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次世代の読売ジャイアンツをけん引すべき注目の選手たち

読売ジャイアンツの本拠地である東京ドーム

長らく貢献してきた村田修一選手を放出し、若手育成へと方針転換を図った巨人。マイルズ・マイコラス投手も大リーグへ復帰し、まさに新旧交代の時代を迎えようとしている。その中で定位置を奪うであろう期待の若手選手たちを探ってみたい。

若手台頭が急務である野手陣

今季のレギュラー*1格では阿部慎之助選手が38歳、長野久義選手は33歳、亀井善行選手が34歳と古株の目立つ野手陣となった。クライマックスシリーズ*2出場を初めて逸し、若手が台頭する広島東洋カープや横浜DeNAベイスターズに圧倒される形で、是非も無しに若手育成へ舵を切らざるを得ない巨人の現状がある。

将来「巨人の4番」を背負う器

チームを見渡してみれば、レギュラーの中で20代の野手は坂本勇人選手(29歳)と小林誠司選手(28歳)のみという状況である。衰えの見え始めたベテランたちを押しのけて、定位置奪取が期待されるのは来年4年目を迎える岡本和真選手が筆頭だろう。

新人の年にプロ入り初ホームランを放ち、直近からの活躍が嘱望されたものの、伸び悩みから定位置確保までには至っていない。なかなか打撃フォーム*3が固まらず、悩みを抱えながら打席に立つことが続いているようだ。本人も「村田選手の後釜に座るのは自分だ」と意気込みは十二分にあるが、数少ない好機に結果を出そうとするあまり、焦りが悪循環を巻き起こしているようだ。

同時に守備位置についてもサード*4とレフト*5がどっち付かずになってしまっており、守備に不安のある選手だけに、一つの守備位置で落ち着いて習練する必要があるはずだ。

今季途中から内田順三二軍監督に変わってからは、4番レフトに固定され、同監督に「ゲッツー*6でも構わないから思い切って振っていけ」との助言を受けてから、後半戦は調子を上げて今季を終えている。固定した守備位置で我慢強く起用し続ければ、巨人の中心打者になり得る素質があるのは言うまでもない。巨人の若手を待望するファンにとっては高橋由伸監督の英断に期待したいところだろう。

若手で最もレギュラーに近い男?

次に期待されるのは2016年のドラフト*71位吉川尚輝選手だ。ドラフト会議では今年の新人王である中日ドラゴンズの京田陽太選手や西武ライオンズの源田壮亮選手を抑えて、野手の第一人者との呼び声も高かった。

迎えた春季キャンプ*8では右肩の不調や体力面での課題が見られ、大きく出遅れてしまう。今季半ばまで二軍でも結果が残せなかったが、体調が戻り、プロ野球の水になれてきた後半戦は4本塁打を記録するなど長打力のある打撃を見せた。元来定評のあった守備力と抜群の機動力は阿部選手をして「あいつはものが違う」と言わしめるほどだ。二軍では既に一際目立つ存在であり、素材は間違いなく一級品だ。レギュラー奪取という点においては吉川尚輝選手が最右翼なのかもしれない。

トレードの目玉は吉川光夫投手だけにあらず

外野手のレギュラーに期待したいのは、2016年のオフシーズンの11月2日に吉川光夫投手と日本ハムファイターズからトレードでやって来た石川慎吾選手だ。今季は年間通じて一軍に定着し、打率2割4分2厘、5本塁打と自己最高成績を残した。

課題は右投手であろう。左投手との対戦打率は3割2厘に対して、右投手は2割9厘と大きな差がある。

  • 左投手に対する打率:.302
  • 右投手に対する打率:.209

加えて、打球の方向にも興味深いデータが残っている。ライト方面は4割5分1厘、3本塁打であるが、レフト方面は1割8分2厘、2本塁打、センター方面に1割9分1厘、0本塁打である。

  打率 本塁打
ライト方面 .451 3本塁打
レフト方面 .182 2本塁打
センター方面 .191 0本塁打

球種別では変化球はほぼ2割4分の打率であるのに対し、ストレートの打率が2割5厘と低くなっている。しかも、あまり参考にならない10打数以下の変化球を除外すれば2割7分に跳ね上がる。

  • 変化球に対する打率:.270
  • 直球に対する打率:.205

つまり、これらの情報から左投手の変化球に対しては右方向に巧打できるが、右投手の力ある直球には力負けしている傾向が見て取れる。石川選手といえば「豪快な振り」が代名詞であるだけに、陽岱鋼選手や長野選手を脅かすには地力を付けて、強振してレフト方面に飛ばせるようになったときであろう。

守備には定評のある石川選手だけに、打撃面で一皮むければ、外野手のレギュラー陣と肩を並べられるはずだ。

先発3本柱に続く期待の若手投手たち

投手陣はマイコラス投手の大リーグ復帰が痛恨事ではあるが、来季は17勝を挙げた菅野智之投手と13勝の田口麗斗投手、ここに新人ながら6勝を挙げた畠世周投手の3人が中心となるはずだ。

そして、埼玉西武ライオンズからフリーエージェント*9で移籍した野上亮磨投手が先発ローテーション*10の一角を担うことが予想される。この後に続く投手が来季の最重点課題になるだろう。

