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*2:【regular】正式の成員(会員など)。正選手。常連。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*3:【Pacific League】日本のプロ野球リーグの一つで6球団が所属。1949年に太平洋野球連盟として結成。80年パシフィック野球連盟と改称。略称パ‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*4:【camp】スポーツ選手などの練習のための合宿。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*5:【third】(サードベースの略)野球で、三塁。また、三塁手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*6:【team】二組以上に分かれて行う競技のそれぞれの組。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*7:【助っ人】加勢をする人。手助けする人。すけて。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*8:【pitcher】野球で、打者にボールを投げる人。投手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*9:【rotation】(回転・循環の意)野球で、先発投手の順番を決めて起用すること。また、その順序。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*10:(major league)アメリカ二大プロ野球リーグのこと。アメリカン‐リーグとナショナル‐リーグで構成。メジャー‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*11:【veteran(イギリス)・vétéran(フランス)】その方面について経験豊富な人。老練な人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*12:【order】順序。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)
*13:【jinx(アメリカ)】縁起の悪いもの。また、広く、因縁があるように思われる事柄。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)