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FIAT 500の姉妹車Pandaに秘められた魅力とは?

斜め前方から見た赤色の3代目FIAT Panda

日本ではFIAT 500の扱いと比較してPanda(パンダ)は隅へ追いやられている感がある。PandaとFIAT 500は近似した外寸で、エンジンもツインエアを登載している。本場イタリアではFIAT 500をもしのぐ人気だ。この謎めいたPandaについてご紹介したい。

2018年3月29日:用字用語の整理。

PandaとFIAT 500の違い

側方から見た赤色の3代目FIAT Panda

誤解を恐れずに率直に言えば、PandaとFIAT 500は見た目の印象は大きく異なるものの、ほぼ同一の車である。Pandaの歴史については後述するが、少々目線を変えたい。

MQBなる施策を2012年から導入したのはドイツのフォルクスワーゲン*1である。要するに扱う多くの車種で共通部品を増やして、国際競争力を高めるのである。2015年には、トヨタもTNGAで追随している。

つまるところ、FIATも同計画を推し進めていて、エンジン、サスペンション*2、シャシー*3など、車体を構成する部品を共通化し、異なる車体をかぶせて誕生したのが、PandaとFIAT 500である。それ故に、ウェブではFIAT 500のラインナップと同一線上に置かれているし、デザイン以外は酷似しているのである。

FIAT 500からFIAT Pandaへの系譜

原っぱに停車している赤色の初代FIAT Panda

現行FIAT 500のデザインを形作る元になった、2代目FIAT 500ことNUOVA(ヌォーヴァ)500は1957年~1977年の20年間を担い、その後継であるFIAT 126が1972年~1980年、そして、1980年にPandaへとバトンタッチされた。なるほど、FIAT 500はPandaの子孫だったのだ。それが現代では、両車が共演しているので面白い。

今でも初代Pandaの角張った車体がほうふつとしてよみがえる方も多いはずだ。初代Pandaの逸話としては、全面に平ガラスが使われながらも、おしゃれさを醸し出すそのデザインは、イタリアのデサイン会社であるジョルジェット・ジウジアーロ氏が手掛けたことで有名である。ジウジアーロ氏のデザインによる意外な車は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する自動車型タイムマシン「デロリアン」、そして、ダイハツの初代ムーヴなどがそうなのだ。

2代目、3代目PandaはFIAT 500と姉妹車の関係

町中に停車している水色の初代FIAT Panda

NUOVA 500や、後続のFIAT 126は、エンジンが後部座席の後ろに積まれ、後輪を駆動するリアエンジン・リアドライブ方式のRRと呼ばれる構成だ。それが初代Panda登場時に、前輪駆動車であるフロントエンジン・フロントドライブのFFへと生まれ変わった。

初代Pandaには、FFよりも車高が高く、明らかに頼もしく見える四輪駆動*4こと4 × 4モデルも存在した。このモデルは、軍用車も手掛ける豪州のシュタイア・プフ社との共同開発されたもので、その外観からにじみ出る心強さの理由もうなずける。

現行のPandaにも4 × 4モデルが存在し、日本にも限定車や並行輸入車で入ってきている。NUOVA 500よりも長い1980年~2003年の期間に販売された初代Pandaだったが、2003年に刷新され、2代目Pandaになった。

この2代目Pandaこそが、2007年に登場した現行FIAT 500と共通のシャシーを共有している。従って、必然的に現行FIAT 500はRRではなくFFになった。整理すると、2代目Pandaのシャシーを用いつつ、2011年には現行の3代目Pandaが発売された。つまり、2代目、3代目のPandaは、現行FIAT 500と姉妹車なのである。

FIAT 500より使い勝手がよくお買い得なPanda

斜め前方から見た黄色の2代目FIAT Panda

現行のPandaの日本国内における車種構成は、FFのPanda EASYだけである。FIAT 500とおよそ同寸とご紹介したが、Pandaは5ドアとなっているので、国産コンパクトカー同様に、後部座席の使い勝手は一枚上手である。

Pandaに搭載されるエンジンは、FIAT 500でも話題となったダウンサイジング*5ターボ*6の0・9Lツインエア1種類のみで、トランスミッションギア*7も同様に、セミ・オートマチック・トランス・ミッションである5速デュアロジックを採用する。

価格的には、FIAT 500の標準モデル1・2L POPの199万8000円に次ぐ安さで、213万8400円となる。ちなみに、FIAT 500で0・9Lツインエアを買えば、ツインエアPOPの228万9600円以上するので、Pandaはお買い得だと思う。

まとめ

斜め後方から見た赤色の3代目FIAT Panda

日本では、このように1グレードのみの展開で、少しばかりFIAT 500の影に隠れているようだが、欧州においては、「シティーカー」として定評がある。そのため、車種展開も広く、英国を例に取れば、廉価版POP、量販EASY、上級LOUNGEと並ぶ。エンジンについても、1・2Lガソリン、0・9Lツインエアの5速マニュアルトランスミッション、0・9Lツインエア・デュアロジックが設定される。

Pandaの売りは何か。日本国内の販売戦略は、主に女子受けを狙っているように見て取れる。しかし、名前の「Panda」に基づく飾りなどもなく、若干可愛らしい感じがする以外は、至って真面目な実用車である。

ちなみに、FIAT Pandaの車名の由来は、初代の主な市場を中国に設定していたからで、あの愛くるしいジャイアントパンダを思い浮かべてデザインされた訳ではないらしい。

現行Pandaの質実剛健さは、男性向きだと感じる。癖はあるが、しれだから懐古的だとも評されるツインエア・エンジンしかり、誇張はしないが骨がある。だから、おしゃれな男性にこそ、乗って欲しいと感じるのだが、いかがだろうか。

パンダ人気にあやかってFIAT Pandaの白黒のツートンモデル発売してはいかがだろうか。ワイパー*8はササの緑色で間違いないはずだ。

(出典:Fiat Chrysler Automobiles

*1:【Volkswagen】ドイツの自動車メーカー,フォルクスワーゲン社。また,同社製の小型大衆車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【suspension】 自動車などで,車輪と車体をつなぎ,路面からの衝撃や振動が車室に伝わるのを防ぐ装置。懸架装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【chassis】〔シャーシ・シャーシーとも〕自動車・電車などの車台。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:自動車で,前後の四つの車輪すべてに駆動力を伝える方式。4WD 。四駆。全輪駆動。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【downsizing】機器などを,従来のものより小型にすること。特に,大型の汎用コンピューターに代えて,ワーク-ステーションやパソコンを採用すること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【turbo】排ガスを利用してタービンを回し,混合気を強制的にシリンダー内に送り込んで圧力を高める,エンジンの補助装置。出力・トルクを高め,併せて燃費向上に役立つ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【transmission gear】自動車などの歯車式変速装置。トランスミッション。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【wiper】自動車などの前窓に付けて雨滴をぬぐい取り,視界を確保する装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)