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岡本和真選手に秘めた可能性?待望の生え抜き長距離砲!

グランドに置かれた野球のバット

まだ序盤戦とはいえ、セ・リーグで好調を維持する読売巨人。その要因の一つは岡本和真選手に代表される若手野手の活躍が挙げられるだろう。待ち焦がれた「右の大砲」の岡本選手はチームを背負って立つ存在となり得るのだろうか。

鍵を握るケーシー・マギー選手の存在

昨季は7番レフト*1で開幕スタメン*2を果たした岡本選手であったが調子を落としてしまい、あえなく二軍落ち。二軍ではレフトとサード*3を中心に出場して経験を積んできた。

それらの経緯と今季からレフトにアレックス・ゲレーロ選手が中日ドラゴンズから移籍してきたこともあり、春のキャンプ*4ではサードの守備位置争いがマギー選手と繰り広げると予想された。しかし、首脳陣はサードをマギー選手、ファースト*5を岡本選手として阿部慎之助選手と競わせる選択をしたのだ。その判断の裏には井端弘和内野守備走塁コーチ*6の存在があった。

「岡本の一塁守備がかなりうまくなっているんですよ。結果的に守備がうまくなったこともバッティングに好影響を与えているのは確実だと思いますよ」

(出典:msn

今季のオープン戦*7には全試合に出場し、打率2割6部7厘、4本塁打、15打点の結果を残した。けちのつけようがない成績によって開幕6番ファーストの座をつかみ取ったのだ。井端コーチの意向通り、守備に不安を抱えながらサードを守るよりも打撃に集中できるファーストでの起用が功を奏したといえよう。

岡本選手は開幕してからも好調の波に乗り、チームの勝利をけん引する存在に成長しつつある。しかし、今後の活躍を占う一つの要素としてサードを守るマギー選手が関係しているはずだ。昨季のチーム三冠王の存在感は揺るぎないが、本調子とは言い難い。もし故障や不調を極めてスタメンを外れるようなことがあれば、岡本選手がサードを守る状況も出てくるだろう。ところが、井端コーチはファーストの守備位置が打撃での活躍に与える影響が少ないとにらんでいる。

つまり、大いに振るった打棒を下支えしてきた「守備位置」と言う名の土台が、もろくも崩れ去ってしまう危険をはらんでいるわけだ。もちろん将来的には不動のサードになることを首脳陣も期待しているだろう。しかし、ここまで順調に結果を残しているだけに、今季に限ってはなるべくファーストに専念させるのも良策ではないだろうか。

他球団に目を移すと、昨季守備的負荷が大きいショート*8からサードにコンバート*9されたのは阪神タイガースの鳥谷敬選手だ。セ・リーグ*10で一位となる出塁率を残し、ゴールデングラブ賞*11も取得した。ところが、せっかく結果を残したにもかかわらず、サードからセカンド*12に再コンバートされ、今季は1割台を低空飛行するありさまだ。守備位置の変更が一因となり、不調に陥った悪例である。

すなわち、岡本選手の活躍にはマギー選手の好不調も密接に結び付いていることを忘れるべきではなさそうだ。この両輪がしっかり機能したとき、「巨人号」は加速して独走態勢に入る可能性すらある。一方、マギー選手が「脱輪」するようなことがあれば、たちまち失速しまう懸念もあるのだ。

岡本選手の前後の打者が重要

打順については岡本選手本人の状態もさることながらチーム事情にも大きく左右されるため、ゲレーロ選手の前後を打ったり、下位打線を打ったりと今後も適宜変動することが予想される。

5月に入ってからもセ・リーグ一位のチーム打率を残している巨人。岡本選手の育成だけにピント*13を合わせるなら、とりわけ前後の打者がどれだけ彼の負担を軽減し、打席に向かわせられるかが重点となるだろう。

現実的ではないが前の打者が走者を残して凡退し、岡本選手頼みになるのはなるべくなら避けたい。また、後ろの打者が打撃不振なら、たとえ岡本選手が絶好調だとしても、真っ向勝負を避けてフォアボール*14を視野入れたボール*15球中心の配球が増えてくる。特に駆け出しの選手は結果欲しさから「打ちたい打ちたい」が先行してしまい、そこから調子を崩す場合も決して少なくない。だから、岡本選手の前後を打つ「成長請負人」の存在が重要になってくるのだ。

