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読売ジャイアンツの再興!不可欠な出血覚悟の改革?

ベンチで出番を待つ選手

高橋由伸監督が就任し、来季は3年目を迎える。1年目は2位と健闘したものの、今季は4位とクライマックスシリーズ出場を初めて逃した。来季は契約最終年となり正念場を迎える。常勝を求められる歴史ある球団の巻き返し。それには若手起用が必須となるはずだ。

暗黒時代へ再度突入してしまうのか?

一言で片付けてしまうなら、2連覇を達成した広島東洋カープとの差は「攻撃力」にあったと言えるだろう。広島のチーム打率は・273、本塁打数は152本だったのに対して、巨人はチーム打率・249、本塁打数113本と大きく水をあけられている。

そこを機動力で補いたいところだったが、盗塁数でも広島が112で、巨人は56である。結果、総得点は200点の差がついてしまった。これでは勝ち目がない。ゲーム差16・5は必然であった。

広島と巨人の攻撃力の差(2017年)

  広島東洋カープ 読売ジャイアンツ
打率 .273 .249
本塁打 152 113
盗塁 112 56
得点 736 536

チーム防御率は広島3・39に対して巨人が3・31。総失点は36点差で広島の方が多い。つまり、広島は優勢な打撃力で若い投手陣を支えての優勝であったと判断できる。一方、巨人は投手陣の粘りはあったものの打者が援護できず、勝ち切れなかった感が否めない。

野手が点を取れないから、先に点をやれない精神的重圧がなおさら投手陣を追い込む形に陥ってしまった。正念場の9月に喫した6度の完封負けは今年のふがいない巨人を象徴する一場面であった。

広島と巨人の防御率と総失点の差(2017年)

  広島東洋カープ 読売ジャイアンツ
防御率 3.39 3.31
失点 540 504

阿部慎之助選手を代打起用

打撃陣の再生に向けて、球団は村田修一選手を自由契約とする大なたを振るい、若手への世代交代にかじを切った。これは守備位置を空けて若手を起用していく方針であると理解するならば、空いた三塁をケーシー・マギー選手に、やすやすと任せるようではその覚悟は軟弱と言わざるを得ない。

若手育成に打って出た以上はマギー選手を一塁へ、阿部慎之助選手を代打の切り札へと配置転換し、若返りを推し進めていくべきだ。

「読売ジャイアンツ」という伝統のある球団は常勝が「当たり前」と位置付けられている。育成だけに時間を費やし、悠長に種をまいていられないチーム事情もある。しかし、このままでは「勝負と育成」の両方とも失いかねない状況だ。

もし勝ちにもこだわるというのなら、今すぐ村田選手を呼び戻すべきだろう。彼との守備位置争いを勝ち抜いた選手を起用するのが、野球のみならずスポーツの競争原理だからだ。

そうでなければ、かつての原辰徳監督が当時2年目の坂本勇人選手を全試合我慢して起用し続けた。そして、今や球界を代表するショート*1に成長させたように、岡本和真選手や吉川尚輝選手らを年間通じて出場させるくらいの不退転の覚悟が必要なのではないか。

若手の育成を図りたいなら投手陣を補強すべし

今や両リーグで名実ともに最高位の投手となった菅野智之投手、マイルズ・マイコラス投手、田口麗斗投手の3本柱は全員20代であり、合わせて44勝を挙げた。

そこへ今季終盤に頭角を現した畠世周投手が加わり、先発投手の厚みは増した。先発投手陣の防御率3・26はセ・リーグ1位の成績である。

リリーフ*2陣に目を向けると、防御率は3・42。セ・リーグ3位とやや落ちる。対して広島は2・77。逆転勝ちの多かった広島とは対照的に、終盤での競り負けが目立った。

広島と巨人の先発投手陣とリリーフ陣の防御率の差(2017年)

  広島東洋カープ 読売ジャイアンツ
先発投手陣の防御率 3.71 3.26
リリーフ陣の防御率 2.77 3.42

しかし、その一方で新人の池田駿投手は33試合に登板。リリーフした31試合は防御率2・08と安定しており、来季は左のセットアッパー*3の1番手として期待できる。

また、6年目の右サイドスロー*4の田原誠次投手も年間での防御率は2・89。セパ交流戦*5で打ち込まれたことを除けば、セ・リーグとの対戦防御率は1・50の好成績である。来季も競った場面での起用が見込めそうだ。若手投手の成長に関しては、野手よりも比較的進んでいる。