二軍での成績は抜群の投手

ローテーションに割って入ることが期待される若手一番手は今村信貴投手だ。一軍では0勝2敗ながら二軍で9勝4敗、防御率2.45の好成績を残している。力でぐいぐい押していく投手ではなく、制球力と球の切れで勝負する類いである。毎年二軍では安定した成績を残しており、一軍での飛躍が期待されているものの、近年「もうひと伸び」に悩む左腕だ。

重要な箇所はやはり「制球力」になってくるだろう。一軍の登板では痛打を浴びてしまったが、右打者の内角にしっかり投げられたボールや低めに制球された投球は被安打率はゼロである。ボールが先行してしまい、安易にストライクを取りに行った球や勝負球が甘く入ったところを打たれる場面が目立った。一軍で結果を出して自信さえ付ければ、飛躍的に成績を伸ばす可能性を秘めた投手である。

20歳未満の今後が楽しみな投手たち

そこに続くのが「即刻一軍」には時間がかかりそうだが、いずれ一軍に上がり、活躍が予想される大江竜聖投手と高田萌生投手の19歳投手だ。

大江投手は高卒1年目ながら二軍で4勝3敗、防御率2.30の好成績を残した。直球に力があり、落差のあるカーブを織り交ぜた攻める投球が持ち味の左腕だ。まだ新人のため、登板時の投球数は80球~90球に制限されていたが、実力は二軍首脳陣にも高く評価されている。長いイニング*11を投げられる体力さえできれば、一軍はそう遠くないかもしれない。

同じく高卒の新人である高田投手は今季は主に体力作りと3軍戦での登板が中心であった。しっかり指にかかった直球は140キロ後半を記録し、スライダー*12の切れも目を見張るものがあるが、その精度はまだまだ低い。しかし、度量のでかさでは頭一つ抜けており、将来が楽しみな右の本格派投手である。

制球力さえ底上げできれば大化けの可能性も

今年のドラフト会議で1位指名された中央大学の鍬原拓也投手も挙げておきたい。大学通算成績は11勝13敗、防御率3.38と際立った結果を残せていないが、回転の良い直球やスライダー、シンカー*13といった変化球にも定評があり、三振を奪える東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大投手と類似点も多い。

しかし、常時一軍で活躍するためには制球力に磨きをかける必要がある。力みからか抜けてしまう投球が目に付き、ストライクとボールがはっきりしてしまう傾向にある。打者の嫌がる一角に出し入れできる投球術さえ備われば、先発ローテーション入りも十分期待できる。

まとめ

本稿執筆前にフリーエージェントで巨人入りした野上投手の人的補償で高木勇人投手の西武への移籍が決定した。2015年には9勝を収め、来季の先発ローテーション争いに加わることが予測できる投手だった。そのため、人的補償の対象外とすることができる28人のプロテクト*14枠から外した球団フロント*15にもいささか疑問が残る。しかし、これを「絶好機」として捉え、若手投手が奮起してほしいところだ。

ここ数年の巨人は球団フロントとファン共に若手の躍進を望んでおり、若い選手の起用に対して「まれに見る追い風」が吹いている。高橋監督の大胆かつ我慢の選手起用が大いに待ち望まれているはずだ。

歴代の名将である長嶋茂雄監督や原辰徳前監督は出血覚悟で、未来のために松井秀喜氏や坂本勇人選手という超一流の選手を育て上げてきた。

高橋監督が不退転の決意で臨む来季の巨人。若手とベテランがうまく化学変化をすれば、文字通り「巨大な」台風の目になることは間違いなさそうだ。

*1:【regular】常に出場する選手。正選手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:〔和製語 climax+series〕プロ野球セパ両リーグで行う,日本シリーズ出場権を争う試合。ペナント戦の上位 3 球団が出場して,2 位・3 位球団が 3 回戦制で対戦,その勝者と 1 位球団(アドバンテージ 1 勝)が 6 回戦制で対戦する。ただし両リーグの優勝球団はペナント戦の勝率 1 位の球団とする。2007 年(平成 19)より実施。CS。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【form】動きの型。姿勢。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【third】野球で,三塁。また,三塁手。サード-ベース。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【left】〔left field〕野球で,左翼。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【get two】野球で,守備側の選手が,連続した動作で二人の走者,または打者と一人の走者をアウトにすること。併殺。重殺。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【draft】プロ野球で,新人選手に対する入団交渉権を,全球団で構成する選択会議で決めること。過当競争を避けるためのもの。また,その会議で選ばれて指名されること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【camp】スポーツ練習のための合宿。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【free agent】プロ野球などで,在籍期間などの一定の条件を充たし,所属チームとの契約を解消し,どのチームとも自由に契約を結ぶことができる選手。自由契約選手の権利を得た選手。FA。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【rotation】野球で,先発投手が登板する順序。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【inning】野球で,両チームが攻撃と守備とを一度ずつ行う区分。インニング。回。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【slider】野球で,投手の投げた腕と逆の方へ滑るように水平に曲がる変化球。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【sinker】野球で,打者の近くで急に沈むように落ちる変化球。球の回転が少なく,小さくストンと落ちる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【protect】守ること。保護すること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【front】プロ-スポーツチームの経営や管理にあたる首脳陣。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)