現時点ではマギー選手も絶不調の谷底まで落ちておらず、亀井義行選手や長野久義選手も比較的安定した成績を残して打順に名を連ねているため、不安はそこまで大きくない。しかし、一度彼らがスランプ*16に陥ってしまった場合、打順の入れ替えで活路を見いだすのか、他の選手に替えるのかの決断がなされる。

すなわち、前後を打つことが多い「頼みの綱」が切れてしまったことにより、岡本選手の打席に立つ環境も激変してしまう怖さがある。無論近未来の中軸を打つべき有望株だから、いつかは乗り越えなくてはならない障壁だ。しかし、ようやく一定して試合出場できるところまで駒を進めただけに、高橋由伸監督が「旅をさせよ」と厳命を下すかも見どころの一つである。

吉川尚輝選手の存在意義

昨季は一軍に同世代の野手がおらず、ベテラン*17勢に囲まれ孤立することが多かった。加えて、結果を求める焦燥感から不振に陥り、早々に二軍落ちの憂き目にあった。

今季は春のキャンプからレギュラー争いを勝ち抜いた吉川選手がいることも大きい。昨年から実力を買われ、年齢が近いだけでなく守備位置もファーストとセカンドとで隣でもある。吉川選手も開幕スタメンを勝ち取り、スランプのない守備力と走力を武器に年間通じての活躍が求められている。

お互いに好敵手として刺激し合い、鼓舞された側面もあるはずだ。長い公式戦中には当然打撃不振にあえぐこともあれば、走塁や守備で失策を仕出かすこともある。なぜならば、野球は失敗が付き物であり、完璧が存在しないスポーツ*18だからだ。その山谷をどう乗り越えていくのかに注目だ。二人の成績は二の次として、1年間レギュラーを勤め上げたときが花形選手誕生の瞬間になるだろう。

まとめ

巨人生え抜きの右の大砲を振り返れば、原辰徳選手以来となる。候補が現れては消えていった歴史に、終止符を打つのが岡本選手となるだろうか。まだ開幕してから1カ月足らずのため、花形選手の太鼓判を押すのは早計かもしれない。

しかし、長打と巧打を併せ持つ才能は比類を見ないのも確かだ。かつての原監督は小笠原道大選手やアレックス・ラミレス選手を獲得し、若手に精神的な重圧がかからない環境を作り上げ、坂本勇人選手を育て上げた。今季も昨年本塁打王のゲレーロ選手を獲得することで、吉川選手や岡本選手の前後を実績のある選手たちが固め、成長を促すには持って来いだ。

そして、二人が1年間レギュラーとして戦い抜いたとき、常勝巨人が長い眠りから覚めるに違いない。

*1:(left field; left fielder)野球で、左翼。また、左翼手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【starting member】試合開始時の出場選手。先発メンバー。スタ‐メン。スターティング‐ライン‐アップ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【third】(サードベースの略)野球で、三塁。また、三塁手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【camp】スポーツ選手などの練習のための合宿。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【first】(ファースト‐ベースの略)野球で、一塁。また、一塁手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【coach】競技の技術や戦術などを指導すること。また、それをする人。コーチャー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:プロ野球などの非公式試合。オープンゲーム。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【遊撃手】野球で、二塁と三塁との間を守る内野手。ショート‐ストップ。ショート。

*9:【convert】(「変換する」の意)野球で、選手の専門のポジションを転向させること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【Central League】日本のプロ野球リーグの一つで、6球団が所属。1949年結成。正式にはセントラル野球連盟。略称セ‐リーグ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:(和製語 Golden Glove Award)日本のプロ野球で、守備に優れた選手に贈られる賞。5年以上の経験を持つ記者の投票により、各守備位置1人ずつでセ・パ両リーグからそれぞれ9人選出される。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【second】(セカンド‐ベースの略)野球で、二塁。また、二塁手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:(brandpunt(オランダ)の略訛)レンズの焦点。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:(和製語)野球で、投手が打者に対して、1打席中にストライクでないボールを4個与えること。打者は一塁に進むことができる。四球。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【ball】野球で、ストライクにならない投球。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【slump】心身の調子が一時的に出なくなる状態。不調。不振。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:【veteran(イギリス)・vétéran(フランス)】その方面について経験豊富な人。老練な人。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【sport(s)】陸上競技・野球・テニス・水泳・ボートレースなどから登山・狩猟などにいたるまで、遊戯・競争・肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)