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FIAT 500米国仕様の2018年型から垣間見る次期新型とは?

シカゴオートショーで披露された赤色の新しいFIAT 500

2018年2月8日にFIAT 500米国仕様の2018年モデルが発表された。これまでABARTH(アバルト)の特権だった1・4Lターボエンジンが、最廉価のPopを含む全車に採用されたのが最大の特徴だ。これは全面改良への布石を意味するのか考察してみたい。

FIAT 500 フルモデルチェンジの初弾記事はこちら
FIAT 500の全面改良が2018年に実施?その真相を調査する!

2018年3月31日:誤記の訂正。

FIAT 500(チンクエチェント)米国仕様の2018年モデル概要

町中でFIAT 500に並んで停車するNOUVA 500

FIAT 500米国仕様の2018年モデル*1は販促グレード*2が大きく変化したことが最大の話題である。これまで販促グレードでは自然吸気エンジンを搭載していたものが、全グレードにターボ*3が標準装着されたのである。

FIAT 500米国仕様の2018年モデルはFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)ノース*4アメリカ*5が2018年2月8日に発表した。発売は2018年4月から6月の間になるそうで、既に予約も開始されている。

2018年米国モデルのFIAT 500 PopとLoungeの注目すべき点について見ていこう。

  1. 33%の出力向上した1・4L*6マルチ*7エアターボエンジンが標準仕様となる。
  2. 標準仕様のブレーキ*8とサスペンション*9を搭載。
  3. 後退用カメラが標準搭載。
  4. スポーツ*10スポイラー*11が標準搭載。
  5. アバルトは160HP*12(≒ 157・8PS*13)の出力、トルク*14183lb・ft(≒ 25・25kgf.m)を発生。
  6. 2018年2月8日より予約受け付けを開始。
  7. 500e、500L、500X、124 spider Abarth(スパイダー アバルト)も継続して販売。

PopとLoungeのブレーキとサスペンションは標準仕様となるものの、出力が上がった分だけ、きちんと調整が施されているそうだ。その他の変更点はホイール*15が15インチ*16から16インチへの変更やフォグランプ*17装着などが挙げられる。

日本国内向けのFIAT 500は1・2Lの4気筒SOHC8バルブ*18である通称「FIRE*19」エンジン。さらに、2気筒8バルブの0・9Lツインエア・インタークーラー*20付きターボを搭載している。トランスミッション*21は5速MT*22と変速を自動化したデュアロジックだ。

米国向けのFIAT 500は日本仕様とは根本的に異なり、2017年モデルまでのエンジンは1・4Lマルチエア自然吸気が搭載されていた。これに組み合わされるトランスミッションは5速MTと6速AT*23である。

米国2018年モデルでは、この1・4Lマルチエアにターボと二つのインタークーラーを取り付けた。それにより、101HP(≒ 99・6PS)から135HP(≒ 133・1PS)へと大幅に出力が向上している。この変更についてFCAノースアメリカは「より躍動的な体験と競合他車に勝る出力を新型FIAT 500は提供する」と宣伝した。また、運転をもっと楽しむことができるよう、FIATブランド*24は全車ターボを標準化するとも述べている。

これまでのFIAT 500米国仕様

斜め後方から見た赤色のFIAT 500 Turbo

日本国内向けモデルに加え、FIATの米国仕様は多彩である。FIAT 500、FIAT 500C、スポーツタイプ多目的車(SUV)のFIAT 500X、ABARTHの各車。さらに、正規では日本未発売の100%電気自動車のFIAT 500eやFIAT 500Lがある。FIAT 500を細分化すると、PopとLoungeの2グレードとなり、構成自体は日本と同じである。

FIATにとって毎年18万台近くを販売する米国市場は欧州での年間販売台数に匹敵しており、多種多様な消費者の需要に応えるべく、豊富な種類が米国向けに用意されているのもうなずける。一方、日本市場は2008年から販売を開始したFIAT 500シリーズ*25が、2017年4月段階で累計4万台を超えたそうだ。

また、米国向けには2012年に「FIAT 500 Turbo」なるモデルも一時期登場していた。これは標準のFIAT 500とABARTHの中間的なモデルとして販売されたもので、FIAT 500としては最大の出力を誇っていた。2018年米国モデルには全く同じエンジンがPopやLoungeにも載せられた。

