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日本とイタリアの国民車?N-BOXとFIAT 500を比較!

ホンダ・N-BOXとN-BOXカスタム

新型ホンダ・N-BOX(エヌボックス)が再び好調な売れ行きだ。今や国内で一番人気である。一方、FIAT 500(フィアット チンクエチェント)も2017年は過去最大の販売台数を記録したそうだ。「国民車」という共通点があるN-BOXとFIAT 500を比較しよう。

2018年3月29日:用字用語の整理。

日本と欧州で小型車の代表格N-BOXとFIAT 500

街にたたずむ前方から見た黄色のFIAT 500

日本国内ではミニバン*1型が1993年あたりを境に人気を博すようになった。軽自動車*2クラスにおいても、新型N-BOXのように背の高いミニバン型が大半を占めている。日本では見慣れてしまった大小そろったミニバン型だが、これは日本特有の現象でもある。欧州において小型車は依然ハッチバック*3型が一般的で、FIAT 500とPanda(パンダ)がその30%を占めているそうだ。

N-BOXは2011年の発売以来、至大な人気となっている。2017年9月には初のフル*4モデルチェンジ*5が行なわれ、2代目となった。2017年における販売台数も軽自動車で1位であることに加えて、登録車のトヨタ・プリウスやトヨタ・アクアをも抑えて、堂々と日本一になった結果が先日発表された。現代の国民車として存在感を増してきたN-BOXである。

一方、FIAT 500は日本においては軽自動車であるN-BOXよりも一段階上の存在である。しかし、欧州では「Aセグメント*6」と称される最も小さい小型車に分類される。これは2輪車において、欧州では125cc*7前後のオートバイ*8が最小であるのに対し、日本では50cc原付*91種がこれに該当するのと似ている。

日本の原付1種オートバイは、1人しか乗れない。また、二段階右折、時速30キロの制限速度などが現状にそぐわなくなっており、その人気は125cc前後の原付2種に移りつつある。ガラパゴス化*10の象徴ともなっている50ccオートバイは唯一の日本国内の需要をも失い、その存続も危ぶまれている。将来的には、日本の原付1種も125cc前後に置き換わるのではないだろうか。

閑話休題。次項では原付1種とは異なり、利点の多い「軽自動車」という視点から、話題を進めていきたい。

新型N-BOXとFIAT 500の新車購入価格

前方から見た白色の1972年度版ホンダ・ライフステップバン

いろいろと制約の多い原付1種オートバイであるが、軽自動車の場合は登録車に比べて不利な点は皆無と言ってよい。2000年以前は軽自動車の高速道路での制限速度は時速80キロ以下であったが、これも時速100キロに改定されている。

元来軽自動車は1955年の通商産業省*11が考案した「国民車構想」までさかのぼる。まだ貧しさを残していた戦後復興期に、国民の手が届きやすい自動車を創出することを目的に誕生した経緯がある。この360cc規格の下、ホンダが1972年から製造販売したライフ・ステップバンがある。N-BOXの直系のような存在であったが、時代を先取りし過ぎたせいか、販売面では芳しくなかったようである。

イタリアでも同じような状態から、2代目FIAT 500ことNUOVA 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)が誕生している。N-BOXとFIAT 500を比べるのは酷かもしれないが、それぞれの生い立ちを考えてみると、こういった共通点がある。

新型N-BOXは138万6000円~208万円までと、初代の119万8000円~185万9000円より大幅な値上げとなった。現代の国民車は手が届く最低限から、維持費などを抑えられ、車両自体は豪華なものが好まれるようになっている。

ここでは新型N-BOXの最人気グレード*12である「G・Lホンダセンシング(FF*13)」と、FIAT 500の新車購入総額を比較してみたい。FIAT 500は1・2Lと0・9Lツインエアで諸経費が異なる。従って、FIAT 500のグレードを比較検討されている方にもお役に立てるはずだ。

N-BOXとFIAT 500の新車購入総額の比較

  N-BOX G・L
ホンダセンシング(FF)
FIAT 500 1.2 Pop FIAT 500 ツインエア Pop
車両本体価格 1,388,000円 1,850,000円 2,150,000円
消費税込み車両価格 10,800円 34,500円 29,500円
自動車税(12カ月分) 1,499,040円 1,998,000円 2,322,000円
取得税(購入時のみ) 14,900円
※40%減税対象
33,300円 38,700円
重量税(36カ月分) 3,700円
※50%減税対象
24,600円 36,900円
自賠責保険(37カ月分) 35,610円 36,780円 36,780円
諸費用総額 29,400円 129,180円 141,880円
車両含む総額 1,528,640円 2,127,180円 2,463,880円

