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イタリアンスモール、FIAT 500ツインエアの実力を検証

斜め前方から見た緑色のFIAT 500 Pop

現行FIAT 500モデルは2008年から日本国内での販売が開始された。登場から9年を経た今、FIAT 500はすっかり日本にも定着した感がある。ラインナップの中でも「らしさ」が強調されたチンクエチェントのエンジン、FIAT 500ツインエアの実力を検証していきたい。

2018年3月29日:用字用語の整理。

FIAT 500ツインエア(TwinAir)とは一体何か?

現行版と1957年版のFIAT 500

現行モデルのFIAT*1 500は、かの有名な英国のミニにも匹敵する普遍的な車で、1957年~1977年に製造された2代目FIAT 500ことNUOVA(ヌォーヴァ)500を基に開発された。

NUOVA 500は、ルパン三世の映画「カリオストロの城」でも活躍したと言えば、うなずけるのではないだろうか。

2代目登場から、ちょうど50年後に復活した現行のFIAT 500であるが、1990年代から地球温暖化や環境汚染が世界的に大きな問題となる中、各自動車メーカーは、さまざまな形でエコカーを製造してきた。

日本ではトヨタ・プリウスに代表されるハイブリッドカー*2がいまだ主流だが、欧州では、そのエコカーの手法として「ダウンサイジング*3・ターボ*4」も定着している。

FIAT 500に搭載される「ツインエア」も、そのダウンサイジング・ターボ・エンジンなのだ。日本の軽自動車の660cc*5より少し大きい875ccの排気量を持ちながらも、仰天の2気筒エンジンなのである。

通常、排気量が大きくなるほど、それに比例して気筒数を増やすことで、エンジンの回転が円滑になり、さらには高回転まで回すことが楽しいエンジンにもなる。同国イタリアのフェラーリが最近発表した812 スペチアーレが搭載するV型12気筒エンジンなどが好例である。

FIAT 500の場合、1200ccエンジンを搭載したモデルもあるが、こちらはターボのない4気筒となっている。では、2気筒にすることに何のメリットがあるのか。

それは「時代の流れ」と断言できる。利点はエンジンを小型化でき、部品点数も少なくなり、コストも抑制することができる。換言すれば「小型車の原点回帰」ぐらいになるだろうか。しかし、新しさの中にも郷愁を感じるFIAT 500と、このツインエアエンジンの相性が驚くほどにしっくりいくのである。

FIAT 500とツインエアの相乗効果で魅力はぴか一

夜道を駆ける白色のFIAT 500

FIAT 500のツインエアエンジンは、FIATご自慢の「マルチエアテクノロジー(緻密な吸気バルブ制御プログラム)」をツインエンジンと2気筒エンジンに結び付けたのが命名の由来である。

排気量を875ccの小ささに抑えつつパワーを出すため、各気筒に圧縮空気を送るターボ。そして、その圧縮空気を冷やしてやることで空気密度を高めるインタークーラー*6が装着されている。この組み合わせによって、パワーは1200ccエンジンを16PS*7も上回る85PS / 5500rpm*8、トルクも約1・5倍になる14・8kgm*9 / 1900rpmを叩き出す。

だが、このツインパワーエンジンに高回転まで回して走る楽しさを期待してはいけない。それは、80・5 × 86・0mmの度外れなロングストロークや、最大トルクを1900rpmという低回転域で出していることからも分かるように、あくまで実用域の性能を高めたエンジンなのだ。

少し酷な比較かもしれないが、かつての日本の軽自動車も全て2気筒エンジンだった。その中でも特に2気筒エンジンを最後まで残した「スバル・レックス」が良い例である。当時のスバル・レックスは、550ccの2気筒エンジンに速さを付加することを狙って、ターボと同じ役割をするスーパーチャージャーを取り付けた。