欧州でのFIAT 500の方向性

フィアット・ミラー・ファミリーの3車種

米国向けには全車強力な出力を与えられ、一気にスポーツ路線まっしぐらに突き進んだかのように見えるFIAT 500である。果たして欧州向けも同様の方向性が当てはまるのだろうか。

一例として英国向けのFIAT 500をのぞいてみると、日本向けと似ている。1・2LのFIREエンジン、0・9Lツインエア・インタークーラー付きターボ、1・3Lマルチジェット*26ディーゼル*27が設定されている。

本国イタリア*28においても、やはり英国と同様の仕様となっている。欧州では5速MT車も限定車ではなく常時販売されており、車体色やアルミホイール*29が約10種類から選べるうらやましい設定である。2018年3月8日にはスイス*30でジュネーブ*31モーターショー2018が開催された。ここで新たに「500ミラー・ファミリー(Mirror Family)」として、青の外装色をまとったFIAT 500、FIAT 500L、FIAT 500Xが登場している。

このミラー・ファミリーは、動力性能の向上ではなく、IoT*32の一種である常時インターネットに接続されている「コネクテッドカー」の特徴が強調されたもので、FIAT 500ミラーも一員である。ミラー・ファミリーはiPhoneとディスプレー*33モジュール*34を連携させる「Apple CarPlay」や、位置情報・音響再生機能などと連携できる「Google Android Auto」などが使用可能となるそうである。

このように欧州で登場した新型FIAT 500は米国向けとは方向性が異なっており、少なくとも動力性能向上うんぬんとは無関係の刷新である。

まとめ

米国版FIAT 500のシフトレバー

米国においては一気に走りの質を高める方向で、かたや欧州向けにはコネクテッドカー路線の展開を進めるFIAT 500である。それぞれの国の嗜好(しこう)や事情に合致した仕様を強く意識し対応していることが読み取れ、同一車種でありながら、ここまで多岐にわたり展開していることに恐れ入る。

新型のFIAT 500は米国仕様と欧州仕様のどちらが良いのだろうか。Pop同士で比べた場合、米国仕様の1・4Lマルチエアターボに少し心が引き付けられはしないだろうか。米国仕様の新車価格は公式のウェブサイトには公開されていないが、1万7990ドル(約190.2万円/2018年3月28日現在)からではないかと予想されている。日本向けのPopが現在199万8000円からなので、もし同価格帯とするなら非常に魅力的だ。ただし、米国仕様は自然吸気からターボ付きに大幅に変更しただけに、2017年モデルの1万4520ドル(約154.0万円/2018年3月28日現在)から30万円以上も大きく値上がりしている。

結局1・4LターボはABARTHの「縄張り」なので、いたずらに浸食することなく、任せておくのが最善かもしれない。やはり標準モデルのFIAT 500には独特の味がある0.9Lツインエアの方が似つかわしいと思えるが、いかがだろうか。

FIAT 500の次期型が登場するのは太鼓判を捺す押せる。そして、その設計もかなり煮詰まった段階に来ているはずだ。早ければ2019年を待たず、フルモデルチェンジが実施されるともうわさされるFIAT 500である。次期型にはハイブリッドカー*35が新たな顔触れとして追加されることが、現FIATグループ会長のセルジオ・マルキオンネ氏によって、既に触れられている。

そんなFIAT 500は1・4Lターボを積むなど、無理な背伸びをすべきではないと思う。着物にはげたが似合い、スーツ*36にはスニーカー*37が似合わないのは誰もが知るところだ。つまり、一箇所だけが絶賛されても、全体としての輝きを失ってしまっては本末転倒なのだ。

だから、新しいFIAT 500はNUOVA 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)が持つ「柔らかさ」を引っ提げた「本物感」を大切にしてもらいたい。

(出典:Fiat Chrysler Automobiles

*1:【model】型。型式(かたしき)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【grade】等級。段階。品等。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【turbo】過給器の一種。排ガスのエネルギーを利用する過給器。排気タービン過給器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【north】北。北方。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【America・亜米利加】北アメリカと南アメリカの総称。コロンブスより少し遅れて渡航したイタリアの航海者アメリゴ=ヴェスプッチの名に因んだ呼称。