今や軽自動車は新車価格も高くなってきているが、登録時に印鑑証明を必要としないように、法的には財産として扱われない。「諸費用総額」を見ていただくと分かるように、N-BOXの諸費用総額はFIAT 500より断然安く、税制面でも優遇されている。特に「エコカー*14減税」が適用されるため、新車購入時の諸費用はFIAT 500の3分の1以下で済む。

FIAT 500同士を見比べても、1・2Lは重量が990キロと1トンを若干切っていること。0・9Lツインエアは1・0L以下であることから、両者に諸費用の違いが出ている。ちなみにどちらも減税対象とはなっていない。

ただし、上記の計算表はオプション*15を一切含まないものである。そのため、登録代行料や手数料は別途かかることなどをご了承いただきたい。

潔さを感じるFIAT 500と苦心をにじませるN-BOX

サーキットを疾走する斜め前方から見た白色のFIAT 500

新型N-BOXは魅力を増強すべく、プラットフォーム*16から一新され、ボルト・ナットなど以外は全て刷新されたようだ。質感の向上、助手席を570ミリもスライド*17できるスーパースライドシートの採用、後部荷室扉を極限まで薄くして室内空間をさらに広げた。これらが現在の軽自動車の特徴だ。つまり、かゆいところに手が届く利便性や狭小で安っぽいという軽自動車の先入観を全く感じさせないのが売りである。

N-BOXはそれ以外にも、新型エンジンS07B、自然吸気エンジンであるNA車に低速トルクと高速の馬力を両立するVTECの採用、ターボ*18車設定、4WD*19車設定、安全運転支援システム・ホンダセンシングを全車標準装備、シート表皮にアレルギー*20やウイルス*21に対策を施したアレルクリーンプラスシート採用など、排気量の大きな車種に遜色がない技術と装備をこれでもかと搭載している。

より価格の高いFIAT 500であるが、新型N-BOXと比べると簡素にまとまっている印象だ。FIAT 500のウェブサイト*22からは優れたデザイン*23、衝突安全対応ボディー*24、普通のブレーキ*25、エアバッグ*26くらいしか大々的に宣伝されていない。室内も新型N-BOXの方が広々しているのは一目瞭然で、使い勝手も良さそうだ。

FIAT 500は往年のデザインを復活させたことが世界中で人気を博した第一の要因である。その証拠がFFになったことや当初は古くからあるFireエンジンしか搭載されていなかったことだ。つまり、先代のNUOVA 500に機械装置面で通ずるところは何一つなかったのだ。

軽自動車は660ccとなった際、さらにもう1回外寸が大きくなっている。550cc時代と比べると長さで20センチ、幅で8センチの拡大となる。元々小さいだけに、大きくなった影響は多分にある。冷静に分析すると、1998年に660ccのまま外寸が大きくなった分だけ重くなったため、軽自動車の動力性能は明らかに退化していた。だから、550ccの軽ボンバンこと軽ボンネットバンの方が、この規格のミニバンより速いはずだ。

売れに売れたN-BOXは2代目ではその記録を塗り替える命題を背負っていた。そのため、デザインは人々が見慣れ、いまだ人気のある先代のものを踏襲した。軽量化も実施されたが、上級グレードでは1トンを超える。FIAT 500と同じ重量である。わずか6年でエンジンを作り替えたのも、極論すれば動力性能向上と好燃費をなんとかこの車重で両立させるためであろう。軽自動車の660cc自体が「ダウンサイジング*27」エンジンであり非常に優れているが、今も相対的な苦心を続けている。

まとめ

斜め前方から見た白色のホンダ・N-BOX

車を運転するとき、同乗者に誰を乗せているかで、その気分も大いに変わってくる。真一文字に口を結んだ上司を乗せていると息も詰まりそうになる。片や好きな人を乗せていると、いつもよりおおらかな気分になる。

車を擬人化して例えるならば、FIAT 500は2気筒のツインエアのぎこちなくもある音をぽんぽんと響かせながら、「車ってこんなもんよ」と語り掛けてくる。ハンドルを握りながら「そうだよね」と相づちを打ちたくなるおうようさがあるのだ。

一方、新型N-BOXは室内は広やかで豪華装備なのはいいのだが、「もっと速ければなあ」「他車にはあれも付く」などと、ついつい更なる欲望が涌き立ってしまう。

やや誇張した感は否めないが、国民車へ「求め過ぎ」ている時流のためだろう。軽自動車の動力性能への不満は消費者も以前より感じている。しかし、税制面での優遇を加味すると、走りは捨てているのが現状であろう。