だが、時代は高性能化を切望していため、馬力は出たものの高回転域まで回らない。また、2気筒特有の「ぽこぽこ」という排気音や振動に嫌気を起こされた。その後レックスは同じ550ccの排気量ながら、一気に4気筒エンジン化への道を歩むことになる。このように2気筒エンジンは実用的であり、よく取れば排気音や回転感覚に味のあるエンジンなのである。

ところが、この条件をFIAT 500の性格に当てはめるとどうだろう。基になったNUOVA500のエンジンは、479cc空冷直列2気筒OHV*10を搭載している。50年の進化の後に、同じような基本仕様を持つエンジンがFIAT 500にも搭載されたことになり、これが何とも言えない味を生むことになるのだ。

2気筒エンジンの回転感覚のがさつさはそのままに、インタークーラー付きターボ装着などで、動力性能は大幅に高められたFIAT 500ツインエア。本来あるべきNUOVA 500の正常進化系であり、4気筒エンジンで単調に走ってはいけないのである。

FIAT 500ツインエアはいくらから購入できるか?

斜め前方から見た紫色のFIAT 500 Lounge

FIAT 500の現行ラインナップの中で、ツインエア搭載車はノーマルルーフの標準モデルであるFIAT 500。そして、キャンバストップ仕様のFIAT 500C、姉妹車であるPanda(パンダ)から選択することができる。

その中で、一番安くツインエアを購入できるのは、Pandaの税込車両価格213万8400円なのであるが、やはり見た目は圧倒的にFIAT 500がいい。

標準モデルのFIAT 500では、1200ccエンジンのFIAT 500 POPが199万8000円、FIAT 500ツインエアPOPだと228万9600円で、ツインエア搭載車は約30万円アップとなる訳である。

キャンバストップの500Cもなかなか素敵だが、価格はさらに50万円ほどアップする。

まとめ

FIAT 500のインテリア

FIAT 500を買うことの意義は、やはりその見た目のかわいらしさが一番であろう。ミニやビートルも同類ではあるが、FIAT 500ツインエアが抜きん出るのは、そのエンジンの感覚さえ、新しさの中にも懐旧の念を起こさせることを実現している点と言える。

結論、FIAT 500を選ぶならツインエアは、間違いなく「買い」である。

年々の改良で、このFIAT 500ツインエアの味わい深さが、若干失われてきてしまっているようだ。しかし、当たり障りはなく快適ではあるが、どこか味気ない国産の小型車に対し、強烈に個性を主張しているFIAT 500ツインエア。現代の車の方向性に疑問符を投げかけてくるほどのすごいモデルなのである。

エンゲル係数*11を下げるために、胃のダウンサイジングはできないものだろうか。

(出典:Fiat Chrysler Automobiles

*1:【イタリア Fabbrica Italiana Automobili Torino】イタリア最大の自動車メーカー。航空機エンジンも手がけている。1899 年創業。フィーアトとも。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【hybrid car】複数の動力源を用いて走行する自動車。排気ガス規制地域を電気で,規制緩和地域をガソリン-エンジンで走る自動車など。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【downsizing】機器などを,従来のものより小型にすること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【turbo】排ガスを利用してタービンを回し,混合気を強制的にシリンダー内に送り込んで圧力を高める,エンジンの補助装置。出力・トルクを高め,併せて燃費向上に役立つ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:〔cubic centimeter〕立方センチメートルを表す記号。「二〇〇―の血液」/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【intercooler】中間冷却器。流体を加熱する過程で冷却する装置。特に,気体の連続圧縮過程の冷却装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【ドイツ Pferdestärke】馬力を表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:〔revolutions per minute〕エンジンやタービンなどの毎分回転数。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【フランス kilogrammètre】エネルギーまたはトルクの重力単位キログラムメートルを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【overhead valve】頭上弁式。自動車のシリンダーに付いている吸入排気弁の配置の一方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:生計費中に占める飲食費の割合を示す係数。一般に,所得水準が高くなるに従って低下するとされる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)