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日本ではあり得ない!大リーガーの特殊な契約とは?

契約書にサインをするスーツ姿の男性

大リーグの選手契約には、実に多岐にわたり報酬事項が盛り込まれている。ただ、その恩恵にあずかれるのは、ほんの一握り著名な選手のみである。日本ではおよそ聞かれない、米国ならではの「驚きの契約」に触れてみたい。

2017年10月24日:用字用語の整理。

ニューヨーク・ヤンキース田中将大選手の契約内容

田中選手は、東北楽天ゴールデンイーグルスに所属した2013年に24勝0敗1セーブ、防御率1・27という空前の成績を残し、ヤンキースと契約を結んだ。

その際の契約金は7年総額1億5500万ドル(約163億円)という破格の金額であった。年俸23億円、日給にすれば630万円、さらに1球あたりでいえば6万円となる計算だ。

金額だけでも想像を絶するのだが、田中選手は1年目から実力を認められ、既に大リーグ*1の他に勝って格段の人気と注目を有する選手のみが締結できる「特別事項」が契約に組み入れられている。

まずはオプトアウト条項。これは契約途中でも、選手の意志で破棄ができるというもの。田中選手はヤンキースと7年契約を結んでいるため、たとえ成績があまり芳しくなくても年俸が23億から変動することはない。

しかし、シーズンで活躍し、現状を上回る好条件の契約を提示する他球団が現れたとしよう。その場合は契約途中で破棄し、より好条件の球団へ移籍が可能になるのだ。

また、田中選手はトレードの拒否権も持っている。多くの選手は一部の球団に対してのみトレードを拒否できる契約を取り結んでいる。しかし、田中選手の場合は全球団に対して断ることができる条件となっている。

仮にトレードを打診されたとしても、プレーオフ*2への進出の可能性や戦力状況などを鑑みて、去就を自身で決することができる。

さらに細部にわたって見ていくと、日本からの引越し費用や家賃、通訳の費用も球団側が負担する内容になっている。また、日本と米国を移動するファーストクラス*3航空券も用意される。いずれも田中選手の唯一無二の実力が勝ち取った、極めて選手に有利な契約内容と言えよう。

ロサンゼルス・ドジャース前田健太選手の契約内容

前田選手は契約前に受ける医療的診断において右肘の異常が発見されたため、損害を受ける可能性を軽減したい球団が出来高払いを重視した契約内容となった。

8年総額2500万ドル(約28億円)、年俸では約3億6000万円と、広島東洋カープ時代の年俸3億円とどっこいどっこいの金額である。

ただ、前田選手の場合は活躍に応じた出来高払いの項目が多い。

  • 投球回数
    90イニング*4が下限となり、それ以降は投球回数が10イニング増えるごとに25万ドル(約2800万円)が加算されていき、満額で300万ドル(約3億4000万円)。
  • 先発回数
    先発回数が15回、20回、25回、30回、32回となった時点で100万ドル(約1億1000万円)がその都度加算される。満額で500万ドル(約5億6000万円)。

しかし、先に挙げたオプトアウト条項が無く、「奴隷契約」などとやゆされた。

ご存じのように前田選手は1年目からチームに貢献し、出来高払いの項目を次々と達成した。そして、最終的には年俸約11億円を獲得するに至ったが、契約としては足下を見られた手厳しい内容であったと言えよう。

メジャーリーグ選手の移動や遠征先の好待遇

契約内容の他にも、メジャーリーガーになれば移動や遠征先の待遇も一流となる。移動は基本的に球団が手配したチャーター*5機に乗り込む。もちろん貸し切りのため、一般の客と同乗することはない。しかも、面倒な搭乗手続きも、試合後に球場まで担当者が手配される好待遇だ。さらに、空港に向かうバスはチャーター機に横付けするだけでない。通り道で渋滞が予想される場合は警察が先導するため、渋滞知らずなのだ。

遠征先は5段階評価で4つ星または5つ星の高級ホテルのみだ。また、「宿泊はスイートルーム」の契約をしている選手もいる。スーツケース*6はベルボーイ*7によって部屋に運ばれているため、選手はルームキーを受け取るだけでよい。

一方、マイナーリーグ*8は過酷ともいえる環境であるが、メジャー契約を果たせば比類なき待遇が待っている。

まとめ

大リーグでは成績を残した選手に破格の好条件が待っている。このことは大リーガーを目指す選手たちの「確固たる動機」になるはずだ。

特にヤンキースはメディア*9や熱狂的なファンからの重圧がきつく、時には辛辣(しんらつ)な意見が飛び交うことで有名だ。田中選手がヤンキースと契約した際に、取り巻く事情をよく知る先輩のイチロー選手は次のように述べた。

どんなオファーを提示したか、ということよりも、このオファーを受けたことへの覚悟と自信に敬意が払われるべきだろう

しかし、その対価として得られる契約はまさにアメリカンドリーム*10そのもので、日本プロ野球とは雲泥の差だ。

世界で随一の場所である大リーグで「野球人」として己を試したい気持ちが一番ではないだろうか。さらに、結果を出せば莫大(ばくだい)な評価がなされることも、大いにやりがいを感じるはずだ。

ただ、野球ファンとして日本プロ野球から見応えのある選手たちが大リーグに移籍するのは、うれしさと寂しさが錯綜(さくそう)しているのも事実だ。野球日本代表の一員として刀をバットやボールに持ち替え、海を渡った侍たちが「江戸の五輪」で華々しく活躍する姿を目にしたい。

*1:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【play-off】通常のリーグ戦終了後に行われる上位チームによる優勝決定戦。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【first class】航空機・客船などで,設備・サービスの最もよい席。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【inning】野球で,両チームが攻撃と守備とを一度ずつ行う区分。インニング。回。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【charter】船・飛行機・バスなどを借り切ること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【suitcase】(洋服などを入れて運ぶ)旅行用のかばん。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【bellboy】ホテルのボーイ。主に玄関から客室まで,利用客の荷物運搬などの接待をする男性。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【minor league】アメリカのプロ野球で,大リーグの下位の連盟の総称。AAA(スリー A )・ AA(ツー A )・ A ・ルーキーの四階級に分かれる。小リーグ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【media】手段。方法。媒体。特に,新聞・テレビ・ラジオなどの情報媒体。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【American dream】 民主主義・自由・平等といった,アメリカ建国以来の理想。また,その理想を体現するアメリカの文化・社会。転じて,経済的・社会的な成功。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)