FIAT 500に相当する軽自動車の最適品はスズキ・アルト、ダイハツ・ミライースといった総合的な釣り合いにたけている「軽ボンバン」である。これが真相だが、一度回り始めてしまった風潮という名の車輪は簡単に止まらない。

もしFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)社がNUOVA 500の外寸にならって、日本の軽規格に沿うFIAT 500を登場させたなら、瞬く間に国産軽自動車は駆逐されてしまう気がするのは私だけだろうか。

車の短所をしらみ潰しにするのではなく、突出した個性に夢中にさせられる。そんな国産車に「そうだよね」と言う日が待ち遠しい。

(出典:本田技研工業株式会社Fiat Chrysler Automobiles

*1:【minivan】貨物兼用の箱型の乗用車。ステーション-ワゴンより少し大きなものをいう。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:道路運送車両法による自動車の種別の一つ。ふつう総排気量0.660リットル以下で、長さ・幅・高さがそれぞれ3.40メートル、1.48メートル、2.00メートル以下のもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【hatchback】乗用車のボディー‐スタイルの一つ。車体後部にはね上げ式のドアが付いているもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【full】いっぱいであるさま。全部。十分。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:(和製語 model change)商品のデザインや性能を変えること。型式を変更すること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【segment】分節。区分。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:(cubic centimetre)立方センチメートルを表す記号。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:(和製語)発動機をそなえた二輪車。自動二輪車。単車。バイク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:原動機付自転車の略。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:日本の技術やサービスが国内市場で独自かつ高度に発展したため,国際市場ではかえってニーズに合わず,競争力を失ってしまうこと。携帯電話業界などについていわれる。ガラパゴス現象。〔ガラパゴス諸島で独自進化した固有種が,外来生物の侵入により絶滅危機にさらされている様子から〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:通商貿易・度量衡・資源・工業所有権などに関する行政機関。略称、通産省。1949年までは商工省と称した。2001年経済産業省となる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【grade】等級。段階。品等。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:(front engine front drive)自動車で、車体前部にエンジンを置き、前輪を駆動する方式。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:(和製語 eco car)低燃費・低公害車の通称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【option】機械製品などの購入時に、追加で注文する付属品やサービス。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【platform】自動車生産で,異なった車種の間で共通に用いる車台。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:【slide】滑ること。滑らせること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【turbo】過給器の一種。排ガスのエネルギーを利用する過給器。排気タービン過給器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:(4 wheel drive)前後4輪すべてに駆動力を配分する構造。また、その機構を持つ自動車。高速走行・悪路走行に適する。四駆(よんく)。四輪駆動。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:【Allergie(ドイツ)】抗原として働く物質の注射・摂取により抗体を生じ、抗原抗体反応をおこす結果、抗原となった物質に対する生体の反応が変わる現象。広義には免疫すなわち抗原の害作用への抵抗の増大も含まれるが、狭義には反応の変化の結果傷害的な過敏症状を呈するものをいい、アナフィラキシー型・細胞傷害型・免疫複合体型などの5型に分かれる。1906年オーストリアの小児科医ピルケ(C. Pirquet1874~1929)の命名。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*21:【virus(ラテン)】遺伝情報を荷う核酸(DNAまたはRNA)とそれを囲む蛋白殻(カプシド)から成る微粒子。蛋白・脂肪・糖質を含む外被(エンベロープ)を持つものもある。大きさ20~300ナノメートル。それぞれのウイルスに特異な宿主細胞に寄生し、その蛋白合成やエネルギーを利用して増殖し、それに伴い細胞障害・細胞増殖あるいは宿主生物に種々の疾病を起こす。宿主と種類により動物ウイルス・植物ウイルス・昆虫ウイルス・細菌ウイルス(バクテリオファージ)に大別。人や動植物の病原体。濾過性病原体。バイラス。ビールス。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*22:【web site】関連のある一連のウェブページがまとまって置かれている、インターネット上での場所。WWWサイト。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*23:【design】意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*24:【body】車体。機体。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*25:【brake】車両その他機械装置の速度・回転速度などを抑えるための装置。手動ブレーキ・真空ブレーキ・空気ブレーキなどがある。制動機。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*26:【air bag】自動車が衝突した際、自動的にふくらみ、運転者などを衝撃から守る緩衝用の空気袋。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*27:【downsizing】規模を縮小すること。小型化すること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)