しかし、最大の不安材料はマイコラス投手とスコット・マシソン投手の大リーグ*6復帰の可能性だろう。もし2人が抜けたなら、先発投手とリリーフ投手の大黒柱を失ってしまうことになる。そのときには順調に伸びてきている若手投手の負担を軽減し、成長を促す意味でもフリーエージェント*7や外国人投手の補強が、ここでこそ必要になってくるのではないだろうか。

求められる高橋監督の決断

そして、巨人再生の最大の鍵は言うまでもなく高橋監督が握っている。監督自身が世代交代の必要性は最も感じているはずである。実際、今季は小林誠司捕手を138試合に起用した。同じく捕手の宇佐美慎吾選手と競わせ、危機感もあおってきた。

フリーエージェントで獲得した陽岱鋼選手が、けがのため開幕に間に合わなかったこともあるが、立岡宗一郎選手や中井大介選手を開幕から我慢強く起用した。寡黙な高橋監督だが、若手育成への意思は采配から十二分に感じ取れた。

しかし、後半戦はクライマックスシリーズ*8争いもあり、マギー選手をセカンド*9に入れ村田選手をサード*10に起用する老練者重視の采配となってしまった。好機を与えられながら結果を残せなかった若手選手にも世代交代が進まない責任の一端はあるが、来季はさらなる若手起用の決断が高橋監督には迫られるはずだ。

球団フロント*11も世代交代を打ち出しており、ファンも若手の台頭を望んでいる。たとえ優勝争いから脱落するとしても、復活のための未来を見据えた選手起用が必要だ。

契約最終年となる3年目、高橋監督には巨人再生の足掛かりとなるチームの礎を築くことができるだろうか。その決断力を大いに期待したい。

まとめ

巨人はその常勝チームの宿命が故、フリーエージェントや外国人選手の補強によって戦力を補強し、優勝をつかみ取ってきた。

育成選手をはじめとする若手選手の活躍が目立った原監督時代でも、アレックス・ラミレス選手や小笠原道大選手といった補強があってこそ、我慢強く坂本選手や松本哲也選手を起用できた経緯もある。投手に関しても杉内俊哉投手やマシソン投手など積極的に獲得し、余裕がある状況での若手起用であった。

見事に期待を裏切った今季の「30億円補強」も、その観点からはあながち間違いではなかった。しかし、ここ数年の広島や横浜DeNAベイスターズの若手選手の躍進ぶりと、その両チームに敗れる形での今季4位の成績は球団に危機感を与え、方針転換を打ち出す要因となったはずだ。

功労者である村田選手の放出は賛否が分かれるとしても、思い切った球団の方針転換には今までにない鬼気迫るものを感じた。

巨人ファンも選手を引退してまで監督を引き受けた高橋監督に対しては、これまでの歴代監督にはない温かい目で見守っているようだ。そういった条件がそろった今こそが若手切り替えへの絶好機と言えよう。高橋監督には英断と出血の覚悟を求めたい。巨人が長い低迷期に陥らないためにも。

「巨人が強くなくては面白くない」と古参の野球ファンは異口同音につぶやいている。ジャビットが「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言ったかどうかは抜きにして。

*1:【short】野球で,遊撃手。ショートストップ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【relief】野球で,救援すること。また,救援投手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:〔アメリカではセットアップ-マン(setup man)〕野球で,七,八回に登板し抑え投手につなぐ中継ぎ投手のこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:〔和製語 side+throw〕野球で,ボールを横手から投げること。横手投げ。サイド-ハンド。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:日本のプロ野球で,セントラル-リーグとパシフィック-リーグの球団が対戦する試合のこと。プロ野球改革の一環として,2005 年(平成 17)から公式試合に取り入れられた。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【free agent】プロ野球などで,在籍期間などの一定の条件を充たし,所属チームとの契約を解消し,どのチームとも自由に契約を結ぶことができる選手。自由契約選手の権利を得た選手。FA。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:〔和製語 climax+series〕プロ野球セパ両リーグで行う,日本シリーズ出場権を争う試合。ペナント戦の上位 3 球団が出場して,2 位・3 位球団が 3 回戦制で対戦,その勝者と 1 位球団(アドバンテージ 1 勝)が 6 回戦制で対戦する。ただし両リーグの優勝球団はペナント戦の勝率 1 位の球団とする。2007 年(平成 19)より実施。CS。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【second】野球で,二塁。または,二塁手。セカンド-ベース。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【third】野球で,三塁。また,三塁手。サード-ベース。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【front】プロ-スポーツチームの経営や管理にあたる首脳陣。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)