*6:(litre; liter)リットルの略号(L かつてはl)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【multi】(接頭辞として)「多数の」「複数の」「多面的」の意を表す。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【brake】車両その他機械装置の速度・回転速度などを抑えるための装置。手動ブレーキ・真空ブレーキ・空気ブレーキなどがある。制動機。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【suspension】車輪に車体を載せ付ける装置。路面の凹凸を吸収し、車体の安定性、乗り心地をよくする。懸架装置。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【sport(s)】陸上競技・野球・テニス・水泳・ボートレースなどから登山・狩猟などにいたるまで、遊戯・競争・肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【spoiler】自動車で、車体周囲の気流を整えて走行を安定させたり、下向きの揚力を発生させてタイヤのグリップ力を高めたりするための翼。エア‐スポイラー。空力的固定板。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【horsepower】馬力。㏋とも書く。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:(Pferdestärke(ドイツ))馬力。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【torque】物体を回転させる能力の大きさ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【wheel】輪。車輪。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【inch・吋】ヤード‐ポンド法の長さの単位。1フィートの12分の1。2.54センチメートル。記号 in/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:【fog lamp】濃霧などの際の視界を確保し、対向車からの視認性を良くするために、自動車などに装備する淡黄色または白色のランプ。前部霧灯。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【bulb】弁(瓣)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:火。焚火(たきび)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:【intercooler】中間冷却器。流体を加熱する過程で冷却する装置。特に,気体の連続圧縮過程の冷却装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【transmission】自動車などの変速装置のギア。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*22:【manual transmission】自動車の手動変速機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:(automatic transmission)自動変速装置。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*24:【brand】(焼印の意)商標。銘柄。特に、名の通った銘柄。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*25:【series】(連続・系列の意)連続性を持つ一連のもの。逐次出版される叢書、主人公や主題の共通な2編以上の映画やテレビドラマ、ある期間連続的に行う野球の試合など。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*26:【jet】孔口から流体が連続的に噴出する形態。また、その噴出物。噴流。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*27:【diesel car】ディーゼル機関を原動機とする客貨車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*28:【Italia・伊太利】ヨーロッパの南部、地中海に突出した長靴形の半島およびシチリア・サルデーニャその他の諸島から成る共和国。面積30万2000平方キロメートル。人口5943万4千(2011)。ローマ時代以来、ギリシアとともに西洋文明の源流をなした。中世以降、諸州・諸都市が分立したが、1861年イタリア王国成立。1922年以後、ムッソリーニを首領とするファシスト党が独裁。36年エチオピア併合以来帝国と称し、ドイツ・日本と三国同盟を結んで第二次大戦に参加、43年降服、内戦とレジスタンスを経て46年より共和制。宗教は主にカトリック。首都ローマ。イタリー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*29:(aluminium wheel)自動車の車輪で、タイヤを受ける輪状の軸がアルミ製のもの。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*30:【Suisse(フランス)・瑞西】中部ヨーロッパにある連邦共和国。アルプス山脈が南部を走り、風光明媚な観光地が多い。国民はドイツ系(65パーセント)・フランス系(20パーセント)・イタリア系(8パーセント)などから成る。公用語はドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語。1648年神聖ローマ帝国から独立。永世中立国で、赤十字国際委員会・国際労働機関など多くの国際機関の本部がある。精密機械工業・金融・牧畜・観光産業が発達。面積4万1000平方キロメートル。人口803万5千(2011)。首都ベルン。ドイツ語名シュヴァイツ。イタリア語名ズヴィッツェラ。英語名スイッツァランド。公用語が四つあるため1語で表記する場合はラテン名のヘルヴェティア(Helvetia)を用いる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*31:【Genève】スイス西端部,レマン湖に臨む国際都市。観光地。国際赤十字本部および各種の国際機関がある。精密機械工業が発達。〔「寿府」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*32:(internet of things)自動車・電化製品など、IT機器以外の「もの」が、インターネットにより相互に接続されているシステム。物のインターネット。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*33:【display】コンピューターから出力する文字・画像等を画面に表示する装置。モニター。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*34:【module】機械・システム・ソフトウェアなどを構成する、機能的にまとまった部分。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*35:【hybrid car】ハイブリッド‐エンジンにより走行する自動車。効率の良い回転数域だけで内燃機関を利用したり、回生ブレーキで得た電力を電気モーターで利用したりできるので燃費が良い。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*36:【suit】共布でできた衣服の上下一揃い。男子の背広服の一揃いや、女子の上着とスカートとの一揃い。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*37:【sneaker】(「こっそり歩く人」の意)底がゴム製の運動靴。カジュアルな装いにも用いる。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)