人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

既成の工具は使わない!たった一本の竹から鳥籠ができる

竹で鳥籠をこしらえる男性

手作りの物には独特の暖かさがある。しかも、それが大地の恵みだけで出来上がっているなら、味わい深さも加わるはずだ。耐久性に少し問題があったとしても、土に返って自然循環できるのは理想的だ。そんな地球に優しい鳥籠を作り上げた達人の妙技をご覧あれ。

あえて石を使って竹を切り落とす

雑木林の中に幾つかの竹が群生しているのを見つけ出した男性。適当な竹を打音検査*1で見極めるべく、打製石ふのような石でたたく。めぼしい竹を選ぶと、石で竹の表面をがりがりと削り出す。竹の表面を削り落として切断する魂胆なのだが、何しろ縄文時代の石器にも満たない鈍器のような石だけに、かなり骨の折れる作業である。

ようやく一本の竹を切り離すと、さらに横方向に切れ目を入れて切り分ける。長い竹が鳥籠の本体で、短い竹が竹ひご*2用となる。竹は縦方向に繊維が走っているため、石で切れ目を少し入れてやると、手作業で真っすぐ手奇麗に裂くことができる。

最後は竹ひごでひだになった竹を編み込む作業だ。ここでも柔軟性があって折れづらい竹の特長をいかんなく発揮している。残った竹ひごを格子状に組み合わせ、鳥籠の底面を覆って完成だ。自然の産物からこしらえた世界に一つしかない鳥籠だ。

人類と竹のつながり1000年以上

竹林にそそり立つ青竹

人類は果たしていつごろから竹を生活で用いるようになったのだろうか。文献として残されたものはないが、インド*3や日本では1000年以上も前から竹を利用した工芸品が作られていたそうだ。1000年以上前に書かれた「竹取物語*4」に野山にまじりて竹を取りつつ、よろずのことに使いけりと記載されていたことからも、軽さとしなやかさに加え、丈夫さを兼ね備えた竹が当時から用いられてのが分かる。

近代における人間界の目まぐるしい進歩と発展。それは自然破壊と表裏一体をなすものだろう。そして、多くの人々は聞こえのいい革新に盲従してしまい、不可逆的な「便利さ」という名の禁断の果物を口にしてしまった。

それでは、この動画から一体何を感じるだろうか。

人間が自然に対するちっぽけさを悟ったとき、閉じ込められていた鳥籠から飛び立てるのではないだろうか。

(出典:YouTube

*1:物体をたたき,手元で感じる反発力や反響音から物体の厚さや材質,異物混入や欠陥の有無などを調べる検査。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【竹籤】竹を細く割って削ったもの。細工物用。たけひご。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【印度】(India)南アジア中央部の大半島。北はヒマラヤ山脈を境として中国と接する。古く前2300年頃からインダス流域に文明が栄え、前1500年頃からドラヴィダ人を圧迫してアーリア人が侵入、ヴェーダ文化を形成。前3世紀アショーカ王により仏教が興隆。11世紀以来イスラム教徒が侵入、16世紀ムガル帝国のアクバル帝が北インドの大部分を統一。一方、当時ヨーロッパ諸国も進出を図ったが、イギリスの支配権が次第に確立、1858年直轄地。第一次大戦後、ガンディーらの指導で民族運動が急激に高まり、1947年ヒンドゥー教徒を主とするインドとイスラム教徒を主とするパキスタンとに分かれて独立。古名、身毒・天竺。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:平安初期にできた最古の作り物語。1巻。作者未詳。竹取翁(たけとりのおきな)が竹の中から得て育てた美女かぐや姫が、5人の貴公子の熱心な求婚を難題を出して退け、時の帝の召にも応ぜず、遂に八月十五夜、月の世界に帰る。竹取翁の物語。かぐや姫の物